意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「性同一性障害特例法」です。

まだ小さな一歩。あらゆる人の人権を守る法律を。

society

昨年10月、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するために、生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律は、人権侵害にあたり憲法に違反すると最高裁判所が判断しました。

現在「性同一性障害特例法」では、戸籍上の性別変更を認める要件として、【1】18歳以上。【2】現在結婚していない。【3】未成年の子供がいない。【4】生殖腺や生殖機能がない。【5】変更後の性別に似た性器の外観を備えている。加えて、2人以上の医師から性同一性障害の診断を受ける必要があると定めています。【4】と【5】を満たすためには、事実上、手術を受けなければいけません。しかし、体に傷をつけないと、自分の性別が認められないと法律で定めているというのはとても理不尽な話です。

ちなみに、最高裁が法律の規定を憲法違反と判断したのは、戦後12例目。違憲判決を勝ち取るのはとてもハードルの高いことなんですね。この判決が下った背景には、セクシュアリティの問題に対して、保守的だったカトリック教国が理解を示しはじめたという世界的な潮流があります。ローマ教皇庁が同性カップルへの祝福やトランスジェンダーの洗礼を容認したことも大きく影響しているでしょう。

2012年、アルゼンチンで初めて精神科医の診断なしに性別変更を可能とする法律が制定され、続いてデンマークやマルタなども同様の法律を施行しました。’13年にはアメリカ精神医学会で「障害」という言葉を使わず、「性別違和」と呼ぶことに。’17年、欧州人権裁判所が性別変更のために生殖能力をなくす手術を課すことは人権侵害という判断を下し、’18年にWHOは国際疾病分類の改定で、生まれた時に割り当てられた性別と、自認する性別が異なる状態を「ジェンダー・インコングルエンス」として精神や行動などの障害から外し、「性の健康に関する状態」に分類しました。現在、医師の診断書なしに性別変更が認められる国は欧州を中心に11か国にのぼります。

日本では’22年までに全国の家庭裁判所で1万1919人の性別変更が認められました。性同一性障害特例法の要件は本当に必要なものなのか、議論を求める声が上がっています。

hori

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年4月3日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line
ライフスタイル

Recommend

こちらの記事もおすすめ

Today's Update
毎日の生活に彩りをくれる、シェアアイテムウィッシュリスト
毎日の生活に彩りをくれる、シェアアイテムウィッシュリスト
Lifestyle
お手本いっぱい猫本の世界! 専門書店『キャッツ ミャウ ブックス』店主が選ぶ猫写真集6冊
お手本いっぱい猫本の世界! 専門書店『キャッツ ミャウ ブックス』店主が選ぶ猫写真集6冊
Lifestyle
【anan総研】誰もが抱えるコンプレックス。 どう付き合い、どう克服する?
【anan総研】誰もが抱えるコンプレックス。 どう付き合い、どう克服する?
Lifestyle
俳優、モデル・中島侑香さんとめぐる! 楽しみ広がる、話題のシェアスペース
俳優、モデル・中島侑香さんとめぐる! 楽しみ広がる、話題のシェアスペース
Lifestyle

Movie

ムービー

Regulars

連載