ノーベル賞受賞研究でわかった! 疲れやだるさを抑えて、肌や体も若返る…気になるワード「細胞力」ってどんなもの? part1

イラスト・サヲリブラウン 文・牧田ちえみ 構成・片岡延江 — 2021.11.2
だるい、疲れが取れない、そんな体の不調や、増えてきたシミ・シワといった老化の原因は、じつはそのほとんどにミクロの世界の「細胞」が関わっていることが明らかに。そのキーマンとなるのが、オートファジーとサーチュインというヒーローたち。これを活性化させて「細胞力」を上げることが、この先も若々しさの鍵になりそう。

疲れが回復しない、肌の調子もイマイチ…、その不調、細胞内で“何か”が低下している?

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その不調は細胞力のせいかも

  • 疲れやすい
  • 風邪をひきやすい
  • 太りやすくなった
  • シミが目立ってきた
  • 肌がくすんでいる
  • 小ジワが増えた
  • 髪が薄くなってきた
気分も沈みがちになる体の不調や悩みを抱えている人も多いのでは。コロナ禍のストレスやリモートワークでの運動不足など、理由はいろいろありそうだけど、本当の原因は、体の奥深くにあるのかも。内科・皮膚科医の日比野佐和子先生によると、

「人間の体は約37兆個もの細胞からできているといわれています。細胞内では古い細胞は常に修復され、いらないものを排除し、新しく生まれ変わろうと再活性化が繰り返されています。その修復機能が低下してくると疲労回復が遅れたり、太りやすくなったり、肌でいうとターンオーバーの周期が乱れてシミが濃く出てきたり、いろんな症状となって表れてきます」

理由のはっきりしない不調の原因は、細胞内に鍵がありそう。細胞研究で世界的に有名な吉森保先生によると、

「細胞が人間を作り上げている。その意味では体の調子が悪い、健康である、若々しい、老化した、これらはすべて細胞の状態で決まります。細胞は小さいので一個一個認識できないから実感はないと思いますが、細胞の機能が低下することで体も不調を感じたりすることになります。今までのアンチエイジングの考え方はほとんどが現れた不調にフォーカスした対症療法的ですが、本当に若々しくありたかったら細胞に働きかけなくてはだめなんです」

そもそも細胞の中はどうなってるのか、ミクロの世界にも社会の歯車があって各々役割があるよう。

「細胞の中には人間社会みたいなものが存在して、発電所やリサイクル工場にあたるものがあります。そこで働く人間にあたるのはタンパク質で、ひとつひとつ役割を持っており、細胞内に張り巡らされた交通網を行ったり来たりしている。この社会がちゃんと機能するようにしているのがオートファジーやサーチュインなどです」

次のマンガでは細胞内の攻防とキーマンたちをご紹介します。


お話を伺った方々

吉森 保先生
大阪大学大学院・生命機能研究科及び医学系研究科教授、生命機能研究科長、大阪大学栄誉教授。オートファジー研究の第一人者。

日比野佐和子先生
Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長。大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授、医学博士。内科・皮膚科・眼科医。アンチエイジングの第一人者としてTVや雑誌にも数多く出演。


細胞力に注目! 細胞の中で毎日行われていることをのぞき見。細胞をリフレッシュさせる鍵は?

細胞の中を再活性化させ、細胞の若返りを担うキーマンがオートファジー部隊と司令塔・サーチュイン。なかにはその活動を阻むもの、助ける存在も。そんな細胞内の攻防をご紹介。まずは細胞世界の住人の役割からチェックして!
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抜けないだるさや疲れ。それは細胞の機能低下が始まってるサインなのかも。細胞内部の新陳代謝や有害物質除去のために、オートファジー部隊と、サーチュインがキーマンになって日々奮闘。ところがその動きを止めるルビコンなる妨害屋もいたりするから、細胞内も人間界と同じく大変。キーマンたちをパワーアップさせる成分を積極的に摂るなど上手にアシストすることで細胞内の再活性化を促そう。
【登場人物】
アン子(ご主人様)

アン子(ご主人様)
疲れやすく最近何をしても調子が上がらずふさぎがちな27歳OL。
Dr.X

Dr.X
お疲れ女子の疲れの原因を探って教えてくれる謎のドクター。
オートファジー部隊(リサイクル屋)

オートファジー部隊(リサイクル屋)
ヒーロー1 細胞内の部品を回収してリサイクルして新品にしている働きマン。
サーチュイン部長(リサイクルの司令塔)

サーチュイン部長(リサイクルの司令塔)
ヒーロー2 細胞内でオートファジー部隊を先導する司令塔。
ルビコン(リサイクル妨害屋)

ルビコン(リサイクル妨害屋)
増殖するとオートファジーの働きをストップさせる困り者。
細胞ちゃん(ご主人様と一心同体)

細胞ちゃん(ご主人様と一心同体)
仲間は約37兆個。オートファジー部隊に助けられると、元気に若さを保てる。
ウロリチン(オートファジー、 サーチュインの元気の素)

ウロリチン(オートファジー、 サーチュインの元気の素)
ザクロ由来、ポリフェノール・エラグ酸が腸内で代謝されてできる成分。オートファジー、サーチュインに良い働きかけをする。
グルコサミン

グルコサミン
カニ・エビに含まれる成分。サーチュインを介してオートファジーを誘導してくれる。
レスベラトロール

レスベラトロール
ブドウや赤ワインに含まれる天然成分。オートファジーとサーチュインを活性化させる。

細胞力を解説! ノーベル賞をきっかけに注目を浴びた「細胞ケア」でフレッシュな体質に!

