第15回ananマンガ大賞受賞! “強面×丁寧な暮らし”のギャップ男子が魅力の『寿々木君のていねいな生活』

エンタメ
2024.12.30

「輝く! 第15回ananマンガ大賞」。マンガファンのみなさん、1年ぶりのご無沙汰です! ananの年に1度のマンガのお祭りがやってきました。編集部が選ぶ大賞の発表です。

【ananマンガ大賞】ふじもとゆうき『寿々木(すずき)君のていねいな生活』

大賞は男子が主人公。しかも、暮らし系男子?
大人女性向けの旬なマンガを紹介する年に1度の企画「ananマンガ大賞」。大賞の選考基準は、(1)ラブストーリーである、(2)現在連載中である、(3)かっこいい、素敵な恋の相手、あるいは主人公が出てくる、(4)読んだあとに前向きな気持ちになれる、の4点。この基準でanan編集部のマンガ部が審査をした結果、今回の大賞は、ふじもとゆうきさんの『寿々木君のていねいな生活』を選出!

主人公の寿々木くんは、大きな体に三白眼で見知らぬ人から因縁をつけられてしまう強面ですが、しかし実は“丁寧な暮らし”が趣味というギャップ男子。優しさゆえに傷つくことが多かった彼が、高校で親友と出会い、淡い初恋も経験。クスッと笑えてホロリと胸にくる、そんな優しい作品です。

4つのポイントで作品を解説!

寿々木くんが思いを寄せる、妹が通う保育園の先生。実は彼女には裏の顔が…。
暮らし系といいつつ寿々木くんも思春期男子。妹が通う保育園の先生・桜子に一目惚れ。明るく活発、美人な桜子さんですが、実は素顔は酒とつまみを片手にオンラインゲームでゾンビをぶっとばすゲーマー女子だった!!

主人公の寿々木くんは、デカい&強面…。でも実は“生活好き”な高校生。
視線を送るだけで「睨んだだろ!?」と因縁をつけられるほど強面な寿々木くんですが、実は育てたハーブでお茶を淹れ、花を育ててスワッグを作る、そんな暮らし系男子。でもその趣味をなかなか人には言えなくて…。

性別も年齢も関係なく、好きな自分でいればいい。そのメッセージが胸に染みる。
多くの登場人物が、“本当の自分”を表現することに悩み葛藤しながら生きるこの物語。そんな彼らが人と出会い関わる中で、“好きな自分”でいてもいいということに気がついていく姿は、現代を生きる私たちの心に響きます。

高校に入学して出会ったのは、小さくて力持ちな春名くん。二人のバディぶりもいい!
因縁をつけられ窮地に陥った寿々木くんを助けてくれたのは、同じクラスの小柄&美形の春名くん。実は柔道を習っているのでめちゃ剛腕。“見た目通りじゃない”魅力を持つ二人の友情は、バディ感たっぷりで尊い…。

ふじもとゆうき先生に特別インタビュー。

――まずは大賞受賞の感想を!

ふじもとゆうき先生(以下、ふじもと):実は、ネームができず落ち込んでいたときに受賞のメール連絡をいただいて。担当編集者と打ち合わせの長電話をし、その電話を切った直後に、入れ替わりでananから編集者に大賞受賞の連絡が入ったそうです。びっくりして何度もメールを読み返しました。

――強面の男子が実は暮らし系、というストーリーは、どういうところから思いついたのでしょう?

ふじもと:昔からずっと、男の子が主人公のマンガを描いてみたかったんです。それと私は〈モーニングルーティン〉的な動画を見たり、丁寧な暮らし系の本を読むのが好きで、憧れがありまして。ならば、男の子の主人公と丁寧な暮らしを合わせてみたらどうか? というのが、この作品の発端です。

――“強面×丁寧な暮らし”にはギャップがありますが、楽しそうにお菓子を作り、人形の服を縫い、お茶を淹れる寿々木くんの姿は、とても愛らしく魅力的です。

ふじもと:“丁寧な暮らし”って、哲学やスタイルとして捉えられがちですが、実践している人にとっては“とても楽しい趣味”なのではないか、と思うんです。ならば、高校生男子でそういう趣味を持つ男の子がいるっていうのも、アリな気がしたんです。寿々木くんの趣味は、少し前ならば“女らしさ”の象徴とされがちでしたし、また寿々木くんのような“謙虚で優しい”性格も、女らしいとされていました。とはいえ、そういった趣味を楽しんだり、優しくて謙虚な人は男にも女にもいるわけで。この作品と向き合う中で、“女らしさってなんだろう?”ということも考えたりしています。逆に強くあれ、という“男らしさ”に苦しむ男性がいるなら、強くなくていいし、優しくあっていいとも思う。そんなことを考えることもありますね。ただ、私としては、このマンガはめちゃくちゃ王道の少女マンガだと思ってるんですよ。

――え?! この斬新な設定が?

