主要キャストへのインタビューで迫る『超かぐや姫!』の奥深き魅力

Netflixで配信されるやいなや瞬く間に注目を集め、劇場公開もロングラン上映、興行収入20億円突破の大ヒット。まさに破“竹”の勢いな『超かぐや姫!』の奥深き魅力を、キャストインタビューで迫りました!

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    夏吉ゆうこ as かぐや

    ゲーミング電柱から現れた謎多き少女。彩葉プロデュースのもとツクヨミのライバーになる。パンケーキが好き。

    ハチャメチャだけど筋が通ってるそのマインドが好き

    呑み込みきれない情報量と深いストーリーでしたけど、かぐやがまっさらな赤ちゃんから徐々に人間の心の機微を理解するのと同時に、私もじわじわ全容を掴んでいきました。かぐやは宇宙から来た不思議な存在だから、記号的な少女らしさではなく、かぐやの個性を意識して表現しています。例えばブラックオニキスの初登場シーンではあえて「あーキラキラだー」くらいの平熱の声を入れました。女性ファンが多い人気ライバーですが、かぐやは熱狂的なファンではない。でもみんなが楽しそうだから自分も楽しい。映像のかぐやが十分に可愛いので、自分なりに演技は引き算をしてみようと。美しい映像に助けていただきながら、思い切ってチャレンジしました。

    印象に残っているのはライブシーンです。ボカロ文化の中で青春時代を過ごしてきたので、楽曲をryoさんご本人がアレンジしていると聞いて胸が高鳴りました。「ワールドイズマイン」は当時すでに新しかったのに、令和版はテンポもリズムも違ってクラブミュージックみたいな重低音。こんなアレンジなんだ! と衝撃でした。初めてボカロ曲を聴く方にも楽しんでもらえると思います。私は歌い手として難しい曲を上手く歌いたい欲もありつつ、あくまでかぐやが歌うバランスを考えました。アーティスト的な上手さというより、純粋に彩葉との音楽を楽しむ歌い方になるよう心がけて。ライブではただレコーディングした音声を流すだけではなく、盛り上がりに応じてアドリブや笑い声を足せたので、物語とリンクした素直な気持ちが表現できて嬉しかったです。

    私はかぐやのマインドが好きなんです。「運命なんか打ち壊しちゃえよ!」ではなく「来るものはしょうがない。どんな運命でもハッピーに過ごせたらいいよね」ってめちゃくちゃ現代っ子ですよね。でも、一見ハチャメチャだけど筋は通っているし、その考え方って人生が生きやすくなるし勇気づけてもくれる。その気持ちを大切に演じました。

    Profile

    夏吉ゆうこ

    なつよし・ゆうこ 大阪府出身。主な出演作に『くノ一ツバキの胸の内』(ツバキ)、『シャインポスト』(聖舞理王)、『ウマ娘プリティーダービー』(シュヴァルグラン)

    永瀬アンナ as 酒寄彩葉

    バイトをしながら一人暮らしをする17歳の高校生。ツクヨミではかぐやのプロデューサー「いろP」として楽曲を制作する。

    大人っぽい彩葉がかぐやとの出会いで高校生らしく

    そもそも電柱から突然現れた女の子を育てるって時点で、意味がわからないじゃないですか。でもやがて友達や家族のようになっていき、そのどちらとも取れてどちらとも取れない不思議な関係が彩葉には心地よかったんじゃないかなと思ったんです。一緒に過ごすにつれてかぐやという存在が心にすみ着いて離れなくなった。完成試写を観たとき、終盤の彩葉の表情があどけなくなっていることに気づいてハッとしたんです。大人っぽくてしっかり者で完璧主義だけど、かぐやといるうちに等身大の高校生らしい素顔が見えてくる。取り繕わず「かぐやといたい」と本心を言えるまでになるって、本当にすごい変化だなと思いました。