マンガの展開でおわかりいただいたようにオートファジーとサーチュインによって、細胞内は日々入れ替わり、若返りがおこなわれています。そんな細胞内の新陳代謝に関わるものたちの働きを改めてご紹介します。

オートファジーを上げて細胞内をリフレッシュ。

マンガで細胞は生命の基本で、ある細胞内の中ではオートファジーが内部をパトロール。細胞の部品を回収してリサイクルされることで、細胞内が新しく入れ替わり健康体でいられることがわかりましたが、吉森先生によるとオートファジーにはもうひとつ大事な役割も。

「細胞の中には有害なものが日々現れます。例えば発電所であるミトコンドリアに穴が開くと、そこからガンの原因になったりする活性酸素が出てきて危険です。オートファジーは、パックマンみたいに穴の開いたミトコンドリアを包み込んで分解してくれる非常に優れた機能を持っています」

有害物質を取り除く機能まで持ち合わせているオートファジー。そんな働きを指示する上司の存在もいるようで。

「代表的なのがサーチュインというタンパク質。細胞の社会にも指揮系統があって命令を伝達する係。サーチュインの指示はオートファジーにも届きます。いわば指揮官と現場の関係ですね」

まさに人間社会そのもの。でもそんな現場でオートファジーの働きにストップをかける厄介な存在がルビコン。

「タンパク質であるルビコンが増えるとオートファジーの動きにブレーキをかけ働けなくしてしまう。肝臓でこれが起きると脂肪肝という病気になることがわかってます。つまりはサーチュインなどの司令塔や実務をするオートファジーの活性を上げていくことが大事です」

活性化させる鍵は食品にもあるようで、ウロリチン、レスベラトロールなどの成分にも注目です。


加齢によるルビコン増加とオートファジー低下

【加齢とルビコンの関係】
出典:Shuhei Nakamura、Nat Commun2019より一部
【加齢とオートファジーの関係】
出典:Bejarano et al., Aging Cell、2018より一部
上記のマウスと線虫の実験から加齢によりルビコンが増え、その結果オートファジーが低下することが読み取れる。

細胞の不思議1…年とともに細胞は汚れてくる。

2009年に発見された、タンパク質・ルビコンは、主に加齢とともに増えてくるといわれています。このルビコンが増え続けると様々な弊害も!?
「ルビコンはオートファジーの働きを妨げるので、増えすぎると細胞内の新陳代謝がうまくいかなくなり、次第に細胞内の社会の機能が低下していきます。ルビコンをなくすという実験をしたら動物が1.2倍長生きすることができて、パーキンソン病など進行も抑えられることがわかってきています」(吉森先生)
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細胞内の新陳代謝が若さの鍵。ルビコンが増えるとオートファジーが邪魔されて細胞内の新陳代謝が低下。

細胞の不思議2…細胞内の新陳代謝や有害物を除去する2大ヒーローの存在。

目に見えない細胞の中身を新しくどんどん入れ替えてくれる機能が、オートファジーとサーチュイン。この2大ヒーローの活躍が、イキイキと元気に生きていくためには不可欠なよう。細胞内の部品を回収してリサイクルして新品にする優秀機能は、まさにサステナブル。
「細胞の中ではほぼ100%の効率でリサイクルされるので、まったく無駄がない。いくつになっても細胞をリフレッシュできるんです」(吉森先生)

体元気に、肌をピカピカに! 「細胞力」を上げるキーマン相関図。細胞内をきれいに元気に復活させる2大ヒーロー

細胞内は社会機能のあるタウンみたいなもの。
そんなタウンで日々奮闘するもの、邪魔するものたちをご紹介します。

【サーチュイン】

頼もしい細胞再活性化の司令塔。

サーチュインは、老化や寿命の制御に重要な役割を果たすと考えられているサーチュイン遺伝子(別名「長寿遺伝子」)の産物。全方位に指令を出す役目で、オートファジーの司令塔でもある。老化や寿命のコントロールに深く関与しているといわれ、活性化させることができたら、老化を遅らせることも期待できるといわれる存在。
サーチュイン

【オートファジー】

ノーベル賞で注目を浴びた細胞内の回復・若返りを担う働き。

細胞内のいろいろなものを回収して分解し、リサイクルする機能で、言ってみれば細胞内の新陳代謝機能のこと。今あるタンパク質から毎日新たなタンパク質の材料を作るなどして、入れ替えを促す、細胞内の若返りを担う立役者。このオートファジーを低下させないことが老化しない大事なポイントに。2016年、大隈良典氏がオートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞を受賞以来、世界中の科学者が注目。吉森先生は、大隈先生の一番弟子。
オートファジー

サーチュインとオートファジーに作用する天然成分

NUTRIENT

◎

ウロリチン

グルコサミン

レスベラトロール

ヒーローたちの元気の素。効いてくるとパワーアップ!
細胞内の再活性化を助ける3つの天然成分。

オートファジーとサーチュインに相乗効果を発揮するとして注目を浴びている成分。ザクロやベリーのポリフェノール由来のウロリチンと、ポリフェノールの一種のレスベラトロール、カニの甲羅やエビの殻などに含まれるグルコサミン。この成分は、オートファジーとサーチュインの活性化も確認されている。健康にはオートファジーを上げていくことがポイントなので、「細胞力」アップの鍵といえそう。

NUTRIENT

×

ルビコン

細胞内をきれいにする働きにブレーキをかける迷惑者。
オートファジーの働きを邪魔するストッパー。

細胞内をきれいにするオートファジーの働きを妨げるブレーキ役。加齢とともに増えてくると細胞内は汚れるばかり。オートファジーが働けなくなり、細胞の機能が低下することで、様々なトラブル、病気の原因を作ることに。一方で、働きすぎて暴走するオートファジーも中にはいるので、ストッパー役は100%悪ではなく、役割としては存在すべき物質。
ルビコン



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