
京本大我さんによるクリエイティブプロジェクト「ART-PUT」がお送りする初のライブツアー「BLUE OF LIBERTY」を開催。5月8日からスタートし、約2か月にわたり行われたツアーから6月17日のZepp Haneda(TOKYO)のステージ模様をレポートします。
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タイトルからセットまで、こだわりが随所に
自身の音楽のルーツであるロックにフォーカスしたライブハウスを巡る初めてのツアー。夢のひとつだったというZeppでのライブステージを京本大我さんが遂に実現させた。19歳から始めた作詞や作曲、一眼カメラやフィルムカメラでの撮影を本格的なアート活動として始動させた、クリエイティブプロジェクト「ART-PUT」。今回は4月23日にリリースしたアルバム『PROT.30』を引っ提げ、バンドを従えてのツアーだ。
ステージセンターにツアータイトル「BLUE OF LIBERTY」と青い炎が灯ったイラストが。アルバム『PROT.30』や初めてのミュージックビデオ「Prelude」でも印象的に用いられているブルー。京本さんにとって、ブルーは若さゆえの自由さや初期衝動を意味する大事な色なのだそう。タイトルにはその青く、自由な感情を忘れたくないという想いが込められている。ミラーボールがブルーに輝き、サックスや金管楽器のジャジーな音色が響き渡ると会場に集まったファンの手拍子が大きく鳴り響く。ギターをかき鳴らしながら、京本さんが登場するとまずは「Die another day」から。英詞の曲で“僕は君のために死なない”というフレーズが印象的なナンバーを歌う表情はハッキリ見えず、逆光の照明でシルエットが照らされて続けている。生きづらさを感じている人へ歌う姿は、普段のアイドルスマイルを封印して、ロッカーだ。
「WONDER LAND」でイエローのレーザー光線が飛び交い、京本さんが照らされると紺色のスーツにサングラスをして歌う京本さんの姿が。この曲は、現実逃避がテーマ。しんどい時、自分のワンダーランドに逃げてもいいんじゃないかという心の声をトリッキーに歌う。スタンドマイクを前に上を向きながらギターを演奏した後、「いけるか、羽田!」と叫ぶ京本さんに会場に集まった2900人が大きな歓声を上げた。

ガラリと曲調が変わったのは、「酒と映画とナッツ」。流暢に言葉を畳みかけるナンバーでスクリーンに映し出されるイラストもおしゃれ。エアギターをしてみたり、ゆるくステージを歩きながら歌ったり。今回披露しているアルバム曲は全曲、自身がメロディと歌詞を手掛けており、幅広いジャンルの曲をクリエイトしていることに驚かされる。
スパークラーの花火が勢いよく鮮烈に噴き上がり、ホットな空間に一変したのは、「RAY」だ。“得体の知れない凶器”や“閉ざされたままの世界”“悪意”などBADなワードが並ぶこの曲。レーザービームが飛び交う中、矛盾した感情を持ちながら、歩み続けようとする心の叫びを激しく激しくパフォーマンス。現実に窮屈さを感じている人にうっすら希望の光を届けるような曲にも思えた。
MCでは、濃密なコミュニケーションも
ファンとの繋がりを歌った「終わらせぬ世界」では、客席とのコール&レスポンスを繰り広げ、MCへ。この日の東京は、6月も半ばにして気温32度を超えるという夏のような暑さ。MCでは、「暑いですか? 皆さん、体調大丈夫ですか?」とファンの体調を気遣う。「今日に限ってというか、昨日までこんなことなかったんじゃないですか。20度台とかだったでしょ? 30度台突入しちゃいましたね」と言うと、「フゥー」と盛り上がる会場。
「“フゥー”なのかな、“フゥー”なのかはちょっとわかんないですけど。今日、明日とライブがあるので、僕の心配してくれて嬉しいですけど。皆さん自分の体調ももし何かあったら、横の人は家族だと思ってください。パパ、ママだと思って。お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹、弟なんでもいいですから、横の人を頼ってね。もうみんなファミリーですから、支え合っていい思い出にしていきましょう」と呼びかけ、会場が拍手に包まれる。