ふじもと:悪に困らされている、か弱いヒロインのもとに、颯爽と登場したヒーローが窮地から救う。二人は同じ学校で仲良くなり、ヒーローが、ヒロインが抱えるコンプレックスを克服するヒントをくれるって、すごく王道ですよね(笑)。

――ヒロインは寿々木くん、ヒーローは春名くんですね?

ふじもと:はい。でも、二人は精神的にすごく結びついているけれど、恋愛ではないんですね。男らしさとか女らしさとかより、今は自分らしさだよねという時代だからこそ、少女マンガの王道設定に男の子同士を当てはめるのもいいと思いますし、それに二人の間が恋じゃなくてもいいと思うんです。恋愛は、桜子先生との行く末を楽しみにしていただければ(笑)。

――それから、それぞれのキャラクターの陰の部分を描いているところが、大人の心にも響く理由の一つだと思います。

ふじもと:読者の方もそうだと思うのですが、生きているとつらいことも絶対にありますし、それはマンガの中を生きる彼らも同じ。その経験や抱える思いを描くことで、読む方にも共感してもらえるのでは、と考えています。また、現実では必ずしも救いがあるとは限らないからこそ、物語の中に小さな救いを描きたい。そんな部分が、同じような思いを持っている人に届いたら…と願っています。

――では最後に、これからこの作品を読む人にメッセージを!

ふじもと:モジモジする仲良しの女友達を見守るような気持ちで、寿々木くんのあれこれを見守っていただければと思います。読み終わったあとに、楽しかったな、ちょっと疲れ取れたかも…と感じてもらえればと思うので、疲れたときにこそ読んでもらえると嬉しいです。

ふじもと先生に聞く制作秘話

登場人物が苦しむシーンは、描いている私もつらいです…。
「眼鏡の男の子は、寿々木くんを中学時代にいじめていた荒井くん。大人になって思うのは、もちろん、いじめは当然駄目ですが、彼にもいろいろな背景があっただろうということ。つらいシーンでしたが、彼にも人生を切り拓いてほしいという願いを込めて描きました」

実は、サブキャラであるクラスメイト全員、詳細なプロフィールがあるんです…(笑)。
「前髪をピンで留めているのはくせ毛だから、など細かいことに加え、この二人は仲良しとか、ここはグループなどと決めてあるので、ちょっとした表情も描きやすい。なかでもこの“オレも仲良くなりて~”と言う後藤くんはお気に入り。ぜひサブキャラにも注目を」

寿々木くんが妄想&暴走するシーンは、めちゃくちゃ楽しく描きました。
「イケメンを描くのが苦手な私にとって、寿々木くんは緊張感なく描けるキャラ(笑)。ここは桜子先生とのデートを妄想するシーンなのですが、焦っていたり狼狽する顔を描くのが本当に楽しかった。ちなみに怖い顔は、ヤクザものの青年マンガなどからヒントをもらうことも」

PROFILE プロフィール

ふじもとゆうきさん

東京都出身。2002年に雑誌『花とゆめ』に作品が掲載され、マンガ家デビュー。代表作は『キラメキ☆銀河町商店街』『シェアハウス金平糖北千住』(共に白泉社)など。

INFORMATION インフォメーション

『寿々木君のていねいな生活』

イカついけれども暮らし系男子の寿々木くんは、“素の自分”をなかなか表に出せない。でも高校に入学し、自分とは正反対の親友ができたことで、少しずつ日々が色づいていく。1~2巻 各770円/白泉社 Ⓒふじもとゆうき/白泉社

anan 2428号(2024年12月25日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2428掲載2024年12月25日発売

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毎年恒例の年末企画、次なるトレンドをanan独自の視点で大予測する「NEXT!」特集。エンタメの話題を中心に、ファッション、カルチャー、ビューティ、ライフスタイルなどの2025年の注目キーワードを徹底分析します。また、毎年注目の「ananマンガ大賞」の発表も!

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