Kinky Bootsとは
2013年にブロードウェイで初演され、その年のトニー賞でミュージカル作品賞のほか、その年最多となる6部門を受賞するなど、大成功を収めたミュージカル。脚本は、『ラ・カージュ・オ・フォール』や『ニュージーズ』などのヒットミュージカルを手がけたハーヴェイ・ファイアスタインが手がけ、音楽・作詞はシンディ・ローパーが担当。誰もが生きる勇気をもらえるようなパワフルな題材と、名曲揃いの楽曲の魅力で、世界中に熱狂的なファンを獲得している。物語は、父親の会社を継ぎ倒産寸前の靴工場の再起をかける青年・チャーリーが、ドラァグクイーンのローラと知り合ったことから、ドラァグクイーンのためのブーツ“キンキーブーツ”を作ることを思いつくところから始まる。自分とは違う人を受け入れていくことの大切さを感じさせると同時に、他人とは違ってもあなたはあなたでいいと勇気をくれる作品だ。
東 啓介
初めてのグランドミュージカルの主人公で、責任やプレッシャーはもちろん大きいですが、何よりこの作品に携われることが嬉しくて…。数年前に韓国で観劇しましたが、キャストの皆さんの歌唱力やエンタメ性に圧倒され、いつか自分もこんな舞台に出演できればと思っていました。その夢が叶ったのですが、まだ実感がわかないのが正直なところです。
オーディションでは、岸谷五朗さん(日本版演出協力)と、ローラ役の俳優さんと共にお芝居を作っていきました。受かったら、このように稽古場でチャーリーという役柄を作り上げていくのか、と想像するだけで鼓動が速くなりましたし、その場にいられることがとにかく嬉しかったです。チャーリーは老舗の靴工場の跡取り息子として生まれ、ローラをはじめ周りの人たちとの愛や友情を築くことで成長し、魅力的な青年へと変わっていきます。性格が自分自身に重なる部分もあり、とてもやりがいを感じました。
セリフも歌も多いし、舞台上にいる時間がとても長い。だからこそ、稽古が始まるまでに体のケアを徹底してやっておきたいと思っています。チャーリーのソロ曲で僕が一番好きなのは、自分自身に失望し、魂の内側を振り絞るように歌う「THE SOUL OF A MAN」。どれだけ歌っても壊れない喉を作ろうと、朝、起きがけに何もせず、まずこの曲を歌っているんです。僕流の喉の筋トレです(笑)。
若い頃から背が高いせいで、ダンスが悪目立ちするとか、姿勢が悪いとか、凹むことを言われることが多かったです。その結果、自分を自分で責めてしまっていました。でも、『ジャージー・ボーイズ』や『マタ・ハリ』『イン・ザ・ハイツ』などの作品を経験するうちに「僕は僕」と自分を受け入れられるようになり、自由に芝居ができるようになりました。来春、この舞台でもうひと回り大きくなれるだろうか、と本当にワクワクしています。(松下)優也さん、(甲斐)翔真くん、樟太郎くんたちから、どんな刺激をもらえるかも楽しみですね。
有澤樟太郎
数年前、シアターオーブでこの作品を観劇したときに、とてつもないエネルギーを感じて、「自分もいつか絶対に出たい」と思いました。普段からミュージカルや舞台を観ているけれど、年に何回出合えるか、というくらいの衝撃作。音楽自体も、作品が持つエネルギーも素晴らしいですし、キャストはもちろん、携わる全員の作品への愛や熱量がすごかったです。どの役を演じたいかより、「このカンパニーに参加したい」という感じ。だからオーディションがあると知って、自分から「受けさせてください」とお願いしました。歌や芝居だけではなく気持ちでも勝負したくて、オーディションにはチャーリーっぽいスーツを自前で買い、成人式のときの革靴を引っ張り出して挑みました。やっている最中、自分がチャーリーに入り込んでいる瞬間があり、出演が決まり本当に嬉しいです。
ミュージカルは以前からやらせていただいてはいましたけれど、一昨年の『ジャージー・ボーイズ』で自分のギアが1段上がった気がします。4人組のコーラスグループの物語ですが、チームがすごかったんです。4人の中で僕は切り込み隊長のような役柄でしたが、お互いの相乗効果で自分もどんどん熱量が上がっていきましたし、チームでいただいた評価が自分の自信にも繋がりました。今回の音楽監督でもある(福井)小百合さんが歌の指導をしてくださったのですが、絶対に諦めない方なんです。チームのハーモニーを絶対にいいものにするぞという情熱に応えなくてはと思いましたし、熱量で負けちゃいけないと思わされました。あの現場で周りとの音の調和を意識するようになり耳が鍛えられました。
今年事務所を移籍して新しい環境に身を置いたことで、初心に返ることの多い一年になりました。来年がデビュー10周年で、居心地がよすぎる現状に満足しちゃいそうな自分を奮い立たせたいと思ったんですよね。来年はシアタークリエでの主演舞台も控えていますし、ここからさらに飛躍できたらと思っています。
東 啓介×有澤樟太郎
反発していた父親の急死で、破産寸前の靴工場を引き継いだチャーリー。父親と和解せぬまま別れた後悔を背負いながら、ローラと出会い、工場の再建に奮闘する中で変化してゆく主人公を演じる東啓介さんと有澤樟太郎さん。
――おふたりは2022年上演のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』でもWキャストでしたよね。
有澤:あのときはチームごとの稽古ですれ違いだったんですけれど、歌稽古が一緒だったのでそこで話したりして。最近行けてないですけど、一緒にごはんにも行きます。
東:仲良くなったきっかけは忘れちゃいましたが、しょうちゃんはまっすぐ芯があるけど屈託がなく、一緒にいて気持ちいいんだよね。
有澤:僕は、『ジャージー・ボーイズ』でとんちゃん(東さんの愛称)が「Cry for me」を歌い出した瞬間、「好きだな」って思った。ワンフレーズを聴いただけで視線を釘付けにする深さと、力強い歌声の中にもふんわりとした柔らかさがあって。
東:ありがとう。嬉しいな。
有澤:だから今回も共演できないのが悔しくて。
東:でも今回、稽古は一緒だから。いろんなディスカッションができそうで嬉しい。それこそWキャストの醍醐味だと思うし。
――チャーリーという役に関して今どのように考えていますか?
