社会のじかん

日本国の姿勢が根本から変わるような計画? 「安保3文書」の内容とは

ライフスタイル
2023.02.10
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「安保3文書」です。

全文からわかる日本の方向転換。しっかりと議論を。

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昨年12月、政府は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書を臨時閣議で決定しました。全文を読むと、日本国の姿勢が根本から変わるような計画が書かれていることがわかります。

日本は憲法9条で戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めており、武器の輸出はしない、軍隊は持たないと宣言してきました。しかし、安保3文書では反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記しており、これは自衛の範囲内であり、専守防衛の維持は変わらず合憲であると宣言しています。

文書によると、日本はこれから防衛産業を持つ国になります。有事に備え、レアアースや次世代半導体を自国で生産できる態勢を整備。また、米軍のために武器の部品を作ることも始めようとしています。今後は防衛産業を、皆が参入したくなるような、魅力的な分野にして、イノベーションを起こそうとしているのです。

3文書の中では中国、北朝鮮、ロシアを緊張相手国と名指しした上で、同盟国や同志国との関係強化を目指しています。ODA(政府開発援助)は安全保障戦略の一環と位置付け、たとえば、中国と対抗するためにカンボジアを、ロシアと対抗するために中央アジアの国々を支援するというようなことが始まりそうです。

これらの背景には、周辺の安全保障環境の変化がありました。北朝鮮は核を持ち、連続してミサイルを発射するなどの挑発行為がやまず、中国は国力を上げて軍事力を増し、海洋進出への意欲を高めており、ロシアは核兵器の使用さえ疑われるほど不安定な状態になってしまいました。喫緊の課題として、早急に安全保障を強化しないといけないというロジックなんですね。

敗戦後の日本は平和国家、人道支援国家を目指し、日米の強固な関係を持ちながらも周辺諸国とも渡り合ってきました。これからは調和ではなく分断が深まっていくでしょう。安保3文書の発表後、北朝鮮は早速、徹底的に対抗すると表明しました。

異例なほど早急に閣議決定したことにも驚きました。通常国会ではしっかりとした議論と説明を求めたいです。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。

※『anan』2023年2月15日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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