不眠症に悩む高校生が織りなす、ボーイ・ミーツ・ガールの行方は。
能登にある九曜高校に通う中見丸太(なかみ・がんた)。目下の悩みは不眠症。日中眠くて不機嫌そうな中見は、クラスでもやや浮いた存在だ。
文化祭の準備に忙しい女子クラスメイトからダンボールを運んでくるように言われ、本館に出向く。実は、この高校には本館3階に幽霊が出るという噂が。そのいわく付きの場所にあるのが、廃部になった天文部の部室なのだ。中見が、いまは物置代わりになっているその場所に足を踏み入れてみると、そこにいたのはクラスメイトの曲伊咲(まがり・いさき)。お互いが不眠症であり、「自分は変なのではないか」と悩んでいることを打ち明け合うことに…。
そんな高校生男女の一風変わった出会いから、『君は放課後インソムニア』の幕は開く。その著者がオジロマコトさん。
「不眠をテーマに取り組んでみようと思ったのは、自分自身も小中学校のころに、眠れなくて苦しかった夜があったからですね。いまも周りに眠れずに悩んでる人が多くいて、共感してもらえると思いました。中見と伊咲は、相反するタイプにしようと考えました。中見がメガネを直すときの手つきとか、伊咲のそのときどきの気持ちがそのまま歩き方に出てしまうとか。そういう仕草の積み重ねで、それぞれのキャラクターができあがってきたと思います」
眠れない中見と伊咲は、家を抜け出して夜の散歩をしたり、天文台のある部室を居心地よく整えたり、部室に迷い込んできた猫を保護したり……。ふたりだけの秘密が増えるにつれ、距離も近づいていく。そんな甘酸っぱい展開も読みどころ。
「普段歩き慣れている場所も、夜だと特別な場所に見えると思うんです。日常の学校生活に安全地帯のないふたりだからこそ、安心できる場所を用意してあげたかった。それが、あの天文台のある部室。ささやかなことでも、ふたりですれば特別な楽しい体験になるのだろうなと」
物語の伏線はいくつも用意されているが、まだまだ予測不能な展開だ。
「天文部としての活動や、花火大会、臨海学校などの学校行事のたびに、ふたりにはさまざまなことが起きていきます。その中で、彼らが抱えているものや過去のことなどが少しずつ見えてくるはず。ふたりだけの特別な時間や新たな場所を増やしていくつもりなので、見守っていただけたらうれしいです」
表情豊かな中見と伊咲を追っていると、彼らと一緒に夜の冒険を楽しんでいるかのような気分になれる。続きが楽しみ。
オジロマコト『君は放課後 インソムニア』1 幽霊の噂から近寄る人もいなかった天文部の部室で、中見と伊咲は、つかの間の眠りといくつかの秘密を共有することに…。週刊ビッグコミックスピリッツ連載中。小学館 591円 ©オジロマコト/小学館
オジロマコト マンガ家。代表作に『富士山さんは思春期』(全8巻)、『猫のお寺の知恩さん』(全9巻)等。12月に『君は放課後インソムニア』2巻が発売予定。
※『anan』2019年11月20日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)
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