自分には卑屈なところなど一切ないと断言できる人なんて、はたしているだろうか。主人公の斎藤恭平は、ネガティブで存在感が薄いことを自覚している、いわゆる“陰キャ”の大学生。三浦風さんの初連載となる『スポットライト』は、デビュー作「ないものねだり」がプロトタイプとなっている。

自分がかわいいのはみんな一緒!? まぶしくて辛辣な大学生群像劇。

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「その主人公も陰キャっぽかったのですが、もっと盛ってみようということになり、結果、かわいそうな感じになってしまいました(笑)」

自分と他人との間の防護壁のように、首からいつも一眼カメラをぶら下げている斎藤は、大学に入学して早々、同じクラスのさばさばした美女・小川あやめに一目惚れする。といっても話しかける勇気はなく、彼女のことを密かに撮影……つまり盗撮して、笑顔を愛でる日々なのだが、あるときリア充グループから花見の記録係をしてほしいと頼まれる。しかし花見というのは口実で、真の目的は“一軍男子”があやめに告白をする決定的シーンの撮影だった。

「陰キャの側から見ると陽キャって敵なんですけど、勝手に敵対心を抱いているだけで、実際はそれほど嫌な人でもなかったりしますよね。反対に陽キャといわれる人も、実は陰キャっぽいところがあると思うので、その辺りを意識して描いてます」

斎藤を無邪気に振り回すのが、あやめと予備校が一緒だった逸崎元貴。ミスコン開催の夢を以前から持っていた元貴は、学園祭の実行委員として奔走。弱みを握ったのをいいことに、斎藤をミスコンのカメラマンに任命する。戦略的で自己評価の高いミスコン候補者の圧に斎藤は疲弊するものの、自分好きという根っこの部分は同じだったりして、陰キャ、陽キャでは単純に線引きできない人物像が浮かび上がってくる。さらに斎藤が表面的にしか評価していなかったあやめの素顔が、距離が近づくにつれて見えてくるのも生々しい。

「どのキャラクターも自分が想像できる範囲内だと面白くはならなくて。考えすぎず、想像を超えていく塩梅を探りながら描いています。それってどうやるんだよ!? って感じですけど(笑)。とりあえず今の斎藤くんは友だちになりたくないタイプなので、なってもいいかなと思えるくらいにはちゃんとしてあげたいです」

友だちになれるかどうかはさておき、自分のなかにもいる“ヘタレ斎藤”をなんとかしてやりたい! と前のめりになってしまう作品だ。

『スポットライト』 陰キャの大学生・斎藤恭平が恋をしたのは、周りも一目置く美女・小川あやめ。ミスコンをモチーフにもつれ合う人間模様を描く。第2巻が4月23日に発売予定。講談社 660円

みうら・かぜ マンガ家。2019年「ないものねだり」(『コミックDAYS』に無料掲載中)で「アフタヌーン四季賞2019 春のコンテスト」四季大賞受賞。

※『anan』2021年3月31日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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