左から、杉咲 花さん、南 琴奈さん

杉咲花さんは、銀行員として働きながら擬人化焼肉漫画をこよなく愛するも、自分のことは好きになれない主人公・由嘉里を、南琴奈さんは希死念慮を抱えながらキャバ嬢として生活するライを演じている、映画『ミーツ・ザ・ワールド』。夜の歌舞伎町で出会った、性格も境遇も異なる二人に、No.1ホストのアサヒ(板垣李光人)が加わり、3人の人生は新たな方向へ進み始める。


撮影期間中は二人でいる時間を大切にしていました

―― 脚本を読んでいかがでしたか?

杉咲 “違い”を受け入れ、分かり合えることではなく、分かり合えないということをひたすら描いているところがすごく好きでした。由嘉里の、視野が狭く押し付けがましい部分も、なんだか憎めなくて。

 私は、オーディションでライが由嘉里にメイクをするシーンの台本をいただいたのですが、読んだだけでこの世界に入りたいと思ったほど好きな物語でした。でもまさかオーディションに花ちゃんがいらっしゃるとは…。すごく贅沢な経験でした。

杉咲 オーディションのお芝居の最中に、琴奈がふと私の髪の毛をかき分けた時、ドキッとしてセリフが飛んでしまって。琴奈が持つリズムに呑み込まれていくような、すごく不思議な時間でした。それはライに惹かれてしまう由嘉里の感覚に近かったのかも。撮影期間中はとにかく琴奈のことを知りたくて、二人で過ごせる時間を大切にしていました。出会った時からきっと、無意識に琴奈に惹かれていたんだと思います。

 嬉しいです。花ちゃんとは何も話さなくても、同じ空間を共有しているだけで心地よくて。基本的にずっと一緒にいました。ライの部屋の対面にあった部屋を控室にしていたんですが、小さな机に椅子を置いて、いつも二人で座っていたんです。蛍光灯の白い光が眩しくて、消してみたらいい感じになったので、部屋を真っ暗にして(笑)、外の光が細く入るぐらいドアを少し開けて。お芝居を終えてそこに入ると、二人ともスライムみたいに溶けて、たわいもない話をしたり、ごはんを食べたり。

杉咲 その時間によって私たちの心の距離が近づいて、それに比例するかのように、由嘉里とライの関係も深くなっていった気がします。

 でも部屋から出た瞬間にはもう、花ちゃんは由嘉里に見えたんですよね。スイッチがあるのかな、って。

杉咲 ううん、緊張してただけだよ(笑)。カメラの前でお芝居をすることって、非日常ですごく不思議な行為だと思うし、いまだに慣れないんですよね。

 そうは見えなかったのでびっくりです。私は、監督の「そのままでいいよ」の言葉を信じて、現場の空気感を読みながら演じていました。

―― 板垣さんの印象はいかがですか。

杉咲 最初からとてもエネルギッシュなアサヒがそこにいて圧倒されました。琴奈もそうだけど、二人の佇まいやお芝居に作用された部分がすごくありました。

 エネルギー強く立っていてくださったので、頼りになりましたね。

―― 好きなシーンを教えてください。

 二人で朝日を見るシーン。眠さに耐えながら、日の出を待って(笑)。でもすごく綺麗で、感動しました。

杉咲 夜が明けることにより、暗闇から抜け出せたような感覚をライと一緒に味わったのは、由嘉里にとっても安堵の時間になったと思います。

―― 今作での学びや得たことは?

 ライのセリフを発することで、私自身も多くの気づきをもらえた、すごく大切な作品になりました。

杉咲 撮影当時は忙しくて目まぐるしい一年でした。しんどさを感じながらも、死生観について毎日考えていたのですが、自分自身が救われたくてこの映画に向き合ったのかもしれないと、いま思っています。

Profile

杉咲 花

すぎさき・はな 1997年10月2日生まれ、東京都出身。ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』や映画『52ヘルツのクジラたち』ほか主演作多数。出演映画『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』は12月26日公開。

南 琴奈

みなみ・ことな 2006年6月20日生まれ、埼玉県出身。出演作はドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』、映画『アイスクリームフィーバー』ほか。出演映画『終点のあの子』は2026年1月23日公開。

Information

『ミーツ・ザ・ワールド』

歌舞伎町を舞台に、生きづらさを抱えながら異なる人生を歩んできた若者たちが出会い、新たな人生へと導かれる現代版“不思議の国のアリス”。監督/松居大悟 原作/金原ひとみ 出演/杉咲花、南琴奈、板垣李光人、蒼井優、渋川清彦ほか 10月24日全国公開。Ⓒ金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会

杉咲さん・シャツ¥35,200 ハーフパンツ¥42,900(共にエンフォルド TEL. 03-6730-9191) パンプスはスタイリスト私物

南さん・ワンピース¥91,300 中にはいたスカート¥74,800(共にノーラ TEL. 03-5738-8554) 人さし指のリング¥132,000(マユオカマツ/マユ ショールーム kohcoon@mayuokamatsu.com) 中指のリング¥17,600(ノーム TEL. 06-6377-6711)

写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・池田ミレイ ヘア&メイク・宮本 愛(yosine./杉咲さん) 上川タカエ(mod's hair/南さん) インタビュー、文・若山あや

anan 2467号(2025年10月15日発売)より

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