テーマははじめての恋愛。ふたりのピュアさや不器用さに胸キュン必至。
「前作『だけどやっぱり彼が好き!』の試し読みとしてふたりの短編をインスタに載せたところ、『続きが読みたい!』とのお声をたくさんいただいたんです。もともと高校生の恋愛物語を描きたい気持ちはボンヤリとあったのですが、フォロワーさんからの言葉がなければ描けていなかったかもしれません。感謝しています」
1巻で描かれるのは、はじめての告白、はじめての手つなぎ、はじめてのキス…ややスローに関係が深まっていくふたりの1年数か月。自分の体験と重ねて、あるいは憧れて、ドキドキしたりじれったかったり、読者にいろいろな思いを抱かせる。
「自分的には大勢が共感できるものをというよりも、超“主観”を意識しています。ふたりの恋愛模様を描いているのですが、物語の進行は美穂の一人称視点を徹底させました。等身大の素直な思いを描くことでリアリティが出たらいいなと」
水彩画のような柔らかなitoさんのタッチが、このみずみずしい初恋物語によく合っている。itoさんはイラストレーターとしても活躍しているが、マンガを描くときとどんな意識の違いがあるのだろう。
「大きく違うのは人物の表情ですかね。俳優とモデルの違いに近いのかなと個人的に思っているのですが…。漫画は人物の感情を伝えるために表情を描きますが、イラストは他の大切な情報を伝えるための補助の役割であることが多いので、最初に顔に目が行くような主張はしすぎないようにするのが重要かなと。意識としては真逆なのでとても難しいですが、奥が深くて楽しいです」
物語が進むにつれ、ふたりの恋愛に対するスタンスや価値観の違いなどが見え始め、ハラハラ感が加速。
「恋愛って最初のドキドキ期間が終わったら、どこまでも現実的な人間関係になっていくというか、あらゆる人づきあいにおいて根本的に大切なことは同じ。ありがとうやごめんなさいが言えるかとか。いわば人間力が試されるので、高校生のふたりには大きな試練。ふたりの成長を見守るつもりで描いています」
ito『きらきら、あおい』1 恋人とのありふれた情景がいかに忘れがたいものだったかを思い起こさせてくれる極上のコミック。Webコミックメディア「路草」にて連載中。トゥーヴァージンズ 979円 ©ito/トゥーヴァージンズ
イト マンガ家。高知県生まれ。2017年からInstagramにマンガやイラストをアップするようになり、’19年に初単行本『だけどやっぱり彼が好き!』を刊行。
※『anan』2024年2月21日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)