「この作品で初めていじめっ子役に挑戦し、私はこれが得意なのかもと思ったんですよね(笑)。それからは、いじめっ子やキツい女の子を演じることが増えました。俳優としての最初のターニングポイントだったと思います」
役のイメージで「怖がられることもあった」と笑う吉川さん。
「素もキツい人間なんじゃないかと勘違いされることがあり、本当の私は違うんだけどなぁとモヤモヤすることも。その頃はまだSNSも今ほど普及していなかったので、自分の言葉を発信する場所もなかったですし。他にもお仕事で悩んだり、葛藤することもありましたが、誰かに相談することはほとんどなく、自力で乗り越えてきた気がします。小さい頃から大人に囲まれて過ごし、いろんな方を見てきたので、何かあったときはこうしようと自分で想像したり、対処する能力が自然と身についていたんだと今になって思います」
その後、学業を優先するため高校入学と同時に芸能界を引退し、1年後、俳優業に復帰。離れた期間は“己を知る”時間だったよう。
「俳優業を辞めて、パン屋さんでアルバイトしていたとき、自然と“パン屋で働く自分”を演じていることに気づいたんです。当時は、芸能界に戻るつもりは全然なかったけど、結局私は演じることが好きなんだと思い、復帰することを決めました。でも、一度辞めて戻る私を受け入れてもらえるのだろうか…という怖さもありました」
復帰作となったドラマ『愛してたって、秘密はある。』で演じた役柄は、吉川さんが得意とするミステリアスなクール系キャラ。にもかかわらず、「思ったような演技ができず、もどかしさを感じた」と、当時を振り返り苦笑い。
「映像で見ても演じた人物には迫力がなく、何か物足りない。1年のブランクの大きさを痛感しました。それは演技だけでなく外見も。パン屋さんで働いているときはマスク着用なのでノーメイクだし、日焼けも気にしない。体重も増えていたので、復帰前には1か月で5kg落としましたが、それでも顔は垢抜けなかった(笑)。顔つきが、何も意識してなかった人の表情で…本当に恥ずかしかったです」
求められる演技も子役時代とは違った、と吉川さんは言う。
「例えば泣く芝居でも、子役だったら『うえーん』と思いっきりわかりやすいものを要求されることが多いけれど、今はツーッと静かに流す涙だったり、演技の質が違う。そこに最初はとまどい、復帰直後は新人の気持ちでお芝居と向き合っていました。ただ、子役時代に多くの俳優さんと共演させていただいたので、『こういうシーンで、あの方はこうしていたな』と思い出しながら演じてみたり。小さい頃から多くを見てきたことで演技の引き出しは増えたと思うし、それらが今の自分の演技に繋がっている。全て俳優業の糧になっていると思います」
再スタートを切るまでの1年の休息期間で得たものも当然ある。
「アルバイトの大変さを知れたし、2日連続でお休みができたら友達と韓国旅行に。それまではスケジュールが不規則で、友達と出かけることも難しかったので新鮮な感覚。高校生らしい時間を送れたことは貴重な経験でした」
芝居勘が戻ってきたと手応えを感じられたのは、ヒロインを演じた青春映画『虹色デイズ』。
「それまでヒロイン役をやることはあまりなく、新たな挑戦でもありました。しかも、演じた杏奈はおとなしい女の子で、私が得意としてきたキャラとは真逆。最初は不安もありましたが、自分が思い描く杏奈を演じられたことで感覚が戻ってきたことを実感できたし、なにより自信にもなりました」
復帰から5年。ドラマ『恋はつづくよどこまでも』ではドライな新人看護師、昨年公開の映画『ハニーレモンソーダ』では内向的な優等生など、役柄の幅もさらに広がり、子役から大人の俳優へと華麗に進化。現在はドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』で主演を務め、レンタル彼女として働く女子大生の雪を好演している。原作は若い女性を中心に口コミで火がついた人気マンガで、作品の世界観にハマり、共感する読者が続出中。
「5人の女性の悩みやコンプレックスを描き、それがリアルで共感できる。私が演じる雪は壁を作り、自分をうまく出せない女の子で、その気持ちはちょっとわかるなって。登場人物の中で好きなキャラは整形を繰り返す彩ちゃん。周りの目を気にすることなく、自分の意志を貫く姿勢に惹かれます」
そして、「私も芯のあるカッコいい女性になりたい」と続ける。
「理想は天海祐希さん。周囲を気遣い、現場を盛り上げ、芝居への取り組み方も嘘のない演技も、全てがカッコいい。私も天海さんのように、誰かに憧れてもらえる俳優さんになりたいなと思います」
WEB限定公開の「一問一答」
吉川愛さんへ10の質問! WEB限定公開、必見です。
Q. 朝起きて、一番にすることは?
携帯をいじりながら、ベッドの中でダラダラする。朝が弱くてすっと起きれないので、出かける2時間ぐらい前に起きて、そのうちの1時間はベッドの中でボケーっとYouTubeを見たり、LINEを返したり、ゲームしたりします。
Q. なかなか眠れない夜、何をする?
なかなか眠れないんだったら寝ません(笑)。ベッドにも入らず、犬と遊ぶ。オモチャを投げたり、いい子イイ子したり。それで、眠くなったらベッドに飛び込みます。
Q. 犬派? 猫派?
犬派です。愛犬がいるので。
Q. タイムマシーンがあったら過去に行きたい? 未来に行きたい?
未来に行きたい(笑)。過去は覚えてるので、10年後の未来を知りたいです。
Q. 宝くじが当たったら、何に使う?
ベースは貯金したいですが、車を買う。
Q. 愛用のマスクはどんなデザイン?
今、つけている、フィッティのマスク。CMをやらせていただいてるんですけど、ホントに使いやすくて。私は鼻が痛くなりがちなのですが、これは大丈夫です。息もしやすいし、ホントにオススメです。
Q. 好きなおにぎりの具は?
いくら。小さい頃から好き。いくらか塩むすびを買ってます。
Q. あなたの弱点を教えてください。
面倒くさがり屋。予約したりだとか、あれやらなきゃ、あそこに電話しなきゃ…と思っても、「面倒だから明日でいいか」って(笑)。
Q. 子どもの頃の夢は?
パティシエです。一番はショコラティエになりたかったです。テンパリングとかやってみたいかった。
よしかわ・あい 1999年10月28日生まれ。東京都出身。3歳で芸能界入り。主演ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBS)放送中。待機作に映画『ALIVEHOON アライブフーン』(6月10日公開)がある。
ブラウス¥52,800(LOKITHO/アルビニムス TEL:03-6459-3946)
スカート¥47,300(UJOH/M TEL:03-6721-0406)
ブレスレット参考商品(NOMG info@nomg.jp)
左リング¥24,750、右リング¥28,050(PLUIE/PLUIE Tokyo TEL:03-6450-5777)
※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・川崎加織 ヘア&メイク・山口恵理子 取材、文・関川直子
(by anan編集部)