“ピル”と聞くとどんなイメージが浮かびますか? 一般的に、日本では“妊娠を避けるための薬”として知られているけれど、
「実は、ピルには女性ホルモンを整えてくれる効果があるんです」
とは産婦人科医の吉野一枝先生。
「ピルはホルモン剤の一種で、女性ホルモンの黄体ホルモンと卵胞ホルモンからできています。服用すると血中の女性ホルモンの濃度が低く一定に保たれるため、排卵が起こらなくなり、卵巣は一時的に眠った状態に。避妊効果が期待できるのはもちろん、月経痛やPMSなど、女性特有の不調を軽減させることもできます」
“排卵が起こらない”と聞くと「体に悪いのでは?」と思うかもしれないけれど、実は逆。
「排卵による卵巣への負担を避けることができるので、将来の卵巣がんのリスクも下げられるなど、いいことずくめ。“女性の人生を変える薬”といっても過言ではありません」
通常の女性ホルモンの分泌
生理後から排卵までは卵胞ホルモンの分泌が多く、排卵後から生理までは黄体ホルモンの分泌が多くなる。ホルモンの状態が体調やメンタルに影響するので、ホルモンの波に揺さぶられる。
ピルを飲んでいるときの女性ホルモンの分泌
卵胞ホルモン、黄体ホルモンともに分泌が少なくなり、血中の女性ホルモンの濃度は低く抑えられた状態に。ホルモンの波がおだやかになることで、心身のゆらぎも抑えられる。
ピルって避妊以外にも役に立つの?
「ピルの避妊薬として以外の主な使われ方は、生理のコントロールです。ピルを飲みはじめるとまず、生理痛が軽くなり、出血量が減ります。3か月ほど続けて服用すれば、生理がとても楽になるのを実感できるでしょう。そして服用のタイミングをコントロールすることで、生理を遅らせたり、早めたりすることも可能になります」
普段から出血量が多い人や、PMSに悩まされている人にとってこれは朗報。さらに、ピルがあれば旅行や重要な試験などに生理が重なって憂鬱な思いをしなくても済む。
「生理をずらしたからといって、体に悪い影響はまったくありません。人生の大事なイベントを生理に振り回されないためにも、上手に活用することをおすすめします」
毎月出血させることがない連続服用タイプも登場。
ホルモン剤の一種であるピルは、含まれる卵胞ホルモンの量によって、高用量、中用量、低用量、超低用量の4種類に分けられる。
「現在主に使用されているのは、低用量~超低用量のもの。従来の低用量ピルには休薬期間を設けますが、最近では休薬期間をとらずに連続服用をすることも医師に相談することができます。休薬期間がないということは、その間に出血がまったくないということ。たとえば気温が高くて肌が不快な夏場や、留学中だけ出血を起こさないということも十分可能です」
ピルは使われている黄体ホルモンの種類によって、若干個性に違いが出てくるそう。服用する際は婦人科医に相談して、自分に合ったものを選ぶようにしよう。
黄体ホルモンと卵胞ホルモンの割合が常に一定な“1相性”のピル。21日間服用後、7日間の休薬期間を設けるタイプ。
黄体ホルモン量が段階的に増えていく“3相性”のピル。全28錠のうち、飲み忘れを防ぐための偽薬が7錠入っているタイプ。
[gunosy]
→コンドームはTake Free! 世界のセクシュアル・リテラシー事情もチェック!![/gunosy]
1錠目を日曜日から内服開始することで、生理が週末にかからないように調節できるサンデースタートピル。
※写真は一例です。
吉野一枝先生 産婦人科医、臨床心理士。高校卒業後、フリーターやCM制作会社を経て、32歳で帝京大学医学部入学。2003年によしの女性診療所を開院。『母と娘のホルモンLesson』(メディカルトリビューン)など著書多数。
※『anan』2020年3月25日号より。写真・中島慶子 イラスト・山中玲奈 取材、文・瀬尾麻美
(by anan編集部)