惹かれたら私から動く。だって人生には時間がないから。
気づけば姿を目で追っている、その仕草や発言の一つひとつが気になる。周りの心をかき乱す(?)奔放な女の子の物語『チャチャ』。そのタイトルロールを演じるのが伊藤万理華さんだ。
「うーん…、チャチャはこれまでで一番、掴むのが難しかった役かもしれません。酒井麻衣監督の中にあるチャチャ像を想像しながら演じてみると『そんなに作り込まないで、伊藤さんのままで』とご指導いただくことも。作品を経験していくごとに自分の演技の癖や見せ方ができてきていた時期だったので少し戸惑いましたが、その経験を一度リセットして挑むことができたと思います」
乃木坂46卒業から6年。俳優として積み上げてきたものを崩した先に見つけ出したのは、懐かしい自分自身。相手を見上げる澄んだまなざし、あどけない声、柔らかな笑顔。ふわりふわりとこの世を泳ぐチャチャの姿を見ると、アイドル時代の伊藤さんを知っている人ならきっと「懐かしい」と思うはず。
「そう、私も懐かしいって思ったんですよ! 昔の私を知る方がこの作品を観てくれたら『ああ、伊藤万理華はこうだった』と懐かしい瞬間があると思います。そう思うと、酒井監督はここまで私が作品を重ねるなかで着込んでいった殻を一枚一枚はがしながら、私の核の部分を見せようとしてくださったのかな」
作中ではチャチャが中川大志さん演じる青年・樂に惹かれてゆく姿も描かれる。生きてきた道も、志向も正反対のふたり。それは伊藤さんと中川さんの関係性にも似て…。
「中川さんって、なかなか共演するチャンスの少ない役者さんだと思っていたんです、勝手に(笑)。でもそのいい意味での違和感が刺激をくれました。それに樂という役のことをよく考えて現場に入ってくださったので、私はチャチャとして自然に樂に惹かれていくことができました」
ときに大胆に、ときに野良猫のように注意深く、樂と距離を縮めていくチャチャ。伊藤さんなら誰かに惹かれたとき、どう行動しますか。
「そうですねえ…『この人と友達になりたい!』と思ったら、男女問わずその人の世界にずかずか入っていきます! 隣の席からじーっと見て、『話しかけたら私に興味持ってくれるはず!』って疑いもなく話しかける(笑)。何か持っていたら『それはなに?』、話のきっかけがなかったら『好きな色、何色?』とか聞く(笑)。そういうところ、チャチャと似ているかも」
惹かれる気持ちの前では「傷つくことを恐れず!」、自ら距離を詰めるのが伊藤さんのマイルール。
「そりゃうまくいかないときは落ち込みますよ? 『うわ、変な人だと思われちゃった…』とか。でも行動しなくちゃ何も始まらない。今作の登場人物もチャチャを引き気味に見ているけれど、それは本当はみんな彼女みたいに自由に生きたいから。幼い頃はみんな好きなものは好きって言えていたのに、大人になって社会に揉まれていくとそれができなくなる。だからこそ本当はみんなチャチャのことがまぶしいんだと思う」
惹かれる気持ちはあるけれど、経験を重ねていくほど行動に移せなくなる。そんな大人になった私たちに伊藤さんから一言お願いします!
「だって人生には時間がないじゃないですか。私は10代の頃からそう思っています。たとえば、好きなアーティストの展示に行って作家の方に話しかけてみたり。自分から行動して『私、あなたの作品に関心があります』って伝えたかった。ためらう気持ちもわかります。でも周りの目を優先することは、自分の心の声を後回しにしているということ。だから私自身もずっと、チャチャのように自分の感情を大切に生きていくつもりです!」
謎めくヒロインと彼女を巡る世界の物語。
「人の目を気にして生きるのはもうやめたの」。不思議な女の子・チャチャの生き方、そして恋。チャチャの服装や作品の色彩美にも注目。映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』などの酒井麻衣監督作品。映画『チャチャ』10月11日公開。
いとう・まりか 1996年2月20日生まれ、大阪府出身。乃木坂46の1期生。2017年末の卒業後は俳優として映画『サマーフィルムにのって』、NHKドラマ『パーセント』などで好演。演じ手としての評価を一作ごとに高めている。
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※『anan』2024年10月9日号より。写真・神藤 剛 スタイリスト・和田ミリ ヘア&メイク・外山友香(mod's hair) 取材、文・大澤千穂
(by anan編集部)