瞑想は、船が沖に流されないようにおろす“イカリ”のように、さまよう意識を一つの物事につなぎとめておく行為。なかでも最もベーシックなのが、呼吸をする体の感覚に意識を集中する方法だ。
精神科・心療内科医で臨済宗建長寺派林香寺住職の川野泰周先生はこう言います。
「呼吸瞑想は、慣れてくれば自宅でも、オフィスでも、通勤電車の中でも、いつでも好きなタイミングでできるのが特徴です。感情が大きく揺れ動いたり、不調が現れたときにだけやる緊急処置ではないので、短い時間でも日常的に取り入れる習慣をつけましょう」
瞑想は科学に裏打ちされた「脳の休息法」です。
瞑想は日常的に取り入れることで不調を予防し、心の健康度を高めるメソッド。脳の疲れが取れるだけでなく、悩みが消える、リラックスできるといった効果もある。
「瞑想の基本的な仕組みは、さまよっている注意をある一つのこと“だけ”に向けることで“脳の待機機能”をオフにすることです。マルチタスクから意図的に一つのタスクに絞ることで、エネルギー消費を抑えて脳を休ませるのです」
またそれ以外にも、彼氏と喧嘩をして、悲しみや怒りがぐるぐると頭の中を巡り仕事が手につかない、なんて事態にも瞑想は有効。
「ネガティブな感情は打ち消そうとするほど強くなるもの。瞑想は、腹を立てている自分を客観的に認識して感情をコントロールするトレーニングにもなります。喧嘩という事実を頭から切り離すことができれば、マイナスの感情に悩まされ続けることもなくなります」
そこで、3ステップで覚える、基本の「呼吸瞑想」をご紹介します。教えてくれたのは川野先生です。
1.姿勢を整えて、深呼吸する。
椅子に座り、両手を太ももに置いて手のひらを上に向ける。天井から1本の糸で頭をつられているようなイメージで背すじを伸ばし、胸を開く。目を閉じるか、目線を数m先の下へ落とす。この状態でまずは1~2回、大きく深呼吸する。深呼吸をすることで呼吸筋がストレッチされ、自然な呼吸に入りやすくなる。
・背すじを伸ばし、胸を開く。
・目は開いても閉じてもO K 。
・一度深呼吸して呼吸を整える。
2.“呼吸している自分”を観察する。
次に行うのが呼吸の観察。ポイントは、呼吸のスピードを自分でコントロールしないこと。自然な呼吸を続けるなかで、いま鼻から空気が入った、今度は出ていった、暖かい空気か、冷たい空気か。と、鼻先で感じる空気の出入りに意識を向ける。やりにくい場合は、呼吸により体が膨らんだりしぼんだりするのを感じてもOK。
・呼吸をコントロールしない。
・呼吸する体の感覚を観察する。
・意識する体の部位は一つに絞る。
3.雑念が浮かんだら、呼吸に意識を戻す。
呼吸に集中しようとしても、周囲の声が気になったり、仕事のことが浮かんだりと、気持ちはあちこちにさまよいがち。けれどそこで「あぁ注意がそれた、失敗だ」と思わないこと。雑念が湧いた事実を受け入れ、もう一度呼吸に意識を戻す。これを何度も繰り返すうちに心が整う。時間は自由。30秒~1分でも十分効果がある。
・雑念が浮かんでも自分を責めない。
・雑念に気付いたことを褒める。
・再び、呼吸に意識を戻す。
川野泰周先生 精神科・心療内科医。臨済宗建長寺派林香寺住職。寺務の傍ら、横浜市内のクリニック等で禅やマインドフルネスを取り入れた診療を行う。主著に『ずぼら瞑想』(幻冬舎)。
※『anan』2018年11月21日号より。イラスト・中根ゆたか 取材、文・黒澤祐美
(by anan編集部)
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