素早くエネルギー源に。手作りなら酵素も元気。
江戸時代から夏バテ解消に効果があるとされてきた甘酒だけど、そもそも甘酒とは何なのか、甘酒探求家の藤井寛さんに伺うと、
「日本で古来飲まれている甘い飲料で、その種類は2つ。一つは、米にカビを生やした米麹を使い、米のでんぷんを糖化させて甘くする甘酒で、もう一つは、酒粕をお湯に溶かして砂糖やショウガで味を加える甘酒です。いま一般的に飲まれているのは米麹のほうで、砂糖不使用の天然の甘さが味わえる点でも人気があります」
そこで今回は、米麹を使った甘酒作りを教えてもらうことに。
「必要な道具といえば、炊飯器くらい。甘酒の健康面でのメリットは、消化の負担をかけずに、すぐにエネルギーになるところ。原料の米が腸に入る前に、麹菌の酵素によって、アミノ酸やブドウ糖といった栄養素にすでに分解されているからです。しかも手作りの甘酒は、市販のもののように加熱殺菌する必要がないので、酵素が元気という利点もあります」
甘酒の素朴な疑問
甘酒ってお酒の一種?
A.米麹で作る甘酒はお酒ではありませんが、酒粕の甘酒にはアルコールが含まれます。
「とはいえ、酒粕の甘酒も作る時に一度沸騰させるので、アルコールはほとんど蒸発して1%未満。酒類ではなく清涼飲料水のカテゴリーに入ります。一方、米麹で作る甘酒は、“酒”とは言っているもののアルコールフリーなので、車の運転前などでも安心です」
お米が原料なので太りそう…。
A.ご飯よりも甘酒のほうが、同じ重さで考えると低カロリーです。
「米が原料なので、糖質が気になる人もいると思いますが、同じ重さの白米と比べると甘酒のほうが水分量が多いため、白米よりも甘いのに低カロリー。糖質も人間の体に必要な栄養素。たとえば時間や食欲がない朝に、甘酒を朝食として取り入れるなんて効率的では」
温かい甘酒と冷たい甘酒、健康効果が高いのはどっち?
A.どちらも同じなので、好みの温度で飲んでOKです。
「手作りの甘酒は温かいまま飲むか、冷蔵や冷凍で冷やして消費するかと思いますが、酵素が壊れるほどの熱(60度以上)を加えなければ、その働きは損なわれません。市販品の場合は、加熱殺菌されていることが多いため、そもそも酵素の働きは期待できません」
甘酒の作り方
材料/2~3人分
白米(または、もち米)…1合、米麹…150g、水…2.5合
作り方
- 研いだお米を炊飯器に入れ、水を加える。
- 「おかゆ」または「リゾット」モードで炊飯。
- 炊けたら炊飯器の蓋を開け、ほこりなどが入らないように布巾をかけて、釜の中の温度を下げる。60度まで下がったら米麹を入れて、よく混ぜる。
- 炊飯器の蓋を閉めず、釜に布巾をかけた状態で保温を続けて、6~8時間発酵。こうすると、釜の中は60度くらいにキープできる。
- 発酵途中に2~3回かき混ぜる。混ぜるほど米麹の酵素とお米のでんぷんが出合い、分解が促進される。
- 甘みが出てきて、しゃばしゃばとした感じになるのが完成の目安。
冷蔵保存:3~7日間、冷凍保存:2~3か月。
全国甘酒カタログ
一般的に販売されている米麹は「黄麹」という種類だけれど、甘酒作りに使われる米麹には、黒麹、白麹などがあり、さらに白米や玄米といった原料の違いによって味はさまざま。なかでもおすすめの甘酒を紹介。
玄米の食感が楽しめて腹もちもよし。
髙善商店 クエン酸+ビフィズス菌 発芽玄米甘酒[生産地:岩手県奥州市]
有機栽培の発芽玄米に、白麹菌で生成されるクエン酸と、ヒト由来のビフィズス菌を配合。甘さ控えめで、ほんのり酸味のある爽やかな甘酒に。つぶ感たっぷりで、食べる感覚に近い。200g¥540 TEL:0197・35・1279
GABA配合で腸活と同時にリラックス。
八海醸造 乳酸発酵の麹あまさけGABA[生産地:新潟県南魚沼市]