東:まだ何も成し遂げていないけれど、「できてるんだぜ」って強がる危なっかしさと可愛らしさを持ったキャラクターだと思ったんですよね。そんな彼がローラと出会うことで成長していく。観客に共感してもらわなければいけない役だと思うので、そこは意識していきたいなと思っています。
有澤:誰しもチャーリー的な一面を持っていると思うんです。僕も最初に観たときに彼に共感したし、楽曲も自然と入り込める歌詞やメロディになってると思うし。
東:「STEP ONE」を歌うと、自分の中のエンジンがどんどん回っていく感じがするよね。
有澤:しかも最後転調するし。
東:この作品を観たとき、そこでものすごく心躍ったんだよね。
有澤:あそこでみんながチャーリーを応援したくなる、というか。
東:芝居から歌に繋がっていく瞬間を大事にできたらなと。
――今、おふたりから見たローラの魅力とはどんなところですか?
有澤:めちゃくちゃカッコいいよね。絶対的な芯があるし。
東:自分にないものを持っているところに惹かれるかな。
有澤:ローラを見て、カッコいいし美しいと思いました。
東:しかも、そこにあたたかさも持ち合わせているという。そのローラを翔真と優也さんがどう演じるかも楽しみなんだよね。きっとふたりとも全然違うローラを作り上げるんだろうから。翔真とは昔映画で共演していて、そのとき「いつかミュージカルで共演しよう」と話してたから、セリフを交わすのが楽しみ。
有澤:僕は『RENT』で見てから翔真くんのファンなんです。歳は僕より若いけれど貫禄あるし、舞台で放つオーラがすごいなって。優也さんとは、それこそ以前にWキャストだったんだけど、事前にものすごく緻密に役を研究される方なんだよね。すごくストイックだから、そこできっと影響される部分も多いんだろうな。
東:優也さんの舞台はずっと拝見していたし、あの歌声を間近で聴けるのが楽しみだな。
――あらためて作品への想いを。
東:韓国で初めて観たとき、言語もわからないのにすごく胸打たれたんです。その後、共演した三浦春馬くんからもこの作品の素晴らしさを伺っていたから、繋げていきたいという想いもあるんです。
有澤:なにより、この作品の、観客に届けるパワーが素晴らしいですよね。登場人物全員がキラキラしていて、いつまでも終わってほしくないって思うくらい。誰もが好きになれる作品だと思います。
PROFILE プロフィール
東啓介
ひがし・けいすけ 1995年7月14日生まれ、東京都出身。190cmの長身と伸びやかな歌声を武器にミュージカルなど幅広いジャンルで活躍。主な出演作に、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』『ラグタイム』『VIOLET』『DEATH TAKES A HOLIDAY』、ドラマ『ファイトソング』『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』など。
PROFILE プロフィール
有澤樟太郎
ありさわ・しょうたろう 1995年9月28日生まれ、兵庫県出身。ミュージカル『刀剣乱舞』で注目され、数々の舞台や映像作品で活躍。2022年のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で高い評価を受けた。今年、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』に主演。来年2月には主演ミュージカル『HERO』が控える。
INFORMATION インフォメーション
ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』
2025年4月27日(日)~5月18日(日)東京・東急シアターオーブ、2025年5月26日(月)~6月8日(日)大阪・オリックス劇場 脚本/ハーヴェイ・ファイアスタイン 音楽・作詞/シンディ・ローパー 演出・振付/ジェリー・ミッチェル 日本版演出協力・上演台本/岸谷五朗 訳詞/森雪之丞 出演/東 啓介・有澤樟太郎(Wキャスト)、甲斐翔真・松下優也(Wキャスト)、田村芽実・清水くるみ(Wキャスト)、熊谷彩春、大山真志、ひのあらたほか サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)