希少な作品も登場! 没後120年、フランスの工芸家エミール・ガレの展覧会

エンタメ
2025.02.22

19世紀後半のアール・ヌーヴォーを代表するフランスの工芸家エミール・ガレ。自然をモチーフにした曲線的なデザインや鮮やかな色彩、革新的な技術を特徴とした彼の作品は今もなお国際的な評価を得ている。

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ガレの地位を築いたパリと、彼の葛藤にもフォーカス。

ガレはフランス北東部ロレーヌ地方の古都ナンシーに生まれ、父が営む高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を引き継ぎ、ガラス、陶器、家具において独自の世界観を確立した。1901年には、様々なジャンルにおけるナンシーの芸術家たち36名とともに産業芸術地方同盟を結成し、初代会長も務めるほど、郷土ナンシーの名士として知られていた。

一方、ガレは故郷で製造を行いつつ、製品はパリのショールームに展示し、受託代理人を通して富裕層に販売していた。本展に登場する美術工芸品店『エスカリエ・ド・クリスタル』はそうした取引店のひとつ。会場ではガレ作品の中でも、高級小売店だけに販売を許した希少な作品も登場する。

その後、ガレは1878年、1889年、1900年のパリ万博という大舞台で新作を発表し、そのブランドを国際的に知らしめていった。しかし、故郷ナンシーでは絶大な名声ゆえの反発を買うこともあり、1901年あたりから、療養を繰り返すようになる。社会的なジレンマや、のしかかる重圧は想像を絶するもので、1904年にガレは白血病により、享年58歳でこの世を去る。

本展覧会ではガレが築いた地位を、パリでの活躍に焦点を当てて紹介する。当時のガレ作品の販売代理店を営んでいたデグペルス家伝来資料が、近年サントリー美術館に収蔵され、本展で初公開される。他に彼がパリで活躍したことを物語るガラスや陶器、家具、自筆文書などの資料、計110件が登場。これらを通して、青年期から最晩年にかけてのガレの圧倒的な芸術活動を読み解く。

才能を開花させると同時に、故郷への想いや葛藤など、人との軋轢にも思い悩むガレの姿を捉えた本展。そうした想いの中から生まれた作品を見れば、彼の人柄や社会的背景までも窺い知ることができる貴重な機会になるかもしれない。

ランプ「ひとよ茸」 エミール・ガレ 1902年頃 サントリー美術館

ひとよ茸が成長する様子を3段階に分けて表現しているガレの代表作のひとつ。

花器「ジャンヌ・ダルク」 エミール・ガレ 1889年 大一美術館

1889年にパリ万博で発表された黒色ガラスでは作品の物語性や精神性を表現した。

花器「鯉」 エミール・ガレ 1878年 大一美術館

1878年のパリ万博ではジャポニスム・ブームを反映した作品や月光色ガラスを発表。

1900年 パリ万博受注控え 1900年 サントリー美術館

パリ万博での目覚ましい活躍で急増した注文を控えた実際のノートも展示。

昼顔形花器「蛾」 エミール・ガレ 1900年 サントリー美術館

1900年のパリ万博でガレはガラスと家具の部門でグランプリに輝く。

INFORMATION インフォメーション

没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ

サントリー美術館 東京都港区赤坂9‐7‐4 東京ミッドタウン ガレリア3F 開催中~ 4月13日(日)10時~18時(金曜、3/19、4/12は~20時。入館は閉館の30分前まで) 火曜休(4/8は開館) 一般1700 円ほか 会期中展示替えあり。TEL:03・3479・8600

文・山田貴美子

anan 2435号(2025年2月19日発売)より

NEW MAGAZINE最新号

No.24352025年02月19日発売

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