成田凌「ロケーションの細部にまでこだわる監督と台湾なんて絶対に相性がいい」 映画『雨の中の慾情』制作を語る

エンタメ
2024.11.23

伝説の漫画家・つげ義春が、1981年に絵コンテのまま発表した短編漫画を起点に、映画『雨の中の慾情』を生み出した片山慎三監督。オスカーにも輝いたポン・ジュノ監督の助監督として修業を積み、『さがす』や『ガンニバル』など、センセーショナルな話題作を発表してきた奇才である。主人公の義男を演じるのは成田凌さん。

日本映画としてドシッと何十年後も残ってほしい作品。

「以前から片山監督の作品を拝見していて、生半可な気持ちではできないだろうなと感じていました。でも俳優の仕事をしていると、そういう作品に思いっきり気合を入れて向き合いたくなるんですよね。だからお話をいただいた時は嬉しかったし、撮影はほとんど台湾でやると聞いて、なんて魅力的なのだろうと。ロケーションの細部にまでこだわる監督と台湾なんて、絶対に相性がいいと思いました」

ラブストーリーを軸に、スリラー、ホラー、アクションなどのジャンルを横断しながら、つげ特有のシュルレアリスムを感じさせる今作。

「ワンカットずつ、ここまで抜かりなく丁寧に作っていくのは、なかなかできることではありません。もちろん監督にとっては、何年も準備してきた作品ですから当たり前ですが、1回でOKが出ることはほぼありませんでした。セリフや表情などの芝居からロケーションのちょっとした違和感まで、諦めずに戦い抜くという姿勢が印象的で、時には大変な要望も、現場にいる全員が一丸となってそれを叶えようとしていました。そのチームのパワーといったら凄まじいものだったと思います」

約1か月の台湾ロケは「過酷でありながら贅沢な時間」だったそう。

「実際にある市場で、とんでもなく賑わっている朝に撮影をしたのですが、匂いや空気感が本物だと、やっぱり映像に説得力が生まれるんですよね。撮影が終わるとほぼ毎日、竹中直人さんやスタッフの方々と焼き肉を食べに行ったり、日本式の居酒屋へ行ったりしていて。そこで作品の話をする時間は息抜きにもなるし、とにかく幸せでした。普段のようにひたすら家と現場を往復するのとは全然違って、より作品に没頭できたと思います」

義男を演じる上で最も大事にしたのは、優しさ。

「でもずっと優しい人だとつまらない。優しくなっちゃう時がある人というか、映画を観終えて義男が目の前からいなくなった時に、すごく寂しいと思ってもらえるような人物像になっていたらいいなと思いながら演じました。あとは福子(中村映里子)のことが大好きだという想いを、最初から最後まで保ち続けること。優しさを持って福子を好きでいれば、突拍子もない行動をとったとしても義男は成り立つと思ったんです。この作品は、日本映画としてドシッと何十年後も残ってほしいと願っています。そして、いろんな要素が交錯していますが『20~30代の女子、これもラブストーリーだぜ!』と伝えたいですね(笑)」

PROFILE プロフィール

成田 凌

なりた・りょう 1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。俳優、ファッションモデル。2018年度“日本アカデミー賞”で新人俳優賞を受賞し、ドラマや映画など主演作多数。出演映画『【推しの子】』は12月20日公開。

PROFILE プロフィール

『雨の中の慾情』

売れない漫画家・義男(成田凌)はある日、小説家志望の伊守(森田剛)と共に離婚したばかりの福子(中村映里子)に出会い、その艶やかさに心を奪われる。そして、福子の悲しい秘密を知ってしまう…。11月29日公開。Ⓒ2024「雨の中の慾情」製作委員会

写真・阿部ケンヤ スタイリスト・伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク・宮本 愛(yosine.) インタビュー、文・若山あや

anan 2423号(2024年11月20日発売)より

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