シスターフッド映画の祖!
親友同士の主婦テルマとシングルのウェイトレス、ルイーズは、週末のドライブ旅行に。ところが、立ち寄った店の駐車場で、テルマが男から乱暴を受け、それを見たルイーズはとっさに護身用のピストルでパ~ン! 気晴らしの旅行のはずが、指名手配の逃避行になってしまいます。ふたりの旅は、迫りくる警察の追跡をまくことができるのか!? ってなロードムービー。人目をはばかる逃避行なのに、ヒッチハイクの青年を連れ込んじゃったり、タンクローリーのドライバーにセクハラされたら、その報復でタンクを撃って大爆破させたり。タガが外れたふたりの行動は超はちゃめちゃ。なのに、なんなのよ、この心の解放感……っていう、最高に爽快な作品。今でいうところのシスターフッド映画でもあり、相思相愛の愛情にも似た女性バディ映画でもあり。時代を先取りしすぎていた映画としても名高い傑作です。
この映画を知らない人がこの4K版を観たら、おそらく「今の映画でしょ」と思ってしまうんじゃないかしら(携帯電話がないとかの古くささはあるんだけど)。なんせテーマも物語も、今起きておかしくないことばかり。ってことは、30年以上この問題は棚上げされっぱなしだったってことなんですよ。それゆえに、2016年にはアメリカ国立フィルム登録簿にリストインし、同年のカンヌ国際映画祭ではジェンダーの平等と女性の地位向上に貢献した作品に贈られるウーマン・イン・モーション賞を獲得。そして、このほど監督のリドリー・スコット自身が監修した4K版が実現したってわけです。もーね、これを観ずしてシスターフッド映画は語れない、ってくらいの金字塔。
実はルイーズは性被害の経験があって、女性に乱暴する男は許せない。だから男性の横暴に対してはめちゃ厳しいのね。でも、テルマは夫(おまけにDV気味)に頼りきりの専業主婦。男性優位に設計されている社会に対してちょっと甘い考え。この対比も実にいいのよ~。現代にも残るこのテーマにおける意見の対立そのまんま。だからこそ説得力があるのよね。ちなみにテルマが誘い込むヒッチハイカー青年は若き日のブラピ。4Kになったらオリジナルよりもグッと美しく、「そら誘うわ…」と思うほどでございます(が、絶対ダメ)。イケメンが大条件のこの役、ジョージ・クルーニーもオーディションを受けて落選しているといういわくつき。説教くさく紹介したけど、そういうのを抜きにして、彫刻のように美しいブラピに翻弄される『テルマ&ルイーズ』を美麗映像&大スクリーンで観る、というだけでも価値アリアリですよ!
『テルマ&ルイーズ 4K』 監督/リドリー・スコット 出演/スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴェイ・カイテル、ブラッド・ピットほか 2月16日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。©1991 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
※『anan』2024年2月21日号より。文・よしひろまさみち
(by anan編集部)