おいしいものは人を笑顔にするけれども、おいしさを決めるのは味だけではない。むしろ誰と食べるか、どんなシチュエーションで食べるかによって、味の印象はいかようにも変わってしまうもの。三田織さんの『僕らの食卓』を読むと、そんな当たり前のことを改めて感じる。
「ごはんを食べるときって誰でも無防備になってしまうというか、素が一番見えやすかったりしますよね。だからこそ人がおいしそうに食べている姿を見るとドキドキしてしまうのですが、食をテーマにしたのも、食べている男の子たちを見たかったという思いが先にありました」
一応断っておくとBLなのだが、性別は関係なく登場人物の内面を丁寧に描いたこの作品を、BLが苦手という理由だけで敬遠するのはあまりにももったいない。
「好きじゃない人とごはんを食べたくないのは、一種の防衛本能なのかもしれません。自分もパーティや飲み会など、よく知らない人と大勢でごはんを食べなければいけない空間が、あまり得意ではないので」
三田さんのそんな思いを投影させたのは、とある経験から人とごはんを食べることが苦手になってしまった、豊という孤独な男性。彼は母親を亡くした穣(みのる)と種(たね)という年の離れた兄弟と出会うことで、忘れかけていた温かな感情を取り戻していく。食がテーマといっても、男だらけの食卓に登場するのは、爆弾おにぎりや土鍋ごはんなどシンプルなものばかり。それらが手の込んだ料理よりもおいしそうに見えてしまうのは、食卓を囲んでいる彼らの幸せが何よりも伝わってくるからだろう。
「SNSなどにステキな料理の写真が並んでいるようなグルメな時代に、プレッシャーを感じている人も実は多いと思うんです。だけど大事な人と一緒で楽しくさえあれば、何を食べてもいいんじゃないかなという思いを込めてみました」
他者にはそう簡単に打ち明けられないような感情を抱えながらも、食事を通して徐々に心を通わせていくふたりと無邪気な男の子は、この先もこうやって楽しくごはんを食べ続けていくのだろうな、と思えるような余韻が心地よい。
「好かれるためにお互いが努力しなければいけないような普通の恋愛関係と違って、このふたりの場合は、恋愛にプラスして家族愛みたいなものが最初から大きい気がして。BLだからこそ描けた形だと思います」
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