社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第471回:政治不信

ライフスタイル
2024.12.06

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「政治不信」です。

不信が進む先には民主主義の崩壊や国家の危機も。

自民党の政治と金の問題が持ち上がり、政治不信を払拭しようと石破政権がスタートしました。ところがその問題に切り込むことなく10月末に衆議院選挙に突入、結果は自民・公明の与党が64議席減らし過半数を割りました。

政治不信に拍車がかかると、有権者の政治参加の意欲は低下し、民主主義の危機に直結してしまいます。顕著な例が1988年のリクルート事件です。政治汚職問題が広がり、20~30代の投票率が一気に下がりました。今回の衆院選の投票率は53.85%、3年前の衆院選よりも下がり、戦後3番目に低い数字になりました。

投票率が下がれば、議論に参加する人が減り、一部の人たちで物事が決められることになり、独裁政治に繋がりやすくなってしまいます。ロシアは民主主義国ですが、実質はプーチン大統領による独裁国家。アジアやアフリカ諸国でも権威主義の独裁国家は増えています。政治離れの現状を改善しないと、国民の人気取りに走る、ポピュリズムが発生しやすくなります。 今年5月、経済同友会は「政治不信の解消に向けた政治改革~改革のモメンタムを高めるための5つの提言~」を政府に提出しました。その資料によると、日本の政治信頼は、OECD諸国の平均を下回っていて、30~39歳の7割強の人が国会や政党に不信感を抱いています。日本財団の2023年の「18歳意識調査」によれば、「国会議員は特権や優遇を多く受けていると思う」と答えた人が63.2%いました。衆議院選挙では多くの政党が「国民を守る」「国を守る」というスローガンを掲げましたが、突き詰めると「私の政党を守る」「私の政治家生命を守る」ための働きになっていないでしょうか。

経済同友会は、政治資金の支出の可視化や実効性のある政党ガバナンス・コード(組織を統治するルール)の制定、官僚の働き方改革、国会審議の充実化と可視化、政党法の制定を提言しました。経済界の打ち出しに政治家がどう答えるか注目です。政治不信が蔓延すると、その国を乗っ取ろうとする人たちの標的になり、情報戦が仕掛けられ分断が加速します。国を守るために政治の信頼回復は急務です。

PROFILE プロフィール

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2424号(2024年11月27日発売)より

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