アボカドサラダはどこにでもあるけど、タムさんのは全然違う。僕はタイに10回以上行っていますが、タムさんのよりおいしいサラダに出合ったことはないですね」。通訳を担当してくれた斎藤クンはそう言い切った。ほどよく熟したアボカドをていねいにカットして、ココナッツパウダーで香りを加えているのが“タムさん流”。この味の虜になって“追っかけ”がいる、というのも納得(実は斎藤クンも客の一人、普段はタイの農村を研究する大学院生)。
料理人歴30年で働いた店は100近く(笑って豪語)のお茶目な料理人・タムさんがこの夏、ついに自分の店『バーン・タム』(タムの家)を大久保に構えた。そのニュースはたちまち広まり、連日満席のにぎわい。私も初回は満員の熱気にあてられ放心状態。改めてランチに行って、今度はその味の繊細さに興奮状態!
今まで日本に根付いてきたタイ料理は、辛、酸、甘で構成された単純な味だった。ところがタムさんの料理はそのどの味も突出していない。もっと優しく、深い調和のとれた味だ。こんなタイ料理食べたことない! ちなみにメニューはアラカルト70種。注文があってから作るので、なかなか出ないことも。でも、どんなに待ってもその価値がある。私も、もうタムさんの味の虜になってしまった。