脚本家・小林靖子「“アニメ”の『ジョジョ』として楽しめるように考えています」

『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SBR製作委員会

荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』(以下『ジョジョ』)、その第7部となるアニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』(以下『SBR』)がついに幕を開ける。熱烈な『ジョジョ』ファンからも絶賛される、シリーズ構成の小林靖子さん。これまで手がけた『ジョジョ』シリーズと『SBR』の魅力について語っていただきました。

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    Profile

    小林靖子

    こばやし・やすこ 脚本家。東京都出身。特撮テレビドラマやアニメの脚本やシリーズ構成を数多く手がける。『ジョジョ』アニメーションシリーズのシリーズ構成をすべて担当。

    スタッフ陣は14年間ほぼ変わらず

    2012年にスタートした『ジョジョ』のアニメシリーズの『ファントムブラッド』からシリーズ構成を担当しているのが脚本家の小林靖子さんだ。キャラクターやストーリーの理解度が深く、原作を読んでいなくても楽しめる構成や、映像化ならではの魅力を引き出すなど、ファンから絶大な信頼を得ている。

    子どもの頃はジャンプ全盛期で、荒木先生の『魔少年ビーティー』や『バオー来訪者』などの初期作品をジャンプで読んでいました。社会人になってから特撮に興味を持ち、脚本を書き始めました。特撮からアニメに仕事が広がり、『ジョジョ』からも依頼が来て、引き受けたのがきっかけです。

    よく聞かれるのが、シリーズ構成はどのような仕事なのかということ。1シーズンが12話なら、物語を12等分する必要があります。でも作品の見せ場はさまざまで、きれいに12等分できるとは限りません。そのため、各回にうまく見せ場を作ったり、尺が足りなそうなら盛ったりといろいろ考える必要があります。これがシリーズ構成の仕事です。

    各話の脚本は複数のシナリオライターさんが書きます。シリーズ構成は、原作のどこからどこまでを何話にするか、前後のつなぎはどうするかなど、全体を把握し、調整する役割を担っています。

    私やシナリオライターさん、スタッフ陣はほぼ変わらず、14年も続けることができました。

    なので、今では私が大枠をお伝えするだけで、シナリオライターさんが阿吽の呼吸でうまく仕上げてくれるように。一方、シリーズを重ねるごとに登場するキャラクターのスタンド能力が複雑化しているので、それを理解してどう映像で表現するかを議論するのに多くの時間を割くようになりました。

    原作へのリスペクトがあれば、自然と『ジョジョ』らしさは付いてくるはず

    『SBR』は馬による北米大陸横断レースであり、過去のシリーズとは全く異なります。その分、『ジョジョ』を見たことがない人も新規参入しやすいと思うんです。そのためには、みなさんの心をぐっとつかみ、「続きが見たい!」と思わせる作品にしなくてはなりません。3月19日に配信されるエピソードは、「1st STAGE」と呼ばれるレースの冒頭部分になります。通常のTVシリーズと異なり、TVアニメ2話分の尺で拡大版にしたのは、「1st STAGE」のスタートからゴールまでを1話で一気に見せたかったからなのです。

    そして、主人公のジョニィとジャイロを魅力的に描くこともかなり意識しました。半身不随でヤケになっているジョニィは、歴代の『ジョジョ』主人公のように、正義感にあふれているわけではありません。ジョニィはジャイロの鉄球の秘密を知りたくてレースに参加しますが、車椅子に乗った俺がもう一度歩けるようになりたい、と、動機が極めて私的なんです。正義や平和のためではなく、自分のために動く、というのは、むしろ今の時代にマッチしているのではないかという気がします。

    『ジョジョ』に限りませんが、アニメと漫画は表現方法が大きく異なります。原作ファンはアニメでどれだけ忠実に再現できるかに注目することが多いのですが、アニメは、その作品に初めて触れる人でも理解でき、楽しめるものを目指しています。そういう人が原作を手に取り、ファンになってくれたらもっといいですよね。

    ですから私も、原作をアニメとしていかに面白い作品にするかを念頭に置いて仕事を続けてきました。『ジョジョ』シリーズを第1部から担当しているので、『ジョジョ』に精通していると思われるかもしれませんが、実は仕事が終わると忘れちゃうタイプ(笑)。

    ジャイロの名字はツェペリですが、『戦闘潮流』(原作第2部)のシーザー・A・ツェペリと同じということに気づいたのは、『SBR』の打ち合わせがかなり進んだ後。みんなにびっくりされました。

    でも、『ジョジョ』のディープなファンはライターやキャスト陣にたくさんいらっしゃるし、シリーズ構成くらい、ライトなファンの立ち位置でいてもいいかな、と考えるようにしています(笑)。

    あと、シリーズ構成の私がアニメで『ジョジョ』らしさを意識的に付け加えようとしなくても、原作へのリスペクトがあれば、自然と『ジョジョ』らしさは付いてくるはず。

    『ジョジョ』の魅力はたくさんありますが、キャラクターたちが悪役も含めて本当に気持ちいい! うじうじ悩まないし、みんな前に向かって生きるエネルギーを持っています。その生命力が作品の魅力になっているし、それがどんどん熟成されて哲学的で奥深い作品になっていきました。

    特に『SBR』はファッショナブルで、色彩的に鮮やかで、キャラクターもみんな美しい。「おしゃれでかっこいい!」といった気持ちで、気軽に入りやすいはず。

    ジョニィやジャイロを中心とした魅力的なキャラクターがレースで競い合い、熱戦を繰り広げる。ハラハラする展開を純粋に楽しんでもらえることを願っています。

    information

    『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』

    1890年のアメリカを舞台に、人類史上初の乗馬による北米大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」に参加するジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリの活躍を描く。3月19日からNetflixで世界独占先行配信。ⒸLUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SBR製作委員会

    取材、文・𠮷川明子

    anan 2487号(2026年3月11日発売)より
    Check!

    No.2487掲載

    最先端の暮らし 2026

    2026年03月11日発売

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