
ここ数年、大きな盛り上がりを見せているPodcast。リスナーの心をつかみ様々な展開を生み出す仕組みやその戦略を、人気番組の制作者に伺います。
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Profile
神吉将也
1993年生まれ、京都府出身。2016年にラジオ関西に入社し地上波の番組やイベントを担当。異動後はWebメディアの編集に携わるかたわらPodcastに着目し、『マユリカのうなげろりん!!』をスタート。プロデューサーとして5本のPodcast番組を手がける。自身の熱狂コンテンツは「サッカーチームのチェルシーが大好きで全試合チェックしています」
芸人さんが作る面白さを広めることが自分の責務
昨年夏から今年頭にかけて、Podcast番組『マユリカのうなげろりん!!』の展覧会が全国7か所で開催された。二人のビキニ写真集の発売やライブ開催など、配信開始当初から音声コンテンツの枠にとどまらない展開を見せる異色の番組を手がけるのは、ラジオ関西プロデューサーの神吉将也さん。彼がPodcastに魅力を感じた理由のひとつに、アーカイブが残る点があるという。
「ラジオは内輪ノリになりやすいけれど、アーカイブがあると文脈を遡れて最初のハードルが下がるのでは。また、公共性が高い地上波と違い好きな人にだけ届くので、リスナーが受け止めてくれれば、振り切った内容も可能。マユリカの番組は攻めた下ネタも多いのですが、そこが歓迎されたことで方向性が定まった気がします」
マユリカに見る、Podcastから広がる様々な世界
そんな自由度の高いトークが写真集やイベントなどの企画を生み、ファンを引き込む要因に。これらを仕掛ける際に制作側として意識した点を尋ねると、意外な答えが。
「僕自身は独自のアイデアを出せるタイプではないので、仕掛けている意識は正直なくて。マユリカの二人が番組内で発したことを、お金を含めどう形にするかが僕らスタッフの役割。イベントの中身に関してはお笑いの最前線で面白いものを作ってきた構成作家の中野貴至さんが素晴らしいディレクションをしてくださるので、チームで作り上げている感じですね」
ライブも展覧会も、基本的にはヘビーリスナーの方に満足してもらえる内容を心がけているという。
「展覧会では全エピソードの年表を展示したのですが、それを見た方が過去を遡って聴いてくれたおかげで再生数がむちゃくちゃ伸びて。地上波の場合は次の放送回をどれだけ聴いてもらえるかに注力するけれど、Podcastは過去のすべてが財産。過去回をさらにPRするために、切り抜き動画などの施策も取り入れています」
番組を広める手法に関しては、とある存在に刺激を受けたと語る。
「『ゆとりっ娘たちのたわごと』というOL2人組のPodcast番組があるのですが、彼女たちが切り抜き動画でファン層を広げたことを知って参考にさせてもらいました。面白ければ勝手に口コミで広がる…と過信せず、今は写真集や切り抜き動画のように見えるものを組み合わせながら認知をとることが必要。面白さはパーソナリティによって担保されているので、それを広めることが僕に課せられた責務だと思っています」
現在はマユリカ、ダブルヒガシ、紅しょうが、黒帯、例えば炎と、注目芸人5組の番組を担当。すべての番組に共通しているのが「フリートークを大切にすること」。
「コーナーや台本などの演出が前に出ることより、芸人さんの持ち味がしっかり伝わることが何より重要。思っていることが丸裸になった剥き出しの感じが面白いと思うので、演出せずにコンビで話す時間を20分は設けています。そうすることで、自ずと各自の人間味が出てくるのかなと。例えば、紅しょうがの二人は飾らない姿が魅力だと思っていて。稲田さんが自分の感情や価値観を隠さず表現するところだとか、熊元さんの意外と真面目な部分が垣間見えるところが信頼に繋がっているのでは」
全員がすぐに素を出せるわけではないが、それも個性のひとつ。
