格差、SDGsの観点から、再注目されています。
3月1日は労働組合法施行記念日。1946年のこの日に施行し、労働者の団結権や団体交渉権、ストライキ権が保障されました。労働組合には企業別のものや産業別のものがあり、労働組合の全国中央組織は「ナショナル・センター」と呼ばれ、日本では「日本労働組合総連合会(連合)」がそれにあたります。
不当な解雇やリストラに異を唱えたり、人事評価の公正性や経営の透明性を求めたり、パワハラやセクハラなど組合員同士の悩みを解決するなど、組合には相談機能、互助機能、交渉機能が備わっています。しかし最近、組合への加入率は下がっています。厚生労働省によると、組織率は2021年6月末で推定16.9%。前年から0.2ポイント減に。従来のような終身雇用型ではなく、転職する働き方が増えたことや、中小企業やベンチャーなど、労働組合を持つ会社自体が減ってきたことなどが主な理由に考えられます。
加入率の低下はアメリカやドイツでも起きています。労働組合のように強い交渉力のある組織があると、企業活動のスピードはどうしても落ちてしまいます。成長を重視する新自由主義的な考えが広がり、会社側も労働組合離れが始まっていたんですね。
そんななか、昨年1月、グーグルと親会社のアルファベットでは初めて労働組合が結成されました。また、アマゾンでも組合を作ろうと交渉が続けられています。格差の問題が深刻になり、先進的なIT業界でも、雇用主に対する交渉が求められるようになったのは大きな変化です。非正規社員の割合も増えて、正社員と非正規社員をまとめて交渉するのが難しかったので、労働者たちが連携して交渉する必要が出てきたんですね。
また企業側にも、SDGsの観点から、従業員を大切にする取り組みのひとつとして、労働組合を再評価する動きが出てきました。
かつての労働組合は、政治的なメッセージの色合いも濃く、敬遠されたところがありました。しかし、いまはイデオロギーではなく、働き方改革や人権保障という側面から、純粋に交渉力を持つ組織が求められています。
堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。
※『anan』2022年3月9日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)