    彩葉は高校生で一人暮らしをしていて母親とは複雑な関係にありますよね。なのでオーディションではお母さんに対して嫌悪感を持っているのか、諦めているのか、どんなニュアンスで演じたらいいか監督と音響監督に何度も相談しました。そのうえで私が掴んだのは、彩葉はやれることとやれないことの分別がはっきりしている子。だから憤りはあっても親の立場を現実的に理解して感情を切り捨ててきたんじゃないかと。「一人暮らしの方が気が楽」と思っているのも余計な感情を抱えなくて済むから。なのでステレオタイプな「お母さんとの関係が悪い、憎い」ではなく、関係性にはもう少し幅があるような気がして。その点を意識して演じました。

    私は辛いときこそ楽しい作品を観たいんです。その点『超かぐや姫!』は登場人物の辛く悲しい気持ちを打ち出す演出があまりないんですよ。あったとしてもワンカット。とある場面で彩葉が辛い局面に立たされたときもその様子を長回しにせず、タイムラプスみたいに早送りをしたり、食器棚を開ける仕草で感情の揺れを伝えたりと演出が工夫されていて。登場人物の辛く苦しい状況を映し続けないから、しんどい気持ちにならずに観続けられるのかもしれません。

    Profile

    永瀬アンナ

    ながせ・あんな 東京都出身。主な出演作に『サマータイムレンダ』(小舟潮)、『呪術廻戦懐玉・玉折』(天内理子)、『銀河特急ミルキー☆サブウェイ』(マキナ)、『あかね噺』(桜咲朱音)など。

    早見沙織 as 月見ヤチヨ

    ツクヨミを創設した管理者兼トップライバー。歌って踊って分身もできる8000歳(という設定)の、ミステリアスなAI。

    ヤチヨはあらゆることを越えてきた特別な存在

    仮アフレコで監督と「ヤチヨはどういうキャラクターなんでしょう?」とすり合わせをしたとき、シーンによって表情や年齢感が変わっても大丈夫ですと伺い、とても自由度の高いキャラクターだなと感じました。例えば冒頭のナレーションでは俯瞰して昔話を語る大人の雰囲気を持ち、トップライバーとして活動するときはフランクな砕けたトーンで発声をします。表情も、子供のようで可愛らしい一方、どこか全てを見透かしている年齢不詳な雰囲気もある。魅力的な存在です。

    ヤチヨはツクヨミの管理人でありAIですが、特別にAIっぽさを意識することはしませんでした。普段の私たちもそうですよね。日頃いろいろな場面でAIに触れていますが機械らしいキャラは実はおらず、どんどんリアルに近づいている。配信者も明らかなキャラクター付けをせず、普段と変わらないトーンで喋る人が多いように感じます。なので、聞きなじみがある雰囲気を大切にしました。

    お話をいただいたとき、「この物語にとって音楽は大事な要素のひとつ」と聞いていましたが、どの楽曲もアレンジが素敵で感動しました。思い出深いのは「ワールドイズマイン」と「Ex-Otogibanashi」のライブバージョンの歌入れです。夏吉さんとスタジオの別ブースに入って、相手の声が聞こえる状態で録ったので、ライブのような臨場感がありました。ナチュラルに笑うところや感極まった声がヤチヨの表現として自然と湧き上がってくるのを感じました。

    このお話は、ハッピーエンドの描き方がとても素敵です。ヤチヨが見てきた時間の長さ、味わった気持ちの多さを思うと、彼女はあらゆることを越えてきた特別な存在といえますが、そのヤチヨの想像をも超える希望が物語全体で表現されています。私たちも、経験値や情報によって刷り込まれた未来予想図を想像しがちです。ですが、枠組みを取り払って自ら動けば未来は変えられる。そんな気づきと喜びを、作品全体から感じました。

