意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤 の社会のじかん」。今回のテーマは「受動喫煙」です。
堀潤

5月31日は世界禁煙デー。WHO(世界保健機関)が、健康のために禁煙を推進する目的で1988年に定めました。若者の喫煙者こそ減っていますが、日本はまだまだ喫煙大国。2016年の統計では、成人男性の平均喫煙率は29.7%。女性は9.7%。約2027万人の人がたばこを吸っており、いちばん喫煙率の高い年代は40代です。日本人男性の平均喫煙率は諸外国に比べても高く、WHOの2015年の調査では、194か国中日本は60位。フランス73位、イギリス108位、アメリカ109位。これらの国は日本よりもたばこの価格が高く、また、たばこのパッケージには、吸う気が萎えるような衝撃的な健康被害の写真が大きく載っています。そんなことも喫煙者を抑える作用をしているのでしょう。

近年、問題になっているのは、日本の受動喫煙対策が遅れていることです。パブ文化のイギリスでさえ、屋内全面禁煙になりました。ところが日本では、対策強化を進めたい厚生労働省が、一部の例外を除き、職場や飲食店を罰則付きで屋内禁煙とする健康増進法の改正を目指していますが、自民党の反対にあい議論が進んでいません(※ 5月18日現在)。

自分は吸わないのに副流煙を吸い込むことで、肺ガンや心筋梗塞などの健康被害を被るのはアンフェアだと、喫煙者の僕でも思います。受動喫煙により、乳幼児突然死症候群なども起こり得ます。国立がん研究センターの報告によると、夫婦のどちらかが喫煙する場合、両者が吸わない場合よりも肺ガンになるリスクが28%アップ。脳卒中は29%、心疾患は23%も上がってしまうのだそうです。受動喫煙により死亡する人は年間約1万5000人。受動喫煙により肺ガンや脳卒中になり、余計にかかる医療費は、2014年では1年間で3233億円になったと、厚生労働省の発表が先日ありました。

IOCとWHOは2010年以降、「たばこのないオリンピック」を推進しており、バンクーバー・オリンピック以降は、飲食店は罰則付きで建物内完全禁煙を徹底していました。日本の受動喫煙対策も、2019年のラグビーワールドカップ、翌年の東京オリンピックが契機になりそうです。

堀潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年6月7日号より。写真・中島慶子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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