不気味な色気に目が離せない! “あやしい絵”の展覧会が開催中

エンタメ
2021.03.24
妖しい、怪しい、奇しい…。「あやしい」にはいろいろな漢字が当てはまる。実は幕末の開国から戦前は、絵画や文学、演芸の分野で「あやしい」作品が数多く生まれた時代。伝統的な絵画の世界で、また創刊相次ぐ雑誌の挿絵や本の装丁にも、美しいだけではない、神秘的で退廃的、エロティックでグロテスクな情景が描かれた。そんな絵を集めたのが本展「あやしい絵」展だ。

激動の時代のカルチャーが生んだ、魔性の美。

幕末から明治初期には、戊辰戦争の場面を描いた「血みどろ絵」、ズタズタに引き裂いた文をくわえた美人画など、錦絵や浮世絵のテーマに変化が訪れる。明治中期になると、ヨーロッパの世紀末美術の影響を受けた耽美的な作風も。会場を巡ると、その時代の人々をひきつけてやまなかった「何か」が伝わってくる。

大正デモクラシーを経て、社会全体に民主的、自由主義的な風潮が広まると、画家たちの表現はより多様に。新しい様式やテクニックを取り入れるだけでなく、人の心の奥にある闇を生々しい表現で描き出す、特異な才能が次々と現れた。

注目は、上村松園、島成園に代表される女性画家の活躍。浮世絵以来続く美人画の枠にとどまらず、美しさはもとより、狂気をはらんだ怒りや悲しみを内に秘めた姿には、時を超えて訴えかけてくるものが。

他にも、幻想文学や異界の生き物、化身が登場する説話を題材としたものなど、不気味ながら色香あふれる登場人物の姿が描かれる。学校で習う美術史には出てこない「あやしい絵」が生み出した豊かな表現に、酔ってしまいそうだ。

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一、白粉の奥からにじむ悪女の官能。
甲斐庄楠音《横櫛》大正5(1916)年頃、京都国立近代美術館、通期展示おしろいで隠した肌の生々しさが透けて見えるよう。昔の恋人のためにゆすりを働き、殺人に手を染めた悪女を描く。

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二、姫は蛇になり、僧侶に絡みつく。
橘小夢《安珍と清姫》大正末頃、弥生美術館、後期展示(4月20日~5月16日)叶わぬ恋をした娘が蛇に姿を変え、相手の僧侶を焼き殺す。安珍・清姫伝説のクライマックスシーン。

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三、大正浪漫と少女の色香。
高畠華宵《『少女画報』 大正14年8月号 表紙》大正14(1925)年、弥生美術館、前期展示(3月23日~4月18日)大正から昭和初期にかけて活躍した挿絵画家・高畠華宵の描く少女は、さわやかさの中にあどけない色気。

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四、彼女の目線の先には何が?
島成園《無題》大正7(1918)年、大阪市立美術館、前期展示(3月23日~4月18日)自画像といわれるが、実際にはあざはなかった。「あざのある女性が運命と世を呪う気持ちを描いた」その心境とは?

あやしい絵展 東京国立近代美術館 東京都千代田区北の丸公園3-1 開催中~5月16日(日)9時30分~17時(金・土曜は~20時、入館は閉館の30分前まで) 月曜(3/29、5/3は開館)、5/6休 一般1800円 TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)

※『anan』2021年3月31日号より。文・松本あかね

(by anan編集部)

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