「いや~、早いっすね、東京。なんとZepp、東京がラストでございます。明日もありますけれども、3か所目ということで、追加の東京ガーデンシアターがありますけれども、僕の夢だったこのZeppツアーというのはね、この東京がラストということなんで、楽しんでくれてますか、皆さん」とファンに尋ねると「イエーイ」と大きな声。
ライブハウスということで会場と距離感が近いのも魅力。ファンが叫んだ言葉が聞き取れなかった京本さんは「俺の空耳? なんか今言ってくれたなと思って。ありがとうって言ってくれたのね。ありがとうございます! 大事だね、ありがとうって。上の方も見えてますよ、ありがとう。いいね。平和な世界ですね、ありがとう(笑)」と“ありがとう”を連呼する。
ここでライブを盛り上げてくれているバンドメンバーの紹介が。愛あるメンバー紹介の後、「色々と地方公演をまわってきたので、一体感が生まれておりますけれども。こんなメンバーでやらせていただいております。やっぱり暑いね。ここまでの公演の感じとちょっと暑さが違うかも」と、ストローで水分補給。その姿に「可愛い~」と絶叫する会場。「ストローが可愛いを手助けしてくれております(笑)」と照れる京本さん。
初出しのエピソードトークも披露
「MCネタをね、これまで色々準備してきてたんですよ。スタッフにも心配されてましたので。『京本のMC大丈夫か』って言われてたんで。毎回ね、ユニバーサル・スタジオ行ったり、ネタが色々あったんですけど、今日マジでなくて、どうしようかなっていうことで。そういえば一個話してない話あったなと。みんな知ってんだけど、詳しく言ってないなと思ったのは韓国旅行」と言うと「おーっ」と会場。
「ラジオにとっといたエピソードをもう出さざるを得ない状況になっちゃいました。ちょっと予行演習みたいな感じで聞いてください」と韓国旅行の話に。「ミュージカル『Once』という作品を今年やりますけど、たまたま韓国で5月いっぱいまで上演していたので、これはもうなんかご縁だと。休みがちょうど1日、2日取れたので、プライベートで弾丸で一人で行きまして。Ⅹ見てたら分かるのかな。宮近(海斗)と松倉(海斗)と(松田)元太の3人が、『俺らも韓国、行きます』って。一緒に旅行じゃなくて、同じタイミングで一緒に韓国にいるだけなんだけど」と、韓国にいた後輩と一瞬落ち合った話も飛び出す。
「韓国で舞台を観させていただいて、めちゃくちゃいい勉強になって。夕方5時前ぐらいに終わったのかな。次の日、『Golden SixTONES』の収録があって、ゲストが長澤まさみさんだから、人生で一番遅れちゃいけない、絶対に飛行機に乗って帰んないとっていう気持ちで。僕はもう急いで帰んなきゃって、5時に終わってアプリでタクシーを呼んで。会場から空港まで30分ぐらいって聞いてたんで、7時ぐらいに飛行機を取ってたんですね。それでタクシーが来たんで乗って、行き先も指定してるから、もう安心して、英語できないけどいいやと思って、座ってたわけですよ。そしたら、ブーンって出発し始めて、もう10秒ぐらい…10メートルぐらいで停まってドア開けられたの。俺、脚組んでたのが良くなかったのかなとか、マナー悪かったかなとか色々考えたんですよ。『いや、目的地ここだよ』って言われた」と現地のタクシーの運転手と翻訳機なしで気合のやりとりをしていたという。
「そしたら俺がアプリの設定をミスってて、目的地を自分の居場所にしてたの。そんなことないっすよね。普通。嘘ついてないの運転手さんも。でも、さすがに、おかしいと思ってほしいじゃない。俺はもう人生でももう一番のプリーズが出たね(笑)。もうホントにあんなに“プリーズ”って言ったことない。そしたら、『今はめちゃくちゃ混んでる。1時間ぐらいかかるよ。そんなのには僕はもう付き合いたくない』みたいな感じに言われて降ろされて。まさみの顔が浮かんで、ヤバい、ヤバいって(笑)」と、焦ったその瞬間を振り返る。
「急いでまた新しいタクシー呼んで、そしたら、その人がすごい優しく連れていってくれて。本当に1時間かかったの。もうギリギリなんとか入って、出発直前の宮近たちをつかまえて、写真撮って、バイバイって。俺も数十分後には乗って帰ったんですけど…、こんなことがありました。なかなかすごい経験じゃないですか。その場で降ろされたんすよ。ヤバイ? 長い? 北斗よりは長くないよ(笑)」と旅先のハプニングエピソードを披露して笑わせていた。