    Profile

    早見沙織

    はやみ・さおり 東京都出身。主な出演作に『SPY×FAMILY』(ヨル・フォージャー)、『鬼滅の刃』(胡蝶しのぶ)、『ONEPIECE』(ヤマト)など。

    青山吉能 as 綾紬芦花

    彩葉の友人。美容系インフルエンサーとしても活躍しており、ツクヨミでの名義は「ROKA」。彩葉を気にかけている。

    友人としての距離が滲み出る湿度を生み出しているのかも

    綾紬芦花というキャラクターは彩葉の友人であり、美容系インフルエンサーという群雄割拠の世界で人気を得ている存在。きっと相当な自己分析力を備えているんだろうなと感じました。その能力から生まれるこまやかさや俯瞰的な目線が、彩葉との関係性を形作るなかで“あえて踏み込みすぎない”という道を選ぶことに繋がったように感じています。一見クールに見えるビジュアルも、芦花の内に秘める優しさをより際立たせていますよね。

    公開後、多くの方に「観たよ」と声をかけていただいています。芦花や真実の収録は、他キャスト陣の膨大な収録時間から比べるとミニマムであっという間に終わってしまったので、こうして長く深く時間をかけて楽しんでいただけていることを純粋に嬉しく思います。これはイチ視聴者の感想にすぎませんが、クリエイターたちがやりたいことをやり切った、良い意味でしっちゃかめっちゃかなてんこ盛り感に、かつて夢中で見ていたMAD動画の弾幕に近い高揚を覚えました。さらにボカロ曲は懐かしい楽曲群の神アレンジと役者陣の表現力が重なり合って、唯一無二の体験へと昇華されている。『超かぐや姫!』は、単なるノスタルジーにとどまらず、ボーカロイド文化を更新する参加型の芸術作品だなと感じました。映像面もとても魅力的で、高解像度なアクションとスピード感がありながら、一時停止を前提とした考察しがいのある映像作りがテンポよく展開されていく。Netflix発という点も掛け算になって爆発力が増したのかもしれません。

    実は収録後に「芦花は彩葉に対して特別な感情を抱いている」という設定を聞いてびっくりしたんです。監督、そんなこと教えてくださらなかったじゃないですか…! 演じる際はあくまで友人としてフラットに彩葉を見守ることに努めましたけど、そのフラットさが逆に、滲み出る湿度を生み出しているのかもと思うと、なんて沼深い子。きっと多くの方を悩ませていることでしょう(笑)。

    Profile

    青山吉能

    あおやま・よしの 熊本県出身。『WakeUp,Girls!』(七瀬佳乃)でデビュー。主な出演作に『ぼっち・ざ・ろっく!』(後藤ひとり)、『帝乃三姉妹は案外、チョロイ。』(帝乃三和)など。

    小原好美 as 諌山真実

    彩葉の友人。ツクヨミではグルメ系インフルエンサー「まみまみ」として活躍しており、ブラックオニキスの帝アキラ推し。

    好きとリスペクトで互いに支え合っている関係

    真実は彩葉と芦花とかぐやの4人でいることが多いので、どんな人物像にするべきかバランスを考えました。最初はふわふわ担当かなと思ったんですけど、かぐやが加わるとふわふわキャラがかぶってしまう。でもかぐやには好奇心の塊みたいな赤ちゃんぽさがあるので、真実とみんなで彼女を包み込んで見守ろうと思って演じました。4人もベタベタに仲良しじゃないけれど、ツクヨミでも一緒にいるし、いい関係ですよね。『超かぐや姫!』は現代より少し先の未来だから、多様性を尊重するのは当然で、4人ともインフルエンサーとしてそれぞれの良さをわかってる。けど群れるんじゃなくそこには好きとリスペクトがあって、お互い支え合っている。その感じがいいなあって。

    彼女たちを見ていて、我々の仕事と通ずるところもあるのかなと思いました。私は単純にお芝居を追求したいと思ってこの世界に入ってきたんですが、作品をきっかけに私個人を応援していただくこともあって。そういう意味ではインフルエンサー的な活動もしているので、皆さんへの感謝も、より楽しんでもらいたい気持ちにも共感しました。でもそれだけを突き詰めると疲れてしまうから、自分が楽しめているかも大事にしています。

