日本はおじいちゃん的役割? アジアでの日本の立ち位置は…

2019.1.3
2019年、日本はどうなるの? 政治や経済、時事問題についてわかりやすく解説してくれる、ジャーナリスト・堀潤さん&イラストレーター・五月女ケイ子さんの連載「社会のじかん」のスペシャル版をお届けします!

アジアがひとつになる。

→堀さんの分析:日本には、中国とアジア各国の間で、調和を図る役割が期待されています。

社会のじかん

五月女:夏に展覧会を開いたので、台湾に行ってきたのですが、日本文化が浸透していて、受け止められ方も東京とほとんど差がない感じでした。

堀:僕もこの間、韓国に行きましたが、韓国と日本双方の文化が融合している印象でした。政治はこれまで対立が目立ちましたが、10月には日中首脳会談があり、日本と中国は共に歩む姿勢が明確になりました。韓国や北朝鮮も2019年は友和ムードを具体化する調整期に入ると思います。

五月女:ご近所同士、みんなで仲良くできるのはいいですね!

堀:いま、RCEP(アールセップ)(東アジア地域包括的経済連携)という大きな貿易圏を作ろうとしていて、それは、日本や東南アジアだけでなく、中国、インド、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを含めて、関税を取っ払い、人やモノやサービスを行き来しやすくしようとしているんです。

五月女:EUのような形を目指しているのですか?

堀:そうですね。これまで日本はアメリカを最大の同盟相手国にしていましたが、2019年以降はご近所の国々ともっと仲良くしていくことになるでしょう。距離的にも行き来しやすいですし、アジアには山も海も畑もありますから、連携すれば食料を融通しやすくなります。RCEPでは夏冬両方の季節のモノを同時に手に入れられる利点もある。

五月女:南半球のオーストラリアも入っていますもんね。

堀:日本は少子高齢化が進んで平均年齢は50歳近いですが、東南アジアには平均年齢が30歳くらいの若い国がたくさん。若くて元気でガンガン稼ぐ国々に、おじいちゃんになる日本が支えられながら、先輩として、民主主義のジレンマや法律問題など、経験や知恵を伝えていくという良好な関係は築けるんじゃないかと。

五月女:おじいちゃんですか!

堀:アジアのなかでは、一帯一路構想を持った中国が覇権を広げています。カンボジアは中国の影響を強く受けて、経済的支援を受ける代わりに反政府的な勢力を抑えつけるなど、民主化が揺らいでいるんです。そんなカンボジアと中国の間に日本が入り、調整役をすることも世界的には期待されています。現場を見守る顧問のような存在として。

五月女:現役選手ではないんですね。

堀:素晴らしい立ち位置だと思いますよ。ただ中立的な立場で調整役に立つには、日本国内が安定していることが必須。残念ながら日本は格差が広がり、経済成長も横ばい。足りない労働力を海外からただ安く入れようとしたらいずれ分断を生み、社会は荒れてしまいます。外国人と共存できる環境を整えることが先決でしょうね。2019年の日本は踏ん張りどきだと思います。

五月女:外国人労働者は、おもてなしの気持ちで迎えるべき?

堀:いえ、そういうお客さん扱いではなくて、「一緒に働く仲間」として対等に支え合う関係を築けるのが理想ですね。

日中首脳会談

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日本と中国は、競争から協調へ。
’18年後半、首脳会談を3度も行った安倍首相と習近平国家主席。9月に、ロシアで開かれた東方経済フォーラムの場で。10月には総理大臣として約7年ぶりに訪中。11月末にもG20サミットが行われたアルゼンチンで。日中の関係改善に向けて一気に加速! ©新華社/アフロ

RCEPとTPP11

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アジアに巨大な貿易圏が生まれる。
RCEPは、’11年にASEANが提唱。日中韓印豪NZの6か国がASEANと結んでいる5つの自由貿易協定を統合し、東アジアでの共同体作りを目指す。TPP11は環太平洋地域の国々の経済の自由化を目的とする協定。アメリカが離脱し11か国で12月30日に発効する。

一帯一路構想

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中国は西へ! 現代版シルクロード。
一帯とは、中国西部から中央アジアを経由し、欧州へと続く「シルクロード経済ベルト」を指す。一路は、中国沿岸部から東南アジア、アラビア半島沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」のこと。中国主導を警戒していた日本も、現在は協力を表明。

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堀 潤さん(写真左) ジャーナリスト。「8bitNews」代表。「GARDEN Journalism」主宰。『モーニングCROSS』(TOKYO MX)ほか、レギュラー多数。

五月女ケイ子さん(写真右) イラストレーター。ツイッターは@keikosootome。楽しいグッズ満載のオンラインストア「五月女百貨店」は@sootomehyakka。

※『anan』2019年1月2・9日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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