特別な日があるからこそ、普通の日も幸せに感じる。
「最初は暗い雰囲気だったけど、だんだん元気な感じになっていくとか、ちょっとしたストーリーを考えて、それをもとにアレンジすることが多いですね。普通すぎるアレンジはメンバーみんなあまり好きじゃないので、たくさん話し合いながら決めていく。そうすることでオリジナリティを出せたらいいなって思ってます。『ドラムのチキチキって音するやつあるやん!』とか言って(笑)リクエストしたり。基本的に私が作詞・作曲をしてるけど、みんなの意見を組み合わせて作ってますね」
一筋縄ではいかないバンドアンサンブル。例えば1曲目の「星に願いを」にはかなり長めの間奏があって、そこでのギターはとても雄弁だ。
「この曲は恋愛があまりうまくいってなくて寂しい夜に、憧れのロックスターに寄り添ってもらいたいという気持ちを歌ってて。ロックンロールを聴いて心が満たされてる女の子というか。『私は別にあなたがいなくなっても、このロックスターがいるんだもん』みたいな気持ちで書いたので、ギターのぺっぺに『君はロックスターね』って言って、長めのギターソロを作ってもらったんです。実際ぺっぺも曲を聴いてそういうイメージを持ってくれてたみたいで」
アルバムタイトルを直訳すると、“普通の生活”。普通であることはヤユヨにとってとても重要だという。
「例えば誕生日とかライブの日とか、ちょっとした特別な日があるからこそ、普通の日も幸せに感じる。主人公のとある一日を切り取った楽曲が多くて、普通とか日常っていうのはバンドのテーマになってますね」
前向きな歌詞だとしても、どこかに“君”への渇望や喪失感を覚えさせるのが特徴だ。
「私もひとりで生きてきたわけじゃなくて、その時期によって一緒に過ごしていた人はいるけど、環境が変わると離れてしまうことも多くて。『あれだけ仲良かったのに、今どうしてるか全然知らんな』って思って寂しくなったりする。だからといって『遊ぼうや』って連絡するわけでもなくて、結局私は私でその別れに納得して今生きてるやん、みたいな感じが強いのかもしれない(笑)」
初のワンマンツアーが全公演ソールドアウトするなど、バンド活動が活発化する一方で、リコさんには教育学を学ぶ大学生の顔もある。
「ちゃんと大学に行ってバイトやってっていう普通の女子大生の自分とヤユヨの自分と、ふたりおることで充実してるんです。大学の友達と喋って『こういう子もおるんやな』って思ったこととか、通学の途中で読んだ本の表現から歌詞に影響を受けたりもしてるので、バンド一筋だったら今みたいな曲は作れてないんじゃないかな。だから卒業してバンド一本になったらどうなるんやろうってちょっと不安なんです(笑)」
2ndミニアルバム『THE ORDINARY LIFE』。配信シングル「君の隣」、『王様のブランチ』エンディングテーマ曲「おとぎばなし」など全5曲収録。【全種共通(CD+DLカード)】¥1,500(TALTO/murffin discs)
ヤユヨ 左から、はな(Ba&Cho)、すーちゃん(Dr&Cho)、リコ(Vo&Gt)、ぺっぺ(Gt&Cho)。2019年1月、大阪で結成。同年12月に公開した「さよなら前夜」のMVはYouTube再生回数150万回突破。4人全員が現役大学生のポップスバンド。
※『anan』2021年6月23日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・小松香里
(by anan編集部)