文・小林麻利子
子どもも親も朝までグッスリ眠りたい
我が家の4歳になる子どもは、生後6か月の時から、寝かしつけをしなくても一人で朝までずっと眠れていました。しかし、4歳になってから、急に深夜に3回覚醒し、親の寝室へ来て叩き起こすように。環境の変化など、子どもが大きなストレスを抱く直接的な原因は追究できなかったのですが、とにかく、睡眠を遮断されると、とにかく親はしんどいもの...。子どもも「僕、睡眠が不得意なの」と発言するようになってしまいました。睡眠の専門家として、これはいかん! と素早く対策を実施。そして、なんとたった2日間の対策で解消したのです! お子さんによってもやりかたはさまざまありますが、今回は我が家が行った対策をご紹介します。
お風呂上がりの絵本をお風呂前へ
お風呂と睡眠は1セット! 睡眠の質をアップさせるには、お風呂で体表面の血流がよくなり、深部体温が急降下するタイミングで眠りにつくことが大切です。ですので、お風呂のあとは、遊んだり、ダラダラせずに、手短に寝る支度をして寝かせるほうが良いのです。
筆者は、お風呂の後に絵本を何冊も読んだり、ダラダラと過ごしていたので、思い切って絵本の時間をお風呂前へ変更しました。すると、入浴後は素早く就寝させることができ、寝つきがよくなりました。睡眠持続時間を長くさせるには、まずは寝付きをよくする工夫が大切です。
ただ、寝室の温度が27℃以上だったり、湿度が60%以上であれば、なかなか眠りにつけず、途中で起きやすくなります。お風呂に入る前には、寝室や脱衣所が快適な温湿度になるように予め準備をしておきましょう。また、ドライヤーの際に熱くて鼻の頭に汗をかいている場合は、熱がこもっている状態なので、体が冷えすぎない程度に扇風機などで風を送りながらドライヤーをしてあげてください。
音に注目させる
基本的に、寝る際のホワイトノイズ類は雑音で、不要だと考えています。胎動の音とも言われますが、40db以上の音は睡眠にとって悪影響を及ぼしますので、聞かずに眠れるならば何もつけないのがベスト。しかし、今回は敢えて扇風機の音を静音の1ではなくて、2に繰り上げして少し雑音を大きくさせました。
そして、寝つく際に「この扇風機の音を聞いたらまた気持ち良く眠れるんだよ」ということを認識させ、夜中に覚醒したとしても、扇風機の音に集中させて眠れるようにしました。
この時に、扇風機の風が体に一切当たらないように設置しましょう。冷風である限り、体に当たれば眠りの質が低下することがわかっています。もし、暑くて寝始めだけ体に風を送りたい、という場合は、頭を中心に風を送り、体は夏布団をかけて冷えすぎないようにしましょう。眠りについたら扇風機の頭の位置をずらして、体や頭に一切風が当たらないようにすることを忘れないようにすることも大切です。
一人で眠るんだ、ということを認識
一人で子ども部屋で寝かせても、しばらく経つと「暑い」「窓の外が怖い」等と、何度も親の元に来るようになっていました。これを習慣化させると中途覚醒が高頻度になるので注意が必要です。
日中の愛情たっぷりのハグと、寝付く前のルーティン強化で安心させた後は、オペラント条件付けの「正の強化」を実施。簡単に説明すると、何かができたらご褒美にその子にとってうれしい何か(強化子)を与える、というものです。きっかけはそうであったとしても、結果的に一人で眠ったほうが朝までぐっすり眠れるし、本人も気持ちよくなれば、進んでその行動をできるようになります。
息子は最近ミニオンズにはまっているのですが、一人ですんなり眠れて、途中で起きても親を起こさず、また朝に早く起きても親を起こさなかったら、録画していたミニオンズが観られる、という強化子を与えることで、本人も努力して行動を統制できたようです。
気温・室温の再確認
先ほど扇風機の風を体に送るなら頭のほうへとお伝えしましたが、実は、脳と体の最適気温は違い、脳のほうが低めです。また大人と子どもの快適温度は違います。とはいえ、頭部分と体部分の温度を変えることはできません。また、子どもは寝相の悪いことが多く、ずっと布団の中にいられるわけではありません。まずは睡眠に良いとわかっている、温度26℃台、湿度50%台をキープできるよう寝室環境を整えていきましょう。大切なことは、感覚で環境管理をするのではなく温湿度計を用意してチェックしましょう。
我が家は、1歳、4歳、夫婦、それぞれの寝室はバラバラですが、それぞれの枕元に温湿度計を用意して、快適になるよう工夫しています。
その日のできごとを親と共有して、全て受け止める
子どもに話を聞くと、保育園での人間関係で悩みがある様子でした。もともと、我が家では気持ちがプラスに働く考えに行き着くために、『よかったこと』を聞く習慣がありましたが、この期間は『悲しかったこと』を受け止めることを強化。そして、聞いた後の親の声掛けが大変重要です。悲しかったことは何かある? と聞いて話してもらうと、親はすぐに応援したり、そんなことないよ、大丈夫だよ、などと励ます方向にいきやすいのですが、子どもの自己肯定感を高めるためには、よかったこともよくなかったこともすべてひっくるめて受容してあげることです。どんな自分だって、ママは全部受け止めてくれるんだ、ということが安心感につながるのです。
いかがでしたでしょうか? もちろん子どもや家庭環境によって対策は多少変わりますが、もし何かぴんと来たことがあった場合はぜひ試していただけたらと思います。
眠りとお風呂の専門家
小林麻利子さん
同志社大学卒業、京都市出身。SleepLIVE株式会社代表取締役社長。生活習慣改善サロンFlura主催。公認心理師。科学的根拠のあるデータや研究を元に、睡眠と入浴を中心とした生活習慣を見直すことで、自律神経を改善していく指導が人気。約3,000名以上もの悩みを解決し、テレビや雑誌など、多くのメディアで活躍中。不規則な生活になりがちな、芸能人やモデル、アナウンサーへも指導。
企業向けには、健康経営や睡眠関連事業支援などを行う。著書に『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)『不美人習慣を3日で整える熟睡の練習帳』(G.B.)など多数。プライベートは、3歳児と0歳児の母。
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