親同士の再婚で家族になった姉と弟。見守りたくなるハートフルコメディ
「子どもの頃に感じたことや、記憶の持っている手触りをマンガの形で残しておけないか、ずっと考えています。この連載を始める前にどこに載る予定があるわけでもなく“家庭環境の異なる小学生4人組の話”を描いていました。今作はそのマンガを、同級生という横の関係ではなく、きょうだいという縦の関係を主軸にしたものです。小学生という子どもと、高校生という大人と子どもの境界的な年齢、2つの視点を通して物語を描いていきたいと思っています」
各話のエピソードは、森つぶみさん自身がこれまでの人生の中で出会ってきた人や出来事や言葉など、印象的な何かから着想。それを膨らませる形で作っているそう。
「たとえば、光志郎とみなとがふたりだけで光志郎の祖父母に会いに行く2巻収録の8話がそうですね。子どもの頃、祖父母の家から帰る時いつも『また来るのを楽しみにしているからね』と言ってもらっていたのですが、普段自分がいない時の祖父母の姿が想像もつかず、もしかしたら祖父母は自分が来てる時以外、全く笑いもせず、ただただ毎日待ってくれているんじゃないかと思って、申し訳なく思っていた気持ちを元に描きました」
基本的にアナログ画材で描く派。ソフトなタッチに見入ってしまう。
「ネームの時に鉛筆で描いた柔らかい印象を作画でも出したいと思っています。定規を使わず全てフリーハンドで描いたり、わざと線を震わせたり。記憶の輪郭をたどるようなイメージで線をひいています。写実的に描くよりも、記憶の風景に近づける気がして。また、アングルを固定して、ちょっとした動きの連続を複数のコマで見せるシーンを描くのが好きです。さりげない日常の仕草におかしみを感じています」
2巻に入り、姉弟を取り巻く人間関係がぐんと広がった。みなとのクラスメイトたちや幼なじみのショウちゃん。ロボや水町、久瀬ら光志郎の仲良したち、姉弟にとってのもうひとりのおじいちゃん…。この先、どんなドラマが生まれるのだろう。
「どこかで出会ったことがある、または出会ってみたい、と読んでくださった方に思ってもらえるようなキャラクターを描くことができたらと思っています。このマンガの世界は、自分の暮らしの延長線上に本当に存在しているんじゃないか、そんなふうに感じられる作品にしたいです」
『転がる姉弟(きょうだい)』 コロコロとした光志郎の見た目やみなとの表情が七変化するなど、タイトル通りの楽しげな雰囲気が伝わるコミック。子ども時代が懐かしくなる。ヒーローズ 715円 ©森つぶみ/ヒーローズ
もり・つぶみ マンガ家。札幌在住。2016年デビュー。他の著作に『月曜から金曜の男子高校生』(全5巻)、『たべざかりの山本さん!』(全1巻)がある。
※『anan』2021年9月22日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)