意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「戦争遺跡」です。

戦争の恐ろしさを忘れず次世代に伝える努力を。

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8月15日に74回目の終戦記念日を迎えますが、戦争体験者が高齢となり年々減っていき、戦争を後世に伝えていくことが難しくなってきています。戦争遺跡をどうやって残していくかがいま、ひとつの焦点になっています。

広島県の原爆ドームは、核兵器の脅威を伝えるものとして、1996年に世界文化遺産に登録されました。また、同県の大久野島には旧陸軍の毒ガス製造所がありました。自治体はその歴史を残そうとしています。鹿児島県奄美諸島にはトーチカや高射砲台の跡が残り、地元の人々が戦争の記憶を残すための観光資源として守ろうと、掘り起こし作業を進めています。しかし、東京には、戦争の歴史に触れられる施設がけっして多くはありません。

ドイツのベルリンには、街の中心にナチスドイツの秘密警察「ゲシュタポ」の本部だった建物が残され、写真資料館になっています。また、ブランデンブルク門の隣には、ユダヤ人を虐殺した証に石棺をイメージしたモニュメントが建てられ、過去の過ちを忘れぬようにしています。それでも、ドイツ人の知人は「私たち30~40代は、まだ祖父母や両親から直接戦争の体験談を聞けたから伝えられます。でも、次の若い世代は聞く機会もないため実感が持てず、戦争はひとつの物語にすぎなくなるでしょう」と話していました。

2012年にドイツで『帰ってきたヒトラー』という小説がベストセラーとなりました。’15年には映画化され大ヒット。ヒトラーが現代にタイムスリップするというコメディなのですが、街頭で民衆と接する場面は実はノンフィクション。まだドイツにシリア難民が流入する前ですが、そのときすでに移民に対する不満の声が上がっていました。この作品は、国民がまた英雄的な存在を望む状況に陥っていることに、警鐘を鳴らしたのです。イタリアでリメイクされ、日本では9月に『帰ってきたムッソリーニ』というタイトルで公開されます。生活に不満が募れば、排外主義やナショナリズムの台頭に火がつきかねません。戦争遺跡を残し、その惨禍を伝えない限り、あっという間に時代が後戻りしかねないことに、危機感を抱いたほうがよいと思います。

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堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2019年8月14日‐21日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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