達人たちの“頭の中”を探るインタビュー。今回は人気漫画『ヒカルの碁』の監修やドラマ『篤姫』の囲碁指導でも知られる囲碁棋士、吉原由香里六段です。

欲張り、乱れようとする心を収め、直観的に局面を見極める。

対局スタイルについて「私はかなり感情的(笑)」と、その柔和な雰囲気からは意外な答え。

「対局中に風向きが変わってくると『なんか嫌な感じがするな…』とか『このパターンは嫌だな』って具合に気配や雰囲気でジャッジしてしまいます。でも多くの棋士はこのように、感性で碁を打つと思いますよ。例えば恋愛でもこのパターンはうまくいきそうだとか、ダメそうだってわかるように、長年の経験から、表情や細かな動き、空気感から何かを感じ取れるもの。囲碁ってすごく人間くさいんです」

吉原由香里

22歳でプロ入り後、33歳で女流棋聖戦を制し、その翌年、翌々年と勝ち続けて3連覇を果たした。

「全盛期は常に感覚が研ぎ澄まされていたし、判断力もよかったですね。どうしても勝ちたいと思う真剣勝負や、ギリギリの勝負を積み重ねていくと、いろんな能力が引き出されてくる気がしました。人間は、勝ちたいと思っていると、脳が勝つためにはどうしたらいいかを考え始めると聞いたことがあります。タイトル戦の期間は、毎日そんな緊張状態が続くものだから、クールダウンが難しいんです。寝ようと思ってもなかなか眠れない。もちろん、日常の対局時でもそうなることはあります。独身で棋士仲間と棋院の近くに住んでいた頃は、飲みに行ったり、家に帰ってまた碁盤を出して反省会してみたり。今は子育てがありますから、対局が終わったら、気分を切り替えてすぐに帰ります(笑)」

神経が研ぎ澄まされていた当時でも、緊張やプレッシャーにはどうしようもなく弱かったという吉原さんを、救った言葉があるそう。

「ある時テレビでイチローさんが『プレッシャーはもちろんある。でもその上でどう戦うかが大事』と話していたんです。これがものすごく私にヒットして、そうだ、自分は緊張しちゃうんだからもうしょうがない、緊張やプレッシャーを無理になくすのではなく、それを承知の上でベストを尽くそう、と。そうしたら、女流棋聖戦でタイトルが獲れたんです」

よしはら・ゆかり 1973年10月4日生まれ。日本棋院所属、段位は六段。1995年にプロ入り、2007年の女流棋聖戦にて初のタイトル奪取、その後2年連続で防衛し、3連覇を果たす。

※『anan』2017年3月1日号より。写真・菅原景子 スタイリスト・高橋京子 ヘア&メイク・草場妙子 取材、文・若山あや

(by anan編集部)

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