気軽に淹れて、癒されたい。アイスティーとのおいしい付き合い方。
大西:小谷さんは、アイスティーは普段から飲まれますか?
小谷:エッセイなど執筆のお供にお茶が欠かせないんですが、暑くなるとアイスティーが定番です。紅茶の味や香りを感じながらごくごく飲めるところが好きなので、ストレートで楽しむことが多いですね。
大西:透明感があって涼しげな見た目だし、渇いたのどを鳴らしながら豪快に飲めるところがいいですよね。アイスティーは作るところから楽しみが始まっているというのが僕の持論なんですが、飲み終えるまでにいろんなハイライトがあるのも愛される理由だと思います。
小谷:わかります! 私も紅茶を淹れる一連の動作も含めて好きなんですが、ちょっと一息ついて、次のスタートを切るためのスイッチを入れる役目を果たしてくれている気がします。
大西:何かに取りかかる準備段階に、お茶を淹れるという行為はとてもマッチしているのかもしれないですね。特にアイスティーは、茶葉の香りや氷が溶ける音、指先から伝わってくる冷気など、飲む前からいろいろな形で五感を刺激してくれるところがいいのかなと思います。
小谷:もちろん飲むことでもリラックスやリフレッシュできますしね。私は朝、メイクをする前にアイスティーを淹れて、飲みながら身支度を整えることもありますが、気分や動作を切り替えるのにほどよい感じがするんですよね。だから、気づいたら一日中お茶ばかり飲んでいるのかもしれません。
アイスティーをおいしく淹れる法則は?
小谷:私がアイスティーで難しいなと思うのが、味がなかなか決まらないことなんです。氷を入れると味が薄まるので、最終的に何を飲んでいるのかわからなくなってしまうことも(笑)。
大西:なるほど。アイスティーは、分量の法則を覚えてしまえば実はとても簡単なんですよ。作りやすい割合は、茶葉1:熱湯50:氷50。たとえば500mlのアイスティーを作りたければ、茶葉は完成量の100分の1にあたる5g、熱湯と氷が総量の半分の250mlずつが適量です。淹れたての熱い紅茶を氷の上から注げば、味がバシッと決まった冷え冷えのアイスティーに。これだと時間とともに味が薄まることもないので、ずっとおいしく楽しむことができます。
小谷:意外とシンプルですね! なんとなく難しい気がして、いつも悩みながら淹れていました。
大西:紅茶って格式が高いイメージがあるかもしれませんが、長い時間をかけて生活の中にある飲み物として広まっていきました。なので「そんなに気張らずもっと自由に楽しめばいいんだよ」ということを伝えていくのが僕の役割だと思っています。
小谷:そう言ってもらえると、いい意味でくだけた飲み物なんだと親近感が湧きますね。
大西:そうなんです。ぜひ思いのままに楽しんでください。
自由な感性で楽しむのがおいしさのポイント。
小谷:アイスティーにおすすめの茶葉はありますか?
大西:あえて言うなら…ですがニルギリやキャンディなど、渋みが少ない産地の茶葉が向いています。アールグレイも渋みが少ないので作りやすいですね。渋みが出すぎると冷やした時に色が濁ってしまうんですが、渋み成分は紅茶らしさの証しだし、苦みもアイスティーの爽快感に欠かせないものなので、決して悪者ではありません。紅茶ならではの渋みが好きだという方もいますし、気にせず好きなもので楽しめばいいと思います。
小谷:そうなんですね。
大西:茶葉も淹れ方と同様、堅苦しいルールはないんです。
小谷:そのスタンスはすごくうれしいし楽になります!
大西:紅茶って本当に自由でパーソナルな飲み物なので、気分に合わせて作れるのが魅力のひとつ。茶葉から淹れるのが好きだけれど、面倒だと感じる日はティーバッグに頼っています。疲れているなと感じたら茶葉を多めにしてエナジードリンクのような感覚で飲んだり、薄めに淹れてやさしい味わいを楽しむのもアリだと思います。
小谷:気分や体調に合わせて微調整するのもおもしろいですね。
大西:僕は、アイスティーは日常を円滑にしてくれる存在だと思っていて。誰かと過ごす時間が楽しいものになったり、気分を切り替えることができたりすればいいんじゃないかなと。
小谷:確かにそうですね。私もアイスティーがくれる豊かな時間を楽しみたいと思います!
大西 進さん teteria代表。静岡県富士市を拠点に、セレクトした茶葉の販売やティーレッスン、イベントなどを通して紅茶の魅力を伝えている。著書に『紅茶の絵本』(ミルブックス)などがある。
小谷実由さん モデル。エッセイの執筆、ブランドとのコラボレーション、ポッドキャスト配信など多方面で活躍。猫と純喫茶が好きで、紅茶を執筆のお供に愛飲する。著書は『隙間時間』(ループ舎)。
※『anan』2023年7月19日号より。写真・中垣美沙 ヘア&メイク・sota(小谷さん) 取材、文・宮尾仁美
(by anan編集部)