まだ少し肌寒さの残るなか、住宅が密集する路地を歩きながらの撮影。ずんずん歩いてゆく撮影スタッフのあとをついて、穏やかな表情で歩いていた井之脇さん。
ふとカメラマンがレンズを向け、シャッターを切り始めると、恥ずかしくなったのか照れ笑い。どうやら、かなりシャイな方のよう。そんな井之脇さんが、いま話題の演劇作家、マームとジプシーの藤田貴大さんの舞台『CITY』に出演する。
――藤田さんといえば、演劇界にとどまらず、アートや音楽、ファッションなどの分野からも注目を集める存在です。その舞台に出演するのはどんなお気持ちですか?
以前から存在は知っていて、おしゃれなカリスマのイメージを持っていました。舞台を拝見したのは出演が決まってからなんですが、僕がこれまで観てきた演劇とは違う、いい意味ですごく写真的な舞台だと思いました。平面を大事にしていて、それを積み重ねて奥行きを作っている。空間の使い方に長けている印象を受けました。
――その藤田さんの舞台に出るということで、いま井之脇さんが期待していることはありますか。
演劇はほとんどやってきていませんから、単純に自分がやってきたことだけでは通用しないだろうと思うんです。楽しみですが、それ以上に不安も大きい。ただ、映像畑でやってきた僕が、いい意味で演劇らしくない藤田さんとやることで、何か溶け込める部分も…あれ? 何の話でしたっけ?
――期待していること、です。
ああそうでした(笑)。藤田さんに新しい自分を引き出してほしいと思いますし、僕自身もまだ知らない、触れていない分野に踏み出してみたいと思っています。
――これまで映像畑でやってこられたというのは意識的にですか。
もともと映画がすごく好きで、それをやりたいという気持ちが強くて、スケジュール的にそっちを優先してきたというのはあります。ただ、いま演劇に挑戦して、もっと自由に演じられたらとか、自分の芝居を見つめ直す機会になれば…って、質問って何でした?
――えっと…(笑)、映像畑でやってきたのは、という…。
そうでした…(笑)。舞台のお仕事を避けていたわけではなく、チャンスがあれば、やりたいとはつねづね思っていたんです。舞台ってライブですから、お客さんの反応がじかに返ってくるわけで、映像では体験できないこと。今回ならば600~700の人が一緒の時間を共有するわけで、怖くもあるけれど、楽しめたらと思います。
――人前は、平気なほう?
素の自分で人前に出るのは緊張しちゃいますが、お芝居している時は、たぶん大丈夫だと思うんです。あっ…や、でも…セリフが飛んじゃう可能性もありますよね…。これ、余談なんですけれど、いままでセリフが飛んだことってなかったんです。でもこの間の『集団左遷!!』のクランクインで、福山(雅治)さんが主演ということもあって、報道のカメラの数が尋常じゃなくて、緊張して、セリフが全部飛んじゃったんです。皆さんは笑ってくださったけれど、僕の中でトラウマになってしまい…。
――長いキャリアの中で、これまではなかったのに。
これまでは、いくらスタッフさんがいても問題なかったんです。でもその時は、支度場で支度していた時から異様な雰囲気で…。もうあれ以上悪いことは起こらないと思いたいです(笑)。
いのわき・かい 1995年11月24日生まれ、神奈川県出身。子役として活動を始め、黒沢清監督の映画『トウキョウソナタ』でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞。ドラマ『おんな城主 直虎』や『ひよっこ』のほか、昨年の『義母と娘のブルース』などで注目を集めるように。現在、ドラマ『集団左遷!!』(TBS系)に出演中。
井之脇さんが出演する舞台『CITY』は、5月18日~26日まで彩の国さいたま芸術劇場にて上演。作・演出はマームとジプシーの藤田貴大さん。藤田さんが「新たなフェーズ」と位置づける今作は、現代の都市を舞台に「ヒーロー」とは何かを描き出す。主演は柳楽優弥さん。兵庫、豊橋公演あり。SAFチケットセンター TEL:0570・064・939
ニット¥34,000 パンツ¥34,000(共にオーラリー TEL:03・6427・7141)
※『anan』2019年5月15日より。写真・山崎泰治 スタイリスト・檜垣健太郎(little frends) ヘア&メイク・小林雄美 インタビュー、文・望月リサ (by anan編集部)
(by anan編集部)
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