意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米イラン停戦覚書」です。
合意したものの、現実的な停戦は難しそう
6月17日にアメリカとイランは停戦延長に合意する覚書を交わしました。覚書にはイランへの経済制裁を解除し、復興、経済開発のために3000億ドル規模の支援を策定すること、イランはホルムズ海峡の開放や、核兵器を調達・開発しないことなどが盛り込まれています。特筆すべきは「レバノンを含むすべての戦線における軍事行動の即時かつ恒久的な終結」と、レバノンの主権を認めると宣言したことです。
イラン戦争によって石油は高騰し、アメリカ国内も物価高と生活困窮が深刻化しており、中間選挙を控えるトランプ政権には、早く妥結させたいという思いがありました。ところが合意後もイスラエルは攻撃の手を緩めません。
それだけでなく、ネタニヤフ政権を支える2人の閣僚が、SNSにアメリカに対して抗議の声を上げたんですね。一人はイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障大臣。極右政党「ユダヤの力」の党首で、ヘイトクライム、過激思想が過ぎて、軍に不適格と兵役を免除されたほどの人です。もう一人は、「宗教シオニスト党」の党首のベザレル・スモトリッチ財務大臣。破壊行為や殺害など、強制的な方法でパレスチナに入植を進める急先鋒で、世界中から批判されています。
停戦合意の発表後、ベン=グヴィル氏はXに、「トランプの合意は我々を拘束しない」や「レバノン全土は燃え上がらなければいけない」などの過激な発言を投稿しました。
18日の会見でヴァンス米副大統領はこの二人を名指しで非難。アメリカはイスラエルにとって唯一の理解国であり、イスラエルの安全保障はアメリカの支援がなければ成立しないと強調しました。過激派思想の閣僚を抑えられないネタニヤフ政権に対する、トランプ政権の苛立ちが透けて見えます。
イスラエルの過激派の最終目標は、レバノン内のヒズボラの完全消滅、イランの体制転換なので、いくらアメリカとイランが覚書を交わしても、実際に戦争を止めることは難しいのではないかと思います。この後は、イスラエル市民の方々に、選挙で過激な政権を交代させることを望みたいですが、単純な問題ではなく、出口が見えません。
五月女ケイ子解読員から一言

さすがのアメリカも現実的な落としどころを探し始めたようですが、思惑が複雑に絡み合う相関図はもはや泥沼化で、一件落着どころか、新しい火種が次々に…。「戦争は始めるより終わらせるほうが難しい」という言葉の重さを感じてしまいます。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
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五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2505号(2026年7月22日発売)より





























