
ドラマ『おいしい給食 season4』 で主役の甘利田幸男(あまりだ・ゆきお)を演じている市原隼人さんが、役衣装で登場! 本作が人気シリーズとなった背景から、自身の役者としてのあるべき姿が見えてきました。
映画初主演作は『リリイ・シュシュのすべて』で当時13歳。その後、ドラマ『WATER BOYS2』や『ROOKIES』など、ドラマ全盛期の時代の話題作に次々と出演し、人気を確実なものとした市原隼人さん。数ある代表作の中の一つである主演ドラマ『おいしい給食』は、2019年からドラマや映画でシリーズ化されている人気作だ。
── 『おいしい給食』のシーズン4、楽しく拝見しています!
ありがとうございます。ドラマは4本、劇場版は2027年公開予定のものを含めると5本になりますが、原作のない作品でこれだけ長くシリーズ化されたものは、なかなかないと思います。
── 市原さんが演じる中学校教師の甘利田は、大の給食マニア。普段は厳格でありつつも、給食の時間になると校歌に合わせておもわず踊り出したり、生徒とどちらがおいしく食べられるかと給食バトルを繰り広げるなどのギャップを持つ、愛されキャラです。シリーズごとにその地域の食材を生かした給食が登場しますが、今回の舞台は沖縄ですね。なにか特別な想いはありましたか?
シリーズを重ねるにあたり、毎回より良いものをと思い、向き合ってきました。シーズン4の舞台である沖縄ならではの開放的な空気感と独特の食文化や歴史、その素晴らしい土地のお力をお借りして、これまで以上の作品をつくらなければならないと責任を強く感じていました。
── 長く携わっていても、毎回緊張感を持って臨んでいるんですね。改めて、今作の魅力はどのようなところに感じていますか?
今の時代はどこにいてもSNSなどで繋がることができ、相手と直接会うコミュニケーションがどんどん減っていますが、『おいしい給食』の時代設定は1984年の昭和から始まり、シーズン4では平成に入り1992年。現代の日本人が忘れかけているような古き良き心、侘び寂び、人と人との繋がりを感じていただける作品となっています。表面的にはコメディですが、ポップな中に社会派としてのメッセージが込められています。甘利田がたまにポロッと吐くセリフは、人生の糧となるような言葉だったり、忘れかけているようなことを思い出させてくれる。どんなに笑われても、好きなものを好きと、日々を謳歌する甘利田の姿を楽しんでいただき、見てくださる皆様の日々の活力にしていただきたいです。
── 素敵なメッセージです。
そして、本来は子供のためにあるべき社会がいつのまにか大人の都合のための社会になってしまっていると思うことがあります。私はこの作品はある意味、子供たちが主役だと思っていて、甘利田は、子供に対して「負けた」と素直に負けを認める勇気や潔さを持っているんです。大人になると器用になり、知識をつけて逃げ道を作ることで、自分が生きやすいように生きてしまいがちですが、誰に対しても中立でいられるのが甘利田。私自身も彼に励まされています。
── 市原さんが演じてこそ魅力はさらに際立つのでしょうね。今回も給食シーンは爆笑してしまいました!(笑)
コメディは本当に難しいです。(チャールズ・)チャップリンの“人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である”じゃないですが、役者は笑わせるのではなく、笑われなければならない。甘利田が真剣に振り回されれば振り回されるほど、嘆けば嘆くほど、面白い。常に緊張感を持ち続けて演じなければ、楽しんでいただけないと思っています。給食シーンでは勢いも必要です。給食を食べるシーンの動きは台本に何も書かれていないので、撮影の前日は寝られないんです。動きを考えて自分で構築しなければならないので。
── あのキレキレの動きは、毎回アドリブだったんですね!
