村上Tって何のこと? と思うかもしれないが「村上」といえば村上春樹、「T」といえばTシャツ。『村上T 僕の愛したTシャツたち』は作家、村上春樹さんのTシャツコレクションを綴ったエッセイだ。
murakami

村上さんはジャズを中心としたレコードコレクターとして知られるが、レコードはある程度熱心に集めているのに対して、Tシャツは自然にたまったコレクション。旅先で目について買い込んだり、いろんなところからもらったり、マラソン大会でおなじみの完走Tシャツだったり……。段ボール箱に詰めていたものでも、引っ張り出してみるとこだわりや好みが徐々に見えてくるのが面白い。

たとえばコレクターにはありがちなのかもしれないが、自分で買ったものでも必ず着るとは限らないこと。ロックバンドのツアーTシャツは記念の意味もあるのでなんとなくわかるが、動物柄はそのかわいさに“遠慮”して、なかなか着る機会を持てなかったり。もらいものはさらに勇気が必要で、その筆頭がいわゆる販促Tシャツ。海外では本の出版に合わせてノベルティを作ることがよくあるそうで、佐々木マキさんの表紙の絵が使われた『ダンス・ダンス・ダンス』のTシャツなんかはファン垂涎だが、たしかに本人はなかなか着にくいだろう。いわゆるメッセージTシャツも好みではなく、その代わり(というわけでもないだろうが)意味不明のアルファベットが並ぶレタリングTシャツは結構着るそう。

ほかにもウィスキーTシャツ、大学のTシャツ、熊関係、ビール関係などさまざまなTシャツと、それらにまつわったり、まつわらなかったりするよもやま話が楽しめるのだが、印象深いのはやはり村上さんが一番大事にしているという「TONY TAKITANI」Tシャツ。映画化もされた短編小説「トニー滝谷」との関係はいかに? 自然に集まったものだけれども愛情が感じられ、ゆるやかな語り口は着慣れたTシャツのような心地よさが。女子も欲しくなるデザインが意外と多く、村上さんのかわいいもの好きな一面を垣間見ることもできます!

村上春樹『村上T 僕の愛したTシャツたち』 『POPEYE』の人気連載が一冊に。18編のエピソードと、108枚のお気に入りTシャツを収録。野村訓市さんによるインタビューも。マガジンハウス 1800円

※『anan』2020年7月1日号より。文・兵藤育子

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
しずるが舞台『四畳半神話大系』に出演!「僕らはまだ、演劇にお邪魔している感覚です」
しずるが舞台『四畳半神話大系』に出演!「僕らはまだ、演劇にお邪魔している感覚です」
Entertainment
Today's Update
野間口徹「またあの世界に連れていってくれるんだと思うと楽しみです」。小林賢太郎の新たなコント公演「ル・コント」に出演
野間口徹「またあの世界に連れていってくれるんだと思うと楽しみです」。小林賢太郎の新たなコント公演「ル・コント」に出演
Entertainment
Today's Update
世界のトップアスリートたちが再び、東京で激突! 「セイコーゴールデングランプリ陸上2026東京」のみどころは?
世界のトップアスリートたちが再び、東京で激突! 「セイコーゴールデングランプリ陸上2026東京」のみどころは?
Entertainment
注目シンガーソングライター・ふみの、3rdシングルリリース!「善悪の境界線が揺れる瞬間を感じられる楽曲に」
注目シンガーソングライター・ふみの、3rdシングルリリース!「善悪の境界線が揺れる瞬間を感じられる楽曲に」
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載