中川大志、『早乙女カナコの場合は』は「生々しくて詩的で“自分の場合は”を考えてもらえる映画です」

エンタメ
2025.03.24

中川大志さん

演劇サークルの中心人物で脚本家志望だが、口先だけで一本も書き切れない。自分は留年を繰り返す中、大手出版社に就職が決まった彼女のカナコについ皮肉を言ってしまう。なのに、モテる。“いたいた、こういう人”と思わせる長津田啓士を映画『早乙女カナコの場合は』で演じた中川大志さん。

SHARE

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

生々しくて詩的で“自分の場合は”を考えてもらえる映画です。

「プライドが高くて、口を開けばうんちくばかり。素直じゃないし、めんどくさい男ですよね(笑)。でも、中身はものすごく小心者で脆い。そのギャップがチャーミング。そう感じたので、彼の弱さを軸にキャラクターを作っていきました。僕も長津田の年の頃は、同世代の俳優と比べて自分というものを持っていないことに劣等感を抱いたり、外からの見え方ばかり気にして焦ってもがいて…。この映画はカナコと長津田の10年を描いていますけど、僕自身も時が経って、プライドが邪魔して見せられなかった部分も、こうして話せるようになりました」

本作の原作は、柚木麻子さんの小説『早稲女、女、男』。読んだのは、演じ終えてからだそう。

「クランクアップして完全にスッキリした状態で読んだら、僕がお芝居でチョイスしたことと、小説の中のキャラクターが違うところもありました。そういう答え合わせ的なところも面白いですね。作品にもよるんですけど、やる前に原作を読むことは少ないかもしれません。僕らが作ろうとする映画は、まずは台本ありき。原作へのリスペクトがいっぱい詰まっている台本を読み込んで、役の解像度を高めて立体的にしていくために、そこには書かれていないことにまで想像を巡らせる作業は必ずしています」

しっかり者だけど、恋愛は不器用でずるずる長津田との関係を続けてしまうカナコを演じたのは、橋本愛さん。念願の共演だったそう。

「初対面なのにすぐに馬が合うな、居心地がいいなと感じる人っていますよね。お芝居でもすぐにリズムが噛み合う方がいるんですけど、橋本さんとは多くを語らずともハマった安心感がありました。日常のリアルを感じ取ってもらわないといけない作品の中で、“この感じわかる”という言葉にできない感情や場の雰囲気を共有できたことが、カナコと長津田の関係性においていい作用をもたらしたと思います」

二人の関係性の変化は、何度か挿入されるダンスシーンに表れる。振付師にアイデアをもらいつつ、シーンをリードしたのは中川さんだった。

「MVではないので、ただ美しければいいわけではなく、二人の間でどんなやり取りが起きているのか見せたくて。ならば決め込まず、流れに身を任せたほうがいいなと。生々しい会話の中に時折、こうした詩的で抽象的な時間が流れるのがこの映画の魅力です。この作品は“早乙女カナコの場合”ですが、出てくる女の子、そして観てくださる方の数だけ物語があると思うので“自分の場合”を見つけてもらえたら」

その一人が、大学デビューして、インカレで演劇サークルに入り、長津田に想いを寄せる麻衣子。演じた山田杏奈さんとは撮影の合間には楽しく話していたというが…。

「実は、はっきりとは記憶に残っていないんです。というのも、長津田が、麻衣子ちゃんと一緒にいても心ここにあらずというひどい状況が続いていたので(笑)」

役が自分自身の行動に表れたのは、「長津田の一番の理解者であり、味方でいたい、いなくてはいけない」という想いの強さゆえだろう。

「僕の最近のテーマが“シームレス”なんです。去年ブロードウェイで舞台を観た中で、ロバート・ダウニー・Jr.さんのお芝居が素晴らしくて! 奥が深いけどシンプルなんです。演じるぞってスイッチを入れることはいくらでもできるけど、そうじゃなくて、普段の僕と役の時間が地続きになって、一心同体でできたらいいなって思うんですよね。この作品でいうと、疲れやフラストレーションが溜まっていることもひっくるめて包み隠さず、長津田として過ごしたかった。僕のすべてが出てしまう分、すごく怖いですけどね」

PROFILE プロフィール

中川大志さん

なかがわ・たいし 1998年6月14日生まれ、東京都出身。2009年、俳優デビュー。NHK大河ドラマ『真田丸』、NHK連続テレビ小説『なつぞら』など、数多くの話題作に出演。’23年にはエランドール賞新人賞を受賞した。

INFORMATION インフォメーション

『早乙女カナコの場合は』

演劇サークルで脚本家を目指す長津田と大学の入学式で出会い、付き合い始めたカナコ。やがて口喧嘩が絶えなくなり、カナコは内定先の出版社の先輩から告白される。二人の恋愛の行方を主軸に、女性の生き方も描く。新宿ピカデリーほか全国公開中。Ⓒ2015 柚木麻子/祥伝社 Ⓒ2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会

ジャケット¥171,600 シャツ¥50,600 パンツ¥137,500(以上アミ/アミ パリス ジャパン TEL:03・3470・0505) その他はスタイリスト私物

写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・川地大介 ヘア&メイク・KUBOKI(aosora) インタビュー、文・小泉咲子

anan2439号(2025年3月19日発売)より

NEW MAGAZINE最新号

No.24402025年03月26日発売

推し旅 2025・春

FOCUS ON注目の記事

RANKINGランキング

もっちぃ占い

PICK UPおすすめの記事

MOVIEムービー