しかし、最低限の状況説明しかされない中で、人物たちが放つキレのいいセリフがぴたりと決まり、よくある日常の印象ががらりと変わる。
なかでも女子高生たちが古めかしい言葉遣いで小難しい理屈を振りかざす、セリフ回しの面白さは抜群だ。
「セリフの内容については、自然と出てくるままに任せています。あとは、もっと無駄に語り続けたいところを自制したり、語らずに済ませたいところで説明せざるを得なかったり、というような工夫は必要になってきます。私が鑑賞する側になったときには、物語をその終わり方で評価しがちな性質なので、創作の際にもそこに重きを置いています」
恋バナや思想ネタ、ホラーなど、テーマの守備範囲が広く、短い作品なのに展開が読めない。そんな独特の作品世界を彩るのが、〈山ぶり〉〈目も耳〉など内容とどこかズレた感覚で付けられたタイトルの妙だ。
「題はほとんど毎回最後に決めていて、その作品の内容を通じて、一言であらわすとしたら何になるかということを考えて出します」
手描きの斜線や横線、格子などを多用するタッチで、セリフの文字までが書き文字というのもすごい。
「絵に関しては単純に、漫画を描き始めたときにスクリーントーンの使い方を知らなかったから、というところが大きいです。本当は線の少ない、すっきりした画面にも憧れがあるのですが、そもそも自身の画力や字にコンプレックスがあるため、拙い描線をごまかす意味でも線が多くなっているとか、ちょっといびつな字を書くとかが習い性になりました。吹き出しの配置については、どの作品もページ数が少なくて慌ただしいので、なるべく自分の思うようなテンポと順序で読んでもらえるように気をつけています」
平方さんのマンガはよく「わからないけどすごくいい」と評される。
「そういう評価がとても光栄というか、自分の目指しているものに近いと思われるので、嬉しいです。でも、具体的に言語化していただけるともっと嬉しいのも確かです」
『うなじ保険』カップルを尾行調査することに情熱を傾ける女子高生・阿和&鳴見コンビの連作や、著者自身が特にお気に入りと語る「設置」「専用」は必読! 白泉社 800円©平方イコルスン/「楽園」/白泉社
ひらかた・いこるすん マンガ家。同人活動を経て、2011年、白泉社『楽園 La Paradis』第5号で商業デビュー。'12年『成程』を刊行。『楽園』本誌&web増刊で連載中。
※『anan』2018年11月28日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)
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