意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ウクライナ停戦交渉」です。

大国による実力行使を許してしまってよいのか。

ロシア軍によるウクライナ軍事侵攻が始まり、丸3年が過ぎました。3月にはウクライナがアメリカの提示した30日間の停戦案を受け入れると発表しましたが、ロシア側は停戦交渉に応じていません。4月11日、アメリカのウィトコフ特使がロシアを訪れ、プーチン大統領と会談、「停戦と最終的な和平合意に向けた交渉プロセスの新たな一歩」と述べましたが、詳細は明らかにされていません。

ウクライナには鉱物資源のレアアースが豊富にあるとされ、トランプ政権は軍事支援継続の条件に、レアアースの権益の50%を要求。するとロシアはアメリカとレアアースの共同開発に向けた交渉をスタートしました。これは大国が小国を恫喝してレアアースを奪い取り、無理やり戦争を終わらせようとしているようなものです。

ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年5月に任期を終えていたのですが、戦時ということで、選挙を経ることなく大統領職を続けています。トランプ大統領はこれについて「独裁者だ」と非難。ただ、一時期よりは下がりましたが、ゼレンスキー大統領の支持率は今も67%くらいあります。ところが長引く戦争で、ウクライナ国内でも厭戦ムードが高まり、早く終わらせてほしいという声が広がっています。キーウ国際社会学研究所が1月に発表した世論調査結果によると、「必要なだけ戦争に耐える用意がある」と答えた人の割合は57%で、1年間で16ポイント減少しました。ゼレンスキー大統領は、NATOへの加盟が実現するなら辞任する用意がある、と述べています。

いま大統領選を行うと、認知戦が仕掛けられ、親ロシア派の候補が優位になる可能性も。ヨーロッパでは有事に備え団結し始めており、フランスのマクロン大統領は「フランスの保有する核兵器で核抑止力を欧州にまで広げる議論を始めたい」と発言。現在はヨーロッパvsロシア、アメリカのような構図になってきているんですね。

この戦争の決着点は難しいですが、力ずくで領土を奪ってよいことになると、台湾も北方領土も実効支配している国のものになってしまいます。今、世界の秩序が壊れようとしています。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2445号(2025年4月30日発売)より

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