そうなんです。よく見ていただくと、その回に登場する献立や食材の動きを取り入れているんです。毎回のお約束みたいなものを作りたかったので、校歌の最後は机に手をぶつける動きをつくりました。
── 鉄板ですよね(笑)。
監督から「もう少し動いてみては」なんて言われると、100倍で返したくなる人間ですので、どんどん動きも大きくなっています(笑)。ものづくりをするうえで、生々しさを大切にしたいと思っていまして、直感と直結して動くお芝居はやっていて楽しいです。
結局、芝居の神髄とは自分探しなんだろうと思う

── 10歳の時にスカウトされてこの業界に入り、『リリイ・シュシュのすべて』で映画初主演をしたのは13歳の時でしたね。
もともと人前に出るのは苦手なんです。自分なんかが表に立つなんておこがましくて。今でもテレビやスクリーンで自分を見るのも恥ずかしいのですが、「人が寝ている間に10倍努力しろ」という昔からの父の教えがあり、自信がないからこそできる限りの準備をして、毎回臨んでいます。
── 長年、芸能界で活躍されていても、それでも自信がないなんて、少し意外です。
自信がつきそうになると怖くなるんです。芝居や表現には正解もゴールもないので。日々いろいろなものに触れ、吸収し影響されていたいですし、昨日と今日と明日で答えが違ってもいいと思うんです。ただ、ブレない軸は持っていなければいけない。結局、芝居の神髄とは自分探しなんだろうと思っています。
── いつになったら納得できるのでしょうか。
日々、通過点だと思っています。墓に入ってから「市原隼人ってこういう人間だよね」って言われたら納得できるのかもしれません。10代、20代、30代で世の中の見方や仕事への向き合い方も全く違うので、この先どうなっていくのかわかりませんが、自分を楽しんでいきたい、というのが本音です。そして思い通りにいかないのがこの仕事の面白いところ。現場によってルールややり方が違う中で、学ばせていただくという気持ちで入ると、こんなに面白い総合芸術の世界は他にはないと、常に思うんです。
── だから今日まで続けてこられたのでしょうか。
若い頃から「代わりがいるならあなたは必要ない。代わりがいない役者にならなければいけない」と言われてやってきました。何度も芝居を嫌いになって、役者という仕事も嫌になって、でも何度もまた好きになって。泣きたい時にも笑わなければいけないし、笑いたい時にも泣かなければいけない。それを繰り返して、役者業とは腐れ縁のような感じです。不思議な職業ですよね。いまだに、なぜ自分が役者なのかもわからないです。ただある時、作品をご覧いただいた方から「余命3か月ですが、病室で初めて笑顔になれました」とか「市原さんの作品を見て、子供が学校に行けるようになりました」というお言葉をいただき、涙が止まらなくなったことがあったんです。その時に、もっと自分のやることに真剣に向き合いたい。それもビジネスではなく夢を持って、と改めて思い直しました。それからは役者への向き合い方が大きく変わりました。
── その夢というのはどのようなものでしょうか。
ビジネスが先行して抑えつけられた作品ではなく、みんなで意見を出し合って試行錯誤してみようとすることだと。私がデビューした時の現場はまさにそうでした。例えば、『リリイ・シュシュのすべて』では、プロデューサーの家に泊まりに行ったり、スタッフ全員でしょっちゅう健康ランドに行って風呂に入りながら、作品のことを話したり。家族のような関係で、全員野球で、つくっていく。そういうものづくりのやり方が自分の夢でもあります。ただ無機質に出演して帰るのではなく、作品に参加させていただく身として、そこにいる全員が意見を言いやすい現場であることが理想です。
── その原動力や軸となるものはなんでしょうか。
自分の見せ方よりも、自分の在り方を大事にすること。純粋にお客様のために何ができるのかを常に考え、そのために役者が存在しているということが一番の根源です。そして気持ちはいつも、片道燃料。現場に行って帰ってくるつもりはないという覚悟で、出し惜しみせず全てを出し切り、生々しく作品をつくっていきたいです。
── お忙しいとは思いますが、息抜きの時間はありますか。
何もしない日が欲しいと思ってはいますが…。休みがあっても結局は次の現場のことを考えたり、調べ物をしたくなったり。つくづく自分はめんどうな人間だと思ってしまいます(笑)
Profile
市原隼人
いちはら・はやと 1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。2001年公開の『リリイ・シュシュのすべて』で映画初主演を果たす。代表作はドラマ『WATER BOYS2』『ROOKIES』、『おいしい給食』シリーズほか多数。劇場版『おいしい給食』第5弾は2027年公開予定。
information
中学教師の甘利田幸男(市原隼人)が沖縄に転勤して1年。ある日、転校生の當間レン(橋本偉成)がやってきたことで、新たな給食バトルが幕を開ける…。出演・市原隼人、山本千尋、橋本偉成、川田広樹(ガレッジセール)、尚玄、いとうまい子、八嶋智人、田山涼成ほか。『おいしい給食 season4』はテレビ神奈川(毎週土曜日21:30~)ほか、TOKYO MXやメ~テレ、BS12トゥエルビなどで放送中。2027年に劇場版第5弾が公開予定。
anan 2518号(2026年11月4日発売)より
