「例えば炎のタキノさんは自分を出すのが苦手だと公言していて、内面をあまり開示しないんです。でも、謎が多い感じも面白いなと思ったりも。番組としての粗削り感が魅力であり、限定放送からレギュラーに昇格したのも“今後どういう形になっていくのかリスナーと一緒に追っていきたい”という期待感が決め手になりました。どの番組も長く続けるつもりでいるので、すぐに結果を出そうとせずにゆっくり見ている部分はありますね」
地方局のあり方として参考になれば嬉しい
落ち着いて話せる空気を大事にしており、その伸びやかさがトークの広がりを生むことも。
「ダブルヒガシの番組で、東さんが韓国のカジノで100万円賭けた話の回があるんです。手に汗握るトークが30分間続き、衝撃的な面白さで。反響も大きく、先日開催したイベントはその話にちなんだタイトルに。そうやってひとつのトークがイベントやグッズなどに広がっていく面白さも、担当番組に共通する点かもしれません」
キャッチーな番組グッズはリスナーからも好評を博しているが、こだわりはあるのだろうか。
「番組継続はグッズ収益にかかっている部分があり、リスナーの声に応えることを重視しています」
チーム“ラジ関”が仕掛けるPodcastを広める工夫
グッズに限らず、番組に対する声はかなり参考にしているそう。
「リスナーが面白がるポイントから外れないようにコメントは必ず見ます。イベントで生の声を聞くことも大切にしていて、なかには『辛い時にマユリカの番組に支えられた』という方も。くだらないことを全力で続けていれば、大事に思っていただける方が出てくるんだと気づけた出来事でした」
数多くの人気番組を手がける神吉さんが思う、Podcastと親和性の高いコンビの条件は?
「同級生コンビが好きだと答えることが多いのですが、同級生かはともかく、2人で話すのが苦じゃない関係性のトークって安心して聴ける気が。その上で自分が声をかけたいと思うのは“怠惰な人”。自分で発信できるなら僕らは必要ないので、『番組があるならしゃべろうか』みたいな人でしょうか。とはいえ、今は手いっぱいで担当を増やす予定はないのですが…」
最後に、番組を通してこれから仕掛けていきたいことを伺った。
「紅しょうがの二人とは、公開収録を全国でやりたいですねと話しています。他のコンビも地方出身の方が多いので、地域を絡めて何かできたら自分たちが地方局である意義も出てくるのかなと。ラジオ関西は小さな局ですし、“業界を盛り上げたい”みたいな野望はなくて。それよりは他の地方局の方に“うちも面白い番組を作れば全国規模のイベントができるかも”と思ってもらえたら嬉しいですね。今後Podcastを頑張りたいという地方局が出てきたら、なんでも協力するつもりです」
神吉さんプロデュースラジオ関西芸人Podcast
『マユリカのうなげろりん!!』
幼馴染みコンビ・マユリカの雑談が、意外な展開を生む。毎週土曜23:00ごろ配信。初めての方におすすめ回は、#233「桜ヶ丘高校女子バレー部」。
『はちくちダブルヒガシ』
高校の同級生コンビ・ダブルヒガシによる、軽快なしゃべくり一本の番組。毎週日曜23:00ごろ配信。初めての方におすすめ回は#178「カジノで100万円大勝負」。
『紅しょうがは好きズキ!』
女性コンビ・紅しょうがが好きなことを話したり、リスナーからの恋愛相談も。毎週月曜23:00ごろ配信。初めての方におすすめ回は#118「家電芸人」。
『黒帯のブロンドスポーツ脚研究会』
高校の同級生コンビ・黒帯による、ド正直かつ鋭い大人のトークが特徴の番組。毎週火曜23:00ごろ配信。初めての方におすすめ回は#90「メリクリスマスッ!」。
『例えば炎のあ、エレガンス』
中学の同級生コンビ・例えば炎が、活動の近況や地元宝塚にまつわる話を展開。毎週金曜23:00ごろ配信。初めての方におすすめ回は#15「帰ってこいキョロ」。
anan 2494号(2026年5月1日発売)より





























