アカデミー賞俳優とオスカー俳優が出演していることでも話題の映画『ザ・ブライド!』をご紹介します。
時代に反旗を翻せ! あの花嫁が覚醒する

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名戯曲『ハムレット』に秘められたシェイクスピアの妻の慟哭と再生を体現した『ハムネット』で、アカデミー賞主演女優賞に輝いたジェシー・バックリー。カントリーシンガーを目指すシングルマザーを演じて注目を浴びた『ワイルド・ローズ』以来、さまざまな役柄をリアルに息づかせてきた演技力に魅せられている人も多いだろう。
その彼女が、“フランケンシュタインの花嫁”を演じるとなれば、怪奇映画ファンならずとも気になるところ。しかも、監督は母性の葛藤を見つめて高い評価を得た長編デビュー作『ロスト・ドーター』でもジェシーを起用したマギー・ギレンホール。フランケンシュタインを演じるのは、これまたオスカー俳優クリスチャン・ベールときているのだから。
舞台は1930年代のシカゴ。フランケンシュタイン博士によって創造され、長い年月を孤独に生きてきた怪物フランクは、ユーフォロニウスという博士のもとを訪れ、伴侶を創ってくれと依頼する。その花嫁“ブライド”となるべく、墓から掘り返されたのがジェシー演じるアイダの遺体なのだ。
でも、ブライドは、いわゆるマッド・サイエンティストによって創り出されただけの存在じゃないんですね。彼女には、『フランケンシュタイン』の作家メアリー・シェリーの、男性優位社会で抑圧されてきた魂が宿っている。その状態は、むしろ憑依されていると言ったほうがいいくらい。そもそも、アイダが命を落とすことになったのも、メアリー・シェリーの魂に突き動かされたせいなのだ。と同時に、ブライドは、アイダとして生きていた頃の記憶をまったく失っている。ブライドは、強い自我を感じつつも、自分が何者であるかはフランクの言葉を信じるしかない存在でもあるんですよ。
そんななか、ある事件をきっかけに警察に追われる身となった二人は、ボニーとクライドばりの逃避行を繰り広げることに。反抗の象徴となったブライドは、男性社会で沈黙を強いられていた女性たちを覚醒させていく。ブライドの顔のアザを真似たメイクをした女性たちが反旗を翻すシーンは、『ジョーカー』の名場面さながら。
その一方で、生身の人間以上に繊細で思いやりのあるフランクとの間に愛と絆も育っていくわけで。クリスチャンは、孤独を知るからこそのフランクの無垢や優しさを滲ませてさすが。
舞台になっている1930年代は、マギーにインスピレーションを与えた映画『フランケンシュタインの花嫁』が作られた時代。フランクが大好きな映画の数々にもその時代への目配せを感じさせつつ、彼の推し俳優をマギーの弟ジェイク・ギレンホールが演じているのもお楽しみ。なんなら二人を追う刑事コンビは、マギーの夫ピーター・サースガードとペネロペ・クルスという家族的でありながら贅沢なキャスティング。
ペネロペが演じる刑事にも、女性が正当に能力を評価される社会への願いが託されている。メアリー・シェリーの時代とも1930年代とも違う“現在”の価値観が炸裂する逃避行のなか、ブライドが見つけるものは何か。なぜ、タイトルがシンプルに『ザ・ブライド!』なのか。この物語が気づかせてくれるものに納得です。
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『ザ・ブライド!』
監督/マギー・ギレンホール 出演/ジェシー・バックリー、クリスチャン・ベール、ピーター・サースガード、アネット・ベニング、ジェイク・ギレンホール、ペネロペ・クルスほか 4月3日より全国公開。ⒸNiko Tavernise
anan 2490号(2026年4月1日発売)より



















