舞台版、ドラマ版の『向こうの果て』の同じ役を演じる二人が初対談。迷える松本まりかさんに、小泉今日子さんが送るアドバイスとは。

ある殺人事件の容疑者・池松律子と彼女の人生に関わる男たちの物語『向こうの果て』。WOWOWオリジナルドラマ版では松本まりかが、舞台版では小泉今日子が演じる。映像や舞台、ときには紙の上で言葉を操る二人が、正直に自分を物語るということについて話してくれた。

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松本:今日子さんは憧れの存在なので、今回、舞台とドラマで同じ役をやらせていただけるなんて大事件! ということは言いたくて。知り合って最初の頃にバーでお会いしたとき、「『六番目の小夜子』(’00年放送)のときから見てたよ」と話しかけてくださって。今日子さんの目の中には入っていないと思っていたので、存在を知ってくださっていたことが、衝撃でした。

小泉:(笑)。好きなドラマだったし、ティーンエイジャーだったまりかのことはすごく印象に残っています。それから見るたびに、「あ、あの子だ」と思ってたんだよ。まりかの奥にあるものが生かせる役って、若いときはなかなか演じる機会がないんじゃないかと思っていたから、年齢と積み重ねてきたものがガッと噛み合ったんだなという瞬間もあったし。好きな俳優だったんだよね。だから、見たものは全部覚えてます。

松本:すっごく嬉しいです。今回ご一緒できるとわかって、今日子さんからメールをいただいたんですが、何度も見返して、頑張ろうと思える文章だったんです。「まりかは他に代わりはいない女優さんになってると思う」と言ってくださって、感動でした。

小泉:例えば、男を寝取る酷い女になったとしてもお岩さんになったとしても、その根底にある寂しさや可愛さがきちんと表現できる人なんだなって。そういう役を全力でやって、演技派としてのし上がっていく人もいるかもしれないけれど、まりかはいつも揺れているんですよね。だから、見ている人の心も同じように揺らすことができる、みたいな。技術だけじゃなく、その役について考える時間をどう過ごしたのかなと想像させる。それに、声も素敵だし。

松本:(突っ伏して)ヤバい……。

小泉:舞台は遠目から観客にどう見えるかを考えて表現するけど、映像は心の揺れみたいなものがダイレクトに伝わる演出、演技になっているはずだから、どっちも観てほしいですね!

松本:本当に。でも今日子さんの舞台を観た後に演じるんじゃなくて、よかった。今日子さんの律子を意識しちゃうと思うから。

小泉:それはお互い。まりかが演じたときはこの台詞が印象的に聞こえたけど、私のときは違う台詞が残ったというふうになるのかなと思うと、それも楽しみですね。

誹謗中傷との上手な付き合い方って?

松本:私、芸能界は一応長いんですが、メディアに出始めたのが最近なんです。なので、役の印象が強いみたいで。あざとい役柄やイメージを面白がっていただいて、私自身も興味を持ってもらえていることに感謝しているのですが、ここ最近イメージが先行してセクシーな部分を誇張されるようなニュースもあったりして、ツラいなと思うこともあるんです。今日子さんは若い頃から週刊誌に良いことも、ときには良くないことも書かれてきたわけじゃないですか。事実と全然違うじゃんという記事が出たときに、どういう精神状態でいらしたのかなって。

小泉:全然違うじゃん! って話を平気で書く人が本当にたくさんいますからね。私は16歳で歌手デビューしたから、わりと全国的に認知されるのが早くて。10代の子に向かって、「社長とデキている」とか書いたりするわけです。会ったこともない人と付き合っていると噂されたり、20代のときは大麻で捕まったなんていう記事がまことしやかな感じで出たり。その都度、友達が心配して電話をかけてきて、「いるの? キョンちゃんが大麻で捕まって、目黒署にいるって出てるよ」って。「まじ? 家にいるよ、大麻とかないし吸ってないし」って答えて。会社からも連絡があって、「信じろよ!」って怒鳴って切ったけどね。

松本:なるほど、それはすごい。

小泉:ファンの人は信じてくれるだろうと思ってたから、あまり心配はしてなくて。ただ、周りの人たちが見たら嫌な気持ちになるんだろうなと気にはなりましたよね。家族は生まれたときから一緒だから、まだ信じてもらえると思ったし、あの人たちは言い返せるなって。でもまだ幼かった姉たちの子どもたち、本当に弱い立場の人たちをどうやって守ろうと考えていたら、全然強くいられた。

松本:自分が傷つくことよりも、周りを心配されてたんですね。

小泉:自分より弱い子たちが私のせいでいじめられたらどうしよう、みたいな。今は姪っ子や甥っ子が30代になって子どもができて、また同じ現象が起きてて、孫みたいな子がいっぱいいて、この子たちがいるから頑張れるし、この子たちにとっていい未来って何だろうと考えていると、そんなゲスなことは気にならなくなっていくところはある(笑)。根がポジティブっていうのもあるけど。

松本:初めてお会いしたときも今日子さんの明るいこと! もうそこにいるだけで、プワ~ッて華やかで、目が追っちゃう。私は当時20代だったけど、ドヨーンとしてましたよね(笑)。「まりかどうした!」とか言われて(笑)。

小泉:でもそのドヨーンも見たくなっちゃう(笑)。面白かったのが、知り合いしかいない部室みたいなバーで、まりかが入ってきてドアを閉めた途端、電気が消えて真っ暗になって(笑)。

松本:まさに私(笑)。今日子さんはキラキラしてる。私もこんなふうになれるのだろうかって思う。笑って明るく生きたいけど、なかなか人は変われないもので。

小泉:本当にそのドヨーンが魅力だよ。一生懸命に悩んでるまりかも可愛いし、ちょっと不器用なところも魅力で、そういう人じゃないと表現できない役も絶対にある。いろんな役者が必要なわけだから、そのままでいてください。撮影してたときも、すぐ小悪魔出してくるポージング、すごく可愛かった。私からしたらそこが憧れだから、お互いなのよ。

松本:今日子さんに憧れなんて言われたらもう……。

『向こうの果て』 ドラマ×舞台×小説、連動プロジェクト。内田英治監督のWOWOWオリジナルドラマ版は、5/14(金)放送・配信スタート(毎週金曜23:00~。第1話無料放送、全8話)。ゴツプロ!第六回公演は、本多劇場(東京都世田谷区北沢2-10-15)にて、4月23日(金)~5月5日(水)上演予定。小説は幻冬舎より発売。

こいずみ・きょうこ 1982年に歌手デビュー。女優として映画、舞台などにも多数出演し、執筆家としても活躍中。2015年より株式会社明後日の代表を務め、プロデューサーとしても活動する。

まつもと・まりか 女優。2000年ドラマ『六番目の小夜子』でデビュー。'18年『ホリデイラブ』での演技で注目される。林真理子原作『最高のオバハン 中島ハルコ』(フジテレビ系)に出演中。

※『anan』2021年4月21日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・後藤仁子 ヘア&メイク・熊谷波江(小泉さん) AYA(LA DONNA/松本さん) 取材、文・小川知子

(by anan編集部)

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