銘酒・八海山の酒蔵が米麹だけで造った甘酒。植物性の乳酸菌で発酵させているため、ほどよく酸味があり、喉ごしが爽やか。さらに、リラックス作用などの期待ができるGABAも配合。118g¥227 TEL:0800・800・3865
“すっぱい甘酒”でシャキッとしたい時に。
まろうど酒造 あまざけ+乳酸菌 ちほまろ(へべす味)[生産地:宮崎県西臼杵郡]
甘酒に乳酸菌を加えて、乳酸発酵させたタイプ。宮崎県特産の柑橘「へべす」の果汁入りで、甘さよりも酸味が勝り、ジュース感覚で飲める。シャキッと目を覚ましたい朝にもぴったり。150g¥280 TEL:0982・72・7226
クリーミーだからお菓子作りにも使える。
ヤマト醤油味噌 YAMATO玄米甘酒[生産地:石川県金沢市]
原料に玄米を使っているので、ビタミン、ミネラルも豊富。とろっとした喉ごしで、コクのある味わいが特徴。砂糖の代わりに料理やお菓子に使う人も多いという使い勝手のいい一本。490ml¥648 TEL:0120・12・1248
味にも瓶のデザインにもほっこりする癒し系。
髙砂酒造 麹で造る吟醸甘酒[生産地:北海道旭川市]
明治32年創業の酒蔵が造る甘酒。米麹のみで造られていて、甘さは口当たりが優しく、後味は清涼感あり。案山子や熊の素朴なイラストがちりばめられた瓶のデザインにほっこり。200g¥346 TEL:0166・23・2251
華やかなピンクが印象的。味はクセがなくさっぱり。
斎藤酒造場 御殿桜 酒屋の造った紅麹あまざけ[生産地:徳島県徳島市]
紅麹を使用。紅麹には、リラックスや血圧を下げる効果があるとされるGABAが含まれている。華やかなピンク色の甘酒は、クセがなく、甘みもさっぱり。飽きないおいしさ。1000g¥800 TEL:088・652・8340
泡盛に使われる黒麹で造る酸味のある甘酒。
忠孝酒造 黒あまざけ[生産地:沖縄県豊見城市]
沖縄で泡盛を造る時に使う黒麹を使用。黒麹にはクエン酸由来の酸味があり、甘酒の甘さを爽やかに包み込む。つぶ感はほとんどないタイプ。ちなみに色は、黒ではなくクリーム色。720ml¥1,008 TEL:0120・11・1257
かわいいパッケージに爽やかな味がギュッと。
仙醸 黒松仙醸 白麹あまざけ[生産地:長野県伊那市]
黄麹に、白麹もブレンドされているのがポイント。白麹にはクエン酸が含まれているため、甘酸っぱい味わいに。ライチョウをあしらったラベルもかわいく涼しげで、夏のギフトにも喜ばれそう。400g¥483 TEL:0265・94・2250
スーパーなどで手に入りやすいのも嬉しい。
マルコメ プラス糀 糀甘酒LL リッチ粒[生産地:新潟県魚沼市]
‘19年に魚沼市に甘酒専門の工場ができ、味がグレードアップしたと藤井さん太鼓判のマルコメの甘酒。今春発売された飲みきりタイプで米麹のつぶ感と濃厚な味わいが特徴。130ml¥171*編集部調べ TEL:0120・85・5420
手仕事の丁寧さによる優しい味わいが魅力。
酒蔵吉田屋 百年甘酒[生産地:長崎県南島原市]
米は使わず、米麹だけで造られた甘酒。瓶一本一本に、米麹と雲仙の伏流水から湧き出る井戸水を入れ、釜の中で12時間発酵させるという手の込みよう。ほっと心が和らぐ甘さ。370g¥648 TEL:0957・82・2032
藤井 寛さん 甘酒探求家。小学4年生から甘酒作りにハマる。甘酒の種類や歴史、全国の甘酒などを紹介するサイト「あまざけ.com」を運営。これまで飲んだ甘酒は500 種類ほど。『発酵ベジあんのおかずとおやつ』(WAVE出版)監修。
※『anan』2021年7月28日号より。写真・中島慶子 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)