「俺のMC、なんとか今日も乗り切ったな~」と安堵した様子で、着替えタイムに。普段はバンドメンバーが演奏してつなぐそう。この日は、「今日はちょっとね、僕仕込んできまして。いつもの楽器を封印して、ちょっと子供の頃を思い出してね、無邪気に演奏してもらおうかなと思うわけでございます」とステージにマラカスや鈴、タンバリンが登場。バンドメンバーが演奏してつなぐ場面もあった。
着替えから戻った京本さんは、「皆さん、体調は? 大丈夫?」と呼びかけ、「クーラーは感じる? 何、俺の今の質問(笑)」と自分に突っ込みを。「上の人たちは?」と聞くと「涼しい~!」と叫ぶ2階のファン。すると「寂しい?」と聞き間違え、「ごめんなさいね、涼しい?」。「大我は?」とファンから聞かれると、「俺はみんなのおかげですごい暑いよ。(キャーという会場から興奮混じりの反応が)何ていうか、汗だく…。これはキャーッてなんないんだ(笑)」と照れながら見まわし、「なるほど。後半戦、行きましょうか。SixTONESとかみたいに50分喋っていたら、Zeepを使わせてもらえなくなっちゃう(笑)」と笑わせてから後半へ。
後半戦で、会場のボルテージは最高潮
そして、また1曲歌い終わり、「大好き~」「頑張れ~」という声が客席から上がると「今までの公演では言ってないけど。いいの? 争いが起きるよ。内緒にする?」とニヤリ。「うっせー分かったよ。大好き!」と照れながら、ちょっぴりツンデレな愛の告白をする場面も。照れ隠しで「キッツー!」と叫びつつ、「楽しくなっちゃったということで」と京本さん。「大好き」というファンの声に「大好きを言い合うだけの関係でいいんだ。形はいらない?」と京本ワールド全開。ライブを終わりたくないファンの声に「そうだよな。気持ち分かるんだよなぁ。(長澤)まさみに置き換えています。あの収録、一生続けと思ったし(笑)」と、まくしたてるように喋り、絶好調だ。
ピンクのカーディガンをずらして羽織り、タンクトップから肩を覗かせながら歌ったのは、the pillowsの「ストレンジカメレオン」。ときおり、萌え袖になりつつ、ギターを弾くしぐさを見せる。もともとバンドスタイルのライブに憧れがあったという京本さんだからこそ、ロックなあおりの見せ方も魅力的でパーフェクト。自身いわく「ロックとアイドルのハイブリッド的な演出が、いいバランスで融合している」というが、まさにその通りだ。

注目は「-27-」での冒頭、初めてのドラムプレイ。勢いたっぷりの演奏の後、目が赤く光るパンキッシュなマスクをして、ステージをエネルギッシュに駆け回る姿も。やりたかったロックライブを存分に楽しむ姿がそこに。“負けじとこの声叫んだ”というフレーズでは、どこか反骨精神を滲ませながら生きている京本さんのロック魂がはじけた。
アンコールでは会場が一体となって手拍子をする中、「皆さん、アンコールありがとうございます」と再びステージに姿を見せる。「熱くなれましたか? 明日、頑張れますか? じゃあ、もういっか。もっと遊びたいですか? 最後にもうちょっとだけ熱くなりますか?」とコール&レスポンス。「タオルを持っている人、持ってない人はもちろん手を上げてください。準備はいいですか? 最高の明日につなげましょう」と呼びかけてから、アンコール曲へ。グルグル、タオルふって会場がひとつになったり、「次のパートは皆さん歌ってください。いいですか?」という声で一緒に歌ったり。「まだまだ足りないよ、大きな声で!」と激しくあおる京本さん。
アンコール2曲を歌い終わると「皆さん、ありがとうございます。最後に一つになりました。明日からもお互い頑張っていきましょう。またこうやって皆さんと熱いロックの音楽で交わえる日が来るように精進していきますのでどうぞSixTONESとして、ART-PUT、よろしくお願いします」と挨拶。最後に「いっぱいの“大好き”、受け止めました。ありがとう。いつか大きくなって返しますんで」と「またね~」と楽しそうにVサインをしてステージを去った京本さん。今回は初ツアー。これからも様々なインプットを経て、京本大我の音楽を届けていく嬉しい予感に酔いしれるZeppの夜となった。
取材、文・福田恵子