
瀬戸康史さん
ケムリ研究室による舞台『サボテンの微笑み』に出演する、瀬戸康史さんのインタビューをお届けします。
KERA作品の日々作り上げていく感じが楽しいです
ケムリ研究室とは、ナイロン100°Cを主宰する劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんと緒川たまきさんが始めた演劇ユニット。2021年に上演した『砂の女』が第29回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞するなど、その高い作品性で注目を集めている。
「ここに呼んでいただけるのは特別感があって、俳優として認めてもらえた気がして嬉しいです」
そう話す瀬戸康史さんは、2017年の舞台『陥没』以来、何度となくKERA作品に出演してきている。
「以前からずっとKERA作品のファンだったんです。それだけに初めて出演したときは周りが強烈な個性を持った方ばかりなうえ、個人的にかなりチャレンジングな役で、プレッシャーに押しつぶされそうでした。でも本番に入ったら、お客さんから嬉しい反応があり、新しい道を切り拓いていただいた感覚がありました。この作品以降、自分の中でお芝居をする際の重みのようなものが取れて軽くなり、自由度が増しましたし、舞台が好きになりました。KERAさんには感謝しかないです」
KERAさんの作品は、ズレた会話やハズしたテンションが独特の間を生んで笑いを起こすようなナンセンスコメディが多い。それまでコメディのイメージがなかった瀬戸さんだが、淡々としたまま、突然絶妙な間合いでトボけた色を放り込む。
「僕はいつも、その間みたいなもので『太鼓の達人』を思い出すんです。『太鼓の達人』は流れてくる音楽に合わせてドンと打ちますけど、KERA作品の場合は、絶妙なタイミングにドンッてセリフを発すると笑いが起こる、みたいな。自分がコメディをやるときの気持ちいい間は、なんとなく合ってきた気がします」
そう話しながらも楽しげな様子。
「KERAさんの現場って、台本が結末までできていない状況で稽古が始まることが多いんですが、僕はそれを面白がれるタイプ。絶対に面白いものに仕上がるという信頼はもちろんですが、みんなで一日一日ちょっとずつ作り上げていく感じがものすごく楽しいんですよね。日々上がってくる台本をみんなで円になってまず読んで、そこから軽く動いてみるんですが、それを見たKERAさんが、ちょっと違うなって思ったらその場ですぐ書き直したり、翌日に書き直されたものが来たり。本当に一歩ずつ、みんなで肩を並べて前に進んでいこうという感じが好きなのかもしれません。以前の作品では、稽古中盤になって自分の役が双子だと知って驚いたりもして。そういうワクワク感も楽しいです」
今回の『サボテンの微笑み』も新作書き下ろし。現時点では、つつましく暮らす生活者たちの喜びや哀しみを描いた作品になるとのこと。
「小さな劇場ですし、派手な演出はないとおっしゃっていました。些細な日常が描かれるんだと思いますが、KERAさんの作品は、いい意味でのわからなさというか、観ているこちらに想像させるピースがたくさん散らばっているんですよね。キャラクターの性格も関係性も、厳密には描かれないけれど、ニュアンスで感じ取る。KERAさん自身も、その具体的な何かより、そこでの空気感みたいなものを大事にしているのかなと思います。笑いに関しても、KERAさんなりの“品”みたいなものがあるのが好きなんです」
今回、実の妹である瀬戸さおりさんとの初の兄妹共演も話題。しかし、ご本人は「そこに対してはとくに何も思わなかった」そうで。
「この年齢になると、なかなか会う機会も少ないですからね。そばで見守れて嬉しい…みたいな、ちょっと親のような気持ちはあります」
舞台は「自身の表現力を鍛えて心を豊かにしてくれる場所」。
「沼ですよ(笑)。その楽しさにハマったらなかなか抜け出せません」
Profile
瀬戸康史
せと・こうじ 1988年5月18日生まれ、福岡県出身。現在公開中の映画『木挽町のあだ討ち』に出演。近作に、ドラマ『119エマージェンシーコール』『再会~Silent Truth~』などがある。
information

ケムリ研究室no.5『サボテンの微笑み』
つつましく暮らす生活者たちの小さな夢をそっと掬い取るような物語を、昭和初期の風情を感じさせる世界観の中で描いていく。3月29日(日)~4月19日(日) 三軒茶屋・シアタートラム 作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演/緒川たまき、瀬戸康史、瀬戸さおり、清水伸、赤堀雅秋、萩原聖人、鈴木慶一 平日公演9800円 土日公演1万2000円 U-25チケット4800円ほか キューブ TEL. 03-5485-2252(平日12:00~17:00) 兵庫、豊橋、北九州、新潟公演あり。https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/kemuri-no5
写真・小笠原真紀 スタイリスト・田村和之 ヘア&メイク・須賀元子 インタビュー、文・望月リサ
anan 2489号(2026年3月25発売)より
