    よく「見どころは?」って聞かれるんですけど、魅力が多すぎて困っていて。世代はもちろん、アニメが好き、VTuberが好きという属性でも刺さるポイントが違うと思いますし、みんなどのへんが刺さってるんだろう? って今も探しています。いちばんは映像も音楽もキャラクターの関係も今の時代に合っていることが大きいとは思いますね。あと、どんなシーンも細かく描かれていて隙がないんですよ。後半に物語が盛り上がるだけじゃなく、前半の日常パートもテンポが良くて急に怒涛の展開になる。参加したスタッフさんみんなの夢が注がれているんだろうなって思いました。見せたい場面がいっぱいあるんだって、あの台本から伝わってきたから。

    Profile

    小原好美

    こはら・このみ 神奈川県出身。主な出演作に『月がきれい』(水野茜)、『かぐや様は告らせたい』シリーズ(藤原千花)、『スター☆トゥインクルプリキュア』(羽衣ララ)など。

    ファイルーズあい as 忠犬オタ公

    ツクヨミ内のイベントで司会進行を務める配信者。ニュース番組「NEWSTSUKUYOMI!!」を配信している。

    ネットミームを使う“俺ら感”のあるキャラクター

    資料を見た段階でryoさんのお名前やあの頃のボカロ曲がクレジットされていて私世代にはドンピシャだったので、刺さる人にはたまらないだろうなと思いました。「ワールドイズマイン」「ハッピーシンセサイザ」が流れたときは、インターネット老人会じゃないですけどあの頃の青春や情熱が蘇ってノスタルジックな気持ちに。学生時代に元気や笑顔をくれた楽曲が、令和の今、サイケデリックかつポップな音楽になり、最新技術を駆使した映像美で新しい景色を見せてくれるなんて。「ワールドイズマイン」のピンクと黒の市松模様の背景の上で寝転がるシーンは初音ミクの再現ですし、めちゃくちゃ感動しました。

    私が演じた忠犬オタ公もネット用語を使う子。日常生活の中で「わんわんお」なんて言わないと思うんですけど、私はニコニコ動画で育ってきたので、同じ界隈にいたかもとシンパシーが湧いて。ツクヨミの住人に寄り添ってくれる、“俺ら感”のあるキャラクターだなと思って、グラマラスなお姉さんのキャラデザですが、オタク性が垣間見える喋り方を意識しました。あと、劇中では忠犬オタ公の日常は明かされませんが、高校生の彩葉たちより少し年上なのかなと思ったんですよね。語彙も豊富だし、どっしり構えていて経験がありそう。なので元気で明るいけれど大人っぽい印象を残しています。

    今って目まぐるしいショート動画のおかげでみんなが刺激に慣れて、2時間の映画を集中して観てもらうことが難しいじゃないですか。でもこの作品はギミックが至る所にちりばめられているし、パンクしそうなくらい情報が盛りだくさんで飽きないんです。実写的な表現とアニメ的な動きの融合も素晴らしくて、映像作品として新しいジャンルを確立したんじゃないかなと。それくらい革命的な作品です。あっ、あと私が好きなキャラは乃依です。弓を射る姿が妖艶で、指先まで艶やかな美しさを感じました。目が離せない魅力がありますね。

    Profile

    ファイルーズあい

    東京都出身。主な出演作に『ダンベル何キロ持てる?』(紗倉ひびき)、『ジョジョの奇妙な冒険ストーンオーシャン』(空条徐倫)、『チェンソーマン』(パワー)な

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    取材、文・飯田ネオ イラスト・谷垣慧実 監修・へちま Ⓒコロリド・ツインエンジンパートナーズ

    anan 2495号(2026年5月13日発売)より
    Check!

    No.2495掲載

    美脚美尻 2026

    2026年05月13日発売

    夏に向けて、バランスのとれたヘルシーな美脚&美尻を目指すべく、このシーズン恒例の「美脚美尻」特集の最新版。美脚を蘇らせる“ファシア”調整、美しいヒップラインを再構築する“土台筋”トレなど、今日からスタートできるメソッドをレクチャーします。

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