20世紀後半の米国を代表するアーティスト、ソル・ルウィットの個展が開催中です。


Who’s Sol LeWitt?

《ウォール・ドローイング #66》を制作中のソル・ルウィット(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク、1971年) Ⓒ 2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

1928年、米国コネチカット州生まれ。1945年よりシラキュース大学で絵画と版画を学ぶ。1967年「コンセプチュアル・アートについてのパラグラフ」が美術誌に掲載され、欧米圏の潮流に大きな影響を与える。1968年にウォール・ドローイングの1作目を発表後、2007年に逝去するまで活躍した。

「アイデアこそ芸術」と唱えたルウィットの神髄に迫る

20世紀後半の米国を代表するアーティスト、ソル・ルウィット。彼は1960年代後半、作品そのものよりも、それを生み出すアイデアやプロセスを重視する「コンセプチュアル・アート」を提唱し、その後の芸術シーンに多大な影響を与えた。

ルウィットの代表作といえば、自身が描くのではなく他者が彼の指示書に従って描くウォール・ドローイングや、幾何学的な構造を連続的に展開するシリアル・プロジェクトなど。これらの作品には、描かれた線より重要なのはアイデアだ、形態よりも構造とプロセスが大事、という独自の考え方があった。

ルウィットが「コンセプチュアル・アート」の考えに至ったのは、彼が20代の頃働いていた建築事務所での経験が大きいと考えられる。ニューヨークの建築家I.M.ペイのもとでグラフィックデザインをしていた彼は、“構造”という概念に強く傾倒していく。後に発表した彼の彫刻は「構造」と呼ばれ、フォルムよりシステムや規則性を追求した。

《ストラクチャー(正方形として 1, 2, 3, 4, 5)》1978-80年、滋賀県立美術館蔵 Ⓒ2025 The LeWitt Estate / Artists RightsSociety(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

《ウォール・ドローイング #283 青色の円、赤色の直線、黄色の直線の位置》初回展示 1976年 2017年イェール大学美術館ウェストキャンパス・コレクションセンター(コネチカット州ウェストヘイブン)での展示 Ⓒ2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

《ウォール・ドローイング #1164 ドローイング・シリーズ I 2(A&B)》構想1969年、初回展示2005年 2010年グラッドストーン(ブリュッセル)での展示 Ⓒ2025 The LeWitt Estate / Artists Rights Society(ARS), New York. Courtesy Paula Cooper Gallery.

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本展は日本の公立美術館では初となるソル・ルウィットの個展。ウォール・ドローイング、立体・平面作品、アーティスト・ブックといった彼の代表作を通して、既存の枠にとらわれず芸術の可能性を開拓してきた彼の存在とその影響力に迫る。

会場には1968年に初めて発表されて以来、代表作として知られているウォール・ドローイング6点を展示するほか、ルウィットが自らのアイデアを多くの人と共有するために、1960年代から晩年まで制作し続けた数多くのアーティスト・ブックも展示する。単に作家の作品をまとめたカタログとは違い、本という形式で作った芸術品であるアーティスト・ブックからは、作品だからこそ伝わる、彼の想いをダイレクトに受け取ることができる。

アイデアこそが芸術の最も重要な側面であるという彼の作品をとおし、アートとは何かを問いかける本展。個人が描いた絵画や感情の表現だけじゃない。私たちの頭の中にあるアイデアも芸術になりうるかもしれないと、気づかされる内容だ。

information

ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー

東京都現代美術館 企画展示室1F 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)

開催中~2026年4月2日(木)10時~18時(入場は閉館の30分前まで)

月曜(1/12、2/23は開館)、12/28~1/1、1/13、2/24休

一般1600円ほか

TEL. 03-5245-4111

文・山田貴美子

anan 2477号(2025年12月26日発売)より
Check!

No.2477掲載

NEXT!

2025年12月26日発売

来年のトレンド予想、私たちをとりまく社会の話、そしてネクストカミングな俳優さんやVTuberなどをピックアップ。10月に行われたanan AWARD 2025の受賞者の撮りおろし、そしてAWARDレポートも一挙掲載。モノクロでは第16回ananマンガ大賞の発表も。

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海のものとも山のものともつかない不確かなことに取り組むが成果なし、という残念な印象のある日です。アイデアを実行する挑戦意欲は素晴らしくても、それが実を結ぶに足る計画性や継続的な努力に欠けている、もしくはそもそも実力不足なのかもしれません。ただ、ここで現実を知って軌道修正できれば無駄ではないでしょう。

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