意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。そのスペシャル版として今回は、堀潤さんが“多様化する社会”について解説! イラストレーター・五月女ケイ子さんの疑問に答えます!

「みんな仲良く一緒に」というのは夢物語。違いを尊重し、分断しないあり方を。

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堀:多様性やダイバーシティという言葉が浸透して、いまは次の段階にきている気がします。当初は「国籍やジェンダーなど違う者同士、手を取り合おう」という、キラキラした共存体制を思い描いていたと思うんです。しかし、お互いの違いが明確になるにつれ、摩擦が積み重なり、「よくわからないから距離を置こう」「私とは違うから関わるのはやめておこう」と、表面的には秩序を保っていても、内実は分断が起き始めているように思います。

五月女:え! そうなんですか。

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堀:SNSなどでも、「賛成」「反対」と二極化して、価値観の多様性は受け入れられにくいですよね。

五月女:出来事に対して、みんな感情的になりすぎなのでは? とちょっと思いますね。

堀:問題は、違う考えの人とどう付き合っていくか。

五月女:距離感なのかな。ママ友は距離感が大事です!(笑)

堀:そうなんですね(笑)。ただ、「理解できない人とは関わらない」というふうになってしまうと、多様性が進むにつれ無関心が増えてしまいます。

五月女:身近な人だったら、関心を持って考えられるんですけど。

堀:いいポイントです。大きな主語より、小さな主語を使うことが大事なんですよね。分断や排斥には必ず大きな主語がつきまとう。「日本人は~」「女性は~」と大きく括るから衝突します。実際にはいろんな人がいるので、一括りにはできません。

五月女:相手を知る、というのも大事ですよね? 先日近所で、パラリンピック関連のイベントがあって、スポーツ義足を装着する体験をさせてもらったんです。想像していたよりずっと重くて立ち上がれない。義足を操るのにすごい筋力が必要なのだとわかりました。パラアスリートの方ともお話ができて、娘にもいい体験でした。

マジョリティというだけで脅威になるという自覚を。

堀:一般に、新しいもの、知らないものに対しては恐怖が先立って、保守的な選択をしがちなのだそうです。違いを知るには勇気がいる。

五月女:私はお酒があんまり飲めないのですが、飲む人たちからの「飲まないの?」という声にいつも圧を感じています(笑)。みんながビールを頼むなか、勇気を出してノンアルコールを頼みます。

堀:マジョリティの意見は本人の気づかないところで脅威になりやすいんですよね。この数か月、僕は香港を取材していますが、これまでの香港区議会では民主派は2割と少数派でした。ところが11月の選挙で8割以上に。すると、それまでデモ隊を強く弾圧していた警官が、自分たちがマイノリティに変わったとわかった途端におびえ始めたんです。

五月女:立場が逆転したんですね。

堀:多様性といっても、何もせずに「対等」はありえない。そのことは自覚しておいたほうがいいでしょう。日本では、これまでは会社員がマジョリティでしたが、2020年以降、雇用の流動が進めば、フリーランスが多数派に変わるかもしれません。家族の形も変化して、いまは夫婦別姓に反対する保守派がマジョリティですが、選択的夫婦別姓の議案が再び持ち上がるかもしれません。

五月女:フリーランスの私は、常にマイノリティの意識でいました。でも、マジョリティに変わったら威張ってしまうんでしょうか?

堀:マジョリティがマイノリティにすり替わったとき、マジョリティだった人たちは防衛本能から「(立場を)奪われた」という意識になり、嫌悪や暴力につながることはよく起きます。欧米で移民政策に反対する人たちにもそういう意識があったと思いますね。

五月女:複雑なんですね…。

堀:だから、「みんな違うんだから仲良くしよう」という多様性の声かけは失敗します。そんな簡単じゃない。知らない者同士、恐る恐る近づいて、ストレスのかからない付き合い方を模索するしかない。いつも一緒でなくていいと思います。多様性のある社会とは、全員が手をにぎり合う状態ではなく、普段はそれぞれの世界があり、何かのときに協力し合うというのが理想じゃないでしょうか。

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堀 潤さん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」主宰。シリア、朝鮮半島、香港、沖縄などを取材した映画『わたしは分断を許さない』が3月7日に全国公開。

五月女ケイ子さん イラストレーター。オンラインストア「五月女百貨店」では、新年にふさわしいおめでたいアイテムを多数とりそろえ。作品集『五月女ケイ子 ランド』が好評発売中。

※『anan』2020年1月1日‐8日合併号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子

(by anan編集部)



池田エライザさんのヘルシービューティのヒミツ

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