全身のツボが集中する手。自由に押して、体の悩みを解消。
「人体には経絡と呼ばれる気血の通り道があり、その上に点在しているのがツボ。経絡は全身をめぐり、さまざまな臓器や筋肉に繋がっているので、手のひらのツボを刺激することで全身にアプローチできるのです」
また東洋医学では、手は体全体を象徴するともいわれているそう。
「中指が頭から首、人さし指と薬指が腕、親指と小指が脚に対応するという考え方。ツボとは別に、このような体の部位を投影する“反射区”を刺激することでも、対応する箇所の不調を和らげることができます」
ここでは気になる不調に効くツボを徹底解説。好みの強さで刺激してみて。
【不眠】
気持ちが高ぶったり、不安が続いて眠れない。そんな時はこの2つのツボを刺激して、心を落ち着かせて。
肘の内側、小指側にある「少海(しょうかい)」を押し回す。
「心のトラブルに効くのは、心経という経路上にある少海。肘の内側、小指側の皮膚が柔らかいところにあります。ここは頭や感情と関係のある場所。3~4本の指で心地よい強さでなでることで、呼吸が整って気持ちが落ち着き、眠りにも入りやすくなります」
手のひらにある「少府」を押す。
「少府があるのは、手の指を内側に折り曲げた時、薬指と小指の先端が触れる間の位置。脳や精神と深い関わりがあるツボです。心を沈静化する作用があるので、興奮状態によって眠りにつけない時に、親指を使って押し揉むとリラックス感が高まります」
【肩こり】
自分では手が届かない肩甲骨まわりのこわばりも、手のツボ押しや簡単ストレッチで驚くほどスッキリ!
手首の手前、小指側にある「腕骨」を押す。
「肩こりに効くのは、肩を通り、耳や目へと繋がる経絡上にある腕骨。手のひらと手の甲の境目、皮膚のきめが変わるところに沿って小指側から指を滑らせると、小さな球状の骨に当たります。その手前の凹んだ部分。狭いところにあるので、尖ったもので押しても」
人さし指から小指を逆の手で引っ張り、手のひらを広げる。
「肩こりの原因はパソコン作業などで胸の筋肉が縮こまり、気づかぬうちに肩が丸まった姿勢になっていること。手のひらを広げるストレッチをすることで、胸に繋がる経絡の循環がスムーズになり、自然と胸が開くように。よって、肩こりや猫背も良くなります」
【肌荒れ】
ホルモン分泌の変化や皮脂代謝のバランスの崩れによる肌荒れこそ、ツボ押しで体の中からアプローチするのが正解。
親指の母指球の近くにある「魚際」を押し回す。
「魚際があるのは、親指の母指球と呼ばれるぷっくりとふくらんだ部分。そこの手のひら側と甲の境目の中央あたりに位置します。場所は人によってわずかに違うので押してみて痛い部分を探してみて。この魚際はニキビや炎症など、熱を伴うトラブルに効果的です」
肘を曲げて、シワの延長線にある「曲池(きょくち)」を押す。
「曲池が位置するのは、肘を深く曲げた時にできるシワの外側の先端。その凹んだ部分に親指を当て、押し回してみてください。魚際同様、熱を冷ます作用があり、ここを刺激することで皮膚が赤くなるような肌荒れや、腫れ上がったニキビの改善が期待できます」
【便秘】
便秘に効くツボのうち、慢性的な腸の詰まりは支溝、環境変化によるものは神門へのアプローチがおすすめ。
手首から指4本分のところにある「支溝(しこう)」を押す。
「手の甲側、手首を曲げた時にできるシワから指4本分ほど肘寄りにあるのが支溝。腸は第二の脳といわれるくらい、精神状態の影響を受けやすい器官。この支溝の広い範囲を4本指で押し回すことで、気持ちが和らぎ、大腸がスムーズに働くようになります」
手首内側、小指側のくぼみにある「神門」をなでる。
「手のひらを自分に向けて手首の小指側をさすると、小さな骨の出っ張りがあるのに気がつくはず。この内側の腱の間にあるのが神門です。精神や脳と関係が深く、旅先など、環境が変わったことで起こる便秘に効果的。心地よく感じる強さで柔らかくなでてみて」
柳本真弓さん 目白鍼灸院院長。カルチャーセンター等で講師も務める。著書は『「手」をもむ、触る、押すだけで、たちまち健康になる!』(小社刊)。
※『anan』2020年10月7日号より。イラスト・momokoharada 取材、文・菅野綾子
(by anan編集部)