意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アルテミス2」です。
米中の宇宙開発のせめぎ合い。平和利用を望む
米航空宇宙局が主導する有人での月周回ミッション「アルテミス2」が4月に成功し、月の裏側から見た美しい地球を撮影し世界を賑わせました。人類が月に到達したのは1972年のアポロ17号以来、約半世紀ぶりです。
この背景には中国の台頭があります。現在、宇宙開発は中国がかなり進んでおり、2030年までに有人月探査を、最終的には月の南極に基地を建てることを計画しているんですね。
アポロ17号の打ち上げ以降、アメリカの有人での宇宙探査は後退していて、月ほど遠い距離ではなく、地上から2000㎞以下の低軌道に衛星を打ち上げるなど、商業利用の短期的な目線のものが多くありました。今回は、人が月で継続的に活動することを将来的に見据えているというメッセージを込めたミッションだったと思います。
月にはレアアース、チタン、鉄、ヘリウム3など、資源がたくさん眠っており、米中の綱引きが始まっています。
2022年時点で世界の宇宙産業規模は約54兆円。そのうちの4分の1は政府、4分の3は民間事業者が担っています。モルガン・スタンレーの試算では、2040年までに140兆円規模になると予想され、日本は現在4兆円程度ですが、2030年代の初めには8兆円規模にしたいと考えています。日本が得意にしているのは、災害、減災分野の低宇宙軌道の開発です。衛星を飛ばして、大規模災害の被災状況を把握したり、災害時の通信手段を確保、また CO2排出、吸収状況を観測し、気候変動対策に貢献しています。
地球観測衛星は、防災や国土強靭化、気候危機の他にも経済、食糧を含む安全保障の面からも世界的に重要性が増しているんですね。例えば、アメリカとチェコは地球観測衛星データを使って、中国の工場地帯の画像をAI解析し、中国の正確な経済指標を作り、金融機関や投資家に販売するということを行っています。
1967年に定めた宇宙条約により、宇宙空間は領有の禁止、平和利用、国家による活動監督責任が基本原則です。地球の分断がそのまま宇宙に持ち込まれることのないよう、人類の分かち合いのために開発してほしいですね。
五月女ケイ子解読員から一言

乗り物酔いのひどい私には宇宙旅行なんて無理。スター・ツアーズで味わえれば充分だわなんて言って、ぐうたら生きていた合間にも、ものすごい進化を遂げた宇宙旅行界隈に、恐れおののいています。それにしても人類の夢の実現力は半端じゃないですね。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2496号(2026年5月20日発売)より


























