自分のためではなく恩返しのため、とにかく“今”ベストを尽くしたい。

そんな大舞台が目前。おそらく想像を絶するプレッシャーの中にありながら、インタビューに答える村田さんからは、まったく気負いが感じられない。
「もちろんプレッシャーもありますし、恐怖心もつねにあります。自分という存在を失ってしまうんじゃないかという恐怖心と、ここまで支えてくれた方たちの期待を裏切ってしまうのではないかというプレッシャー。でも、逆に言うとそれだけしかない。だから克服できると思っています。ただ、絶対に勝ちますと言うつもりもありません。スポーツ心理学でよく言われることですが、試合においては、自分がコントロールできるのは、自分のプレーだけ。相手も審判も結果もコントロールできない。だから、今はとにかく自分のプレーだけを考えて、ベストを尽くすことだけに集中しています」

子供の頃から父親に「本だけは読みなさい」と言われてきた教えを守り、今でも練習の合間の読書を欠かさない村田さん。その言葉のなかには、数々の本によって培った哲学的な視点も光る。
「いや、僕はほんとに単純な人間で、そんな大した人間性はありません(笑)。ただ、『ニーバーの祈り』や、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』などを読んでいると、やっぱり“今”が大事だと気づかされるんです。過去に縛られるとか未来がどうとかではなくて、つねに今を生きるしかない。人生に答えを期待するのではなく、自分がどう人生に答えを出すかだと」
そう語る彼の目は深く強く、まるで求道者のよう。今回の試合がますます楽しみになってくる!
「以前と違って、自分のためという感情は、もう重要ではなくなりました。それよりも、この試合を作ってくださった方々、家族、支えてくださった方々へ恩返しがしたい。そして、読者の方たちが、少しでもボクシングに興味を持っていただければ、ほんとうに嬉しいと思っています」
むらた・りょうた 1986年1月12日生まれ、奈良県出身。帝拳ジム所属。2012 年ロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得。2013年8月プロデビWBA世界ミドル級ュー。12戦全勝(9KO)。
※『anan』2017年5月24日号より。写真・津留崎徹花 インタビュー、文・藤原理加
(by anan編集部)
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