ムダ毛処理の背景には女性の視線や圧があった。
「もともと男性にはヒゲを剃るという文化がありますが、あくまでも顔のみで体毛を剃ることには抵抗がありました。今も、40代半ば以上の世代では、“男がムダ毛処理なんて…”といった旧時代的な感覚を持つ人がほとんどです。しかし、女性の発言力が強くなってきたことで、団塊ジュニアである45歳以下、とりわけ20~30代の男性は、“私も処理しているんだからあなたもやりなさい”という女性からの圧を受けるように。その一方、女性は明治以降近現代はずっと“ムダ毛を処理しなければいけない”という社会規範を強いられていましたから、実は、男性が処理をするようになったのは、両性間の力関係の変化を表しているのです。具体的には、ハーフパンツをはく時などに、周りの視線を気にしてムダ毛を処理することが当たり前になってきました。さらに、ベッドの中ではアンダーヘアも見えてしまいますから、最近はクリニックやメンズエステで永久脱毛をする男性も少なくありません」
男性のアンダーヘアへの意識の高まりや、処理をすることへの抵抗の少なさは、これから、さらに加速していく模様。
「男性にはヒゲ剃りという、顔という大事なパーツの毛を剃る習慣が根付いており、剃るノウハウは、実は女性よりあるといえます。そのため、一度アンダーヘアの処理をすると、意外に抵抗がなくなり、習慣化する人が多いです。最近は、水に濡れても平気なケアグッズなども発売され、バスルームで誰にも見られず処理ができますね。2020年代には、おそらく多くの男性が、ごく普通にアンダーヘアを処理するようになるのではないでしょうか」
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くりた・のぶよし 甲南大学文学部教授。美容化粧服飾と流行を主な研究テーマとしている。『マンガでわかる社会学』(オーム社)など著作多数。『新社会学研究』(新曜社)にて、「ファッション&パッション」を連載中。
※『anan』2019年8月14日-21日合併号より。取材、文・重信 綾
(by anan編